変化に強い個人と組織をつくる「レジリエンス」の構成要素と企業事例
ピースマインド・イープ株式会社 取締役副社長 国際EAP研究センター センター長
市川 佳居氏
昨今の企業は、グローバル化、事業再編、新規事業への参入など、次々と起こり続ける変化への対応力が求められています。こうした変化に柔軟に対処する能力を社員一人ひとりが身につけることが、組織の生産性向上と継続的な成長を可能にします。今回は、変化や困難からしなやかに回復する力である「レジリエンス」の6つの要素、さらに組織のレジリエンス強化策についての企業導入事例をハイライトでご紹介します。
―― 今回の講演のポイントについて、お聞かせください。
市川:本講演のメインテーマ「レジリエンス」は、最近さまざまなジャンルにおいて注目されているキーワードです。その「レジリエンス」の概念について、心理学を専門に扱う立場からお伝えします。また、私たちが考える個人のレジリエンス強化の六つの要素や、それを組織のウェルビーイング向上に活かす具体的な方策、そしてレジリエンス・プログラムを実際に組織改革・人材育成に導入した企業の事例をご紹介いたします。
なぜ今、企業でもレジリエンスが注目されているのか? 昨今のグローバル化や事業再編、新規事業への参入、M&Aなど、次々と起こり続ける変化への対応力が求められていることが背景にあるのではないかと思います。こうした変化の中では、生産性を維持することそのものがストレッサーとなります。一方で、このような変化を乗り越えれば、精神力がより強化され、全人的な成長がひいては組織力の飛躍的向上となるのです。
ポジティブ心理学におけるレジリエンスとは、「変化や困難からしなやかに、かつ成長と進化を伴った回復力」を意味し、多くの困難を乗り越えた人々や事象の研究から成り立っています。特に今回ご紹介するレジリエンス ビルディング®プログラムは、英国や欧州の主要企業において広く採用され、極めて高い効果と実績を上げている内容で、離職率やプレゼンティーズム(仕事の能率低下)、欠勤率の改善などが報告されています。
―― 貴社の強みや特徴について、お聞かせください。
市川:私たちは心理学・行動科学などの専門性を活かし「人と組織の問題解決」を支援する専門企業として15年以上、組織の生産性向上のために活動してきました。その中で、よりビジネスに特化した研修、ワークライフ支援の体制など、企業のニーズに応じたプログラムを開発し、若手やミドルの活性化、女性活用の研修などに対応し、エグゼクティブ向けのコーチングの視点を取り入れたコンサルテーションも行っています。最近では、年々増加する海外赴任者へのサポートプログラムも海外パートナーとの連携強化により充実させています。
私自身は、EAPアジア太平洋円卓会議の議長や国際EAP協会の役員を務めており、この20 年、日本およびアジアにおけるEAPの草分けとして、企業へのEAP導入、組織変化のコンサルテーション、「レジリエンス ビルディング®」研修などを手掛け、国内外の従業員と組織の生産性向上を目指し、活動しています。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
市川:昨今「若手のメンタルタフネスを高めたい」「新人が早々とメンタル不調で休職に入ってしまった」などの相談依頼を多くいただきます。これからの人事は、休職する不調者を減らすことはもちろんですが、それだけではなく、変化を乗り越えて組織の生産性を高める結果につながるような施策を講じることが、重要なミッションとして求められます。その具体的な施策の一つが「レジリエンス ビルディング®」の手法です。人材開発など、ヒューマンリソースマネジメントに関わるお仕事をされている皆さまが、社員研修の一環として社内で活用できるよう、組織のレジリエンスやチェンジマネジメントと関連づけて、意見を交換させていただきたいと思っております。
- ピースマインド・イープ株式会社
取締役副社長
国際EAP研究センター センター長 - 市川佳居氏(いちかわ・かおる)
- メリーランド州立大学を経て米国でカウンセリングに従事。帰国後、企業へのEAP導入、組織変化のコンサルテーション、社員のレジリエンス向上の研修などを手掛ける。1998年、日本EAP協会を設立、2002年イープ社設立。2008年より現職。著書に『企業のメンタルヘルスを強化するために』など。医学博士。
- 日本の人事部「HRカンファレンス」事務局
- 〒107-0062 東京都港区南青山2-2-3 ヒューリック青山外苑東通ビル6階
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