ハイ・パフォーマンス・カルチャーの実現と人事部の役割
~組織風土変革のエンジンとして~
株式会社アイ・ラーニング 代表取締役社長
片岡 久氏
グローバル化の進展により、企業をとりまく環境がダイナミックに変化し、そのスピードも速くなっています。予測困難な変化にしなやかに適応していくためには、主体性を持った個人が専門性を発揮しながら連携し合う、ハイ・パフォーマンス・カルチャーを目指した組織風土づくりが必須です。IBM の事例や昨今の日本企業の事例に学びながら、組織風土変革を推進する上でのステップについて解説します。
―― 今回の講演のポイントについて、お聞かせください。
片岡:かつてIBMが大きな組織変革を行った際のキーワードが「ハイ・パフォーマンス・カルチャーの実現」でした。マルチ・ナショナル・カンパニーからグローバル・カンパニーへと変化させる時に行った、個人のパフォーマンスと組織のパフォーマンスの最大化を目指した組織風土改革です。この取り組みは今も形を変えて脈々と続いています。
現在企業のおかれている環境では、IT技術の急速な進歩や経済のグローバル化によって、風土が異なるお客様を相手にしたり、異なる文化で育った人達でひとつの組織をつくることが喫緊の課題になっています。そのために組織風土の変革が問われています。
一方で、人事部門を中心に「ヒューマン・パフォーマンス・インプルーブメント(HPI)」という言葉が使われ始めました。「人が関わって発生するパフォーマンス・ギャップを明確にし、解決することで組織の目標を達成させる体系的なアプローチ」と定義されるフレームワークです。IBMが「ハイ・パフォーマンス・カルチャーの実現」として行っていた研修や育成プログラムはこのHPIに沿ったものでした。人財育成のプログラムを作るにあたり、その結果が経営目標にどう関係するのか、さまざまな経営指標の何をどれくらい改善するのかを検討することで、教育に対する投資効果をよりビジネスに直結したものとして捉えなおすことができます。
いま日本企業に求められているのは、変化しつつある組織風土に対して、人事部の役割も変化させていくことだと考えています。今回の講演では、ハイ・パフォーマンス・カルチャーを実現したIBMの事例や昨今の日本企業の事例に学びながら、組織風土変革を推進する上でのステップについて解説します。
―― 貴社の強みや特徴について、お聞かせください。
片岡:株式会社アイ・ラーニングは1990年に設立された、IBMから国内で唯一認定されたトレーニング・プロバイダーです。IT技術に関する広範な研修とともに、IBMのDNAを受け継いだ研修と人財育成のさまざまなプログラムは、個人の成長だけでなく、組織のビジネス・パフォーマンスの向上と、期待される成果を達成するための手段として提供しています。
アイ・ラーニングでは、IBMが展開していた研修やプログラムを引き継ぎ、新しいコンテンツや新しいスタイルを加えて提供しています。ライン・マネージャー研修、PM研修、営業研修やITスペシャリスト向け研修を、クラス・ルーム研修やオンライにて提供しています。また、組織風土の変革やモラール向上のためのワークショップの開催、ファシリテーターの要請など、組織の活性化をご支援することで、ハイ・パフォーマンス・カルチャーの実現に貢献しています。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
片岡:日本型の人事制度から西欧型の成果主義へ変更したものの、十分なマネジメント・システムが伴わなかったことからかえって混乱が起きたこと、目標管理が定着しない中で、表面的・形式的な評価になりがちであることなどから、HPIというフレームワークが関心を持たれています。人財のグローバル化に伴い、制度の前提となる社員の能力基準の徹底や、評価の方法の共有化が、経営戦略そのものになってきました。
企業をとりまく環境の変化にしなやかに適応するには、人事部門の方が核となって組織風土の変革に取り組むことが重要だと考えています。人事部の果たす役割がきわめて重要なものとなっている中、今回の講演内容が、少しでも皆さまのヒントとなれば幸いです。
- 株式会社アイ・ラーニング
代表取締役社長 - 片岡久氏(かたおか・ひさし)
- 1952年広島県生まれ。1976年日本IBM入社後、製造システム事業部営業部長、本社宣伝部長、公共渉外部長などを経て、日本アイ・ビー・エム人財ソリューション株式会社代表取締役社長。2013年より現職。内閣府ジョブカード推進協議会委員、ASTD Japan理事、全日本能率連盟MI制度委員会委員を務める。
- 日本の人事部「HRカンファレンス」事務局
- 〒107-0062 東京都港区南青山2-2-3 ヒューリック青山外苑東通ビル6階
- E-mail:hrc@jinjibu.jp