株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長
小室 淑恵氏
自ら残業したがる社員、「ワーク・ライフバランスなんて甘いことを言っていたら負ける」と思っている経営層、長時間残業する社員を高く評価してしまう管理職…。人事担当者が長時間労働是正に取り組もうとすると立ちはだかる壁があります。こうした壁を打ち破り、残業を減らして業績を上げることに成功した企業はどのように分析し、どうアクションしたのか?実際に講師が年間200回以上、企業からの依頼で行っている研修の内容と、成功する取り組みかたについてお話しします。
ワーク・ライフバランスの実現により、
将来的に勝ち続けることのできる職場づくりをサポート
―― 今回の講演のポイントについて、お聞かせください。
小室:ある企業は、従業員68,000人が5年後に抱える親の介護の数を、社員の5分の1にあたる14,000人と試算しています。介護は平均10年続きますから、5分の2、3と累積していきます。つまり、数年先には、社員のほとんどが介護もしくは育児などで時間制約を持つのです。そうなっても、勝てるような仕事の仕方ができている企業は今どれほどあるでしょうか。
仕事は増える一方で、人も足りない中、「3人で5人分」の仕事を回さざるを得ない過酷な職場も増えています。長時間残業によるメンタルヘルスの問題、残業コストの増加、社員の健康問題などの観点から、生産性改善と時間短縮に取り組む企業も増えていますが、実際には社員同士の温度差により取り組みが難航し、成果があがっていないケースは多いようです。自ら残業したがる社員、「ワーク・ライフバランスなんて甘いことを言っていたら負ける」と思っている経営層、長時間残業する社員を高く評価してしまう管理職……。人事担当者が長時間労働是正に取り組もうとすると立ちはだかる壁があります。
こうした壁を打ち破るには、現状把握→課題抽出→会議でチームアクションを設定する→チームアクションを実行・検証するといった、四つのステップを用い、約8ヵ月間で行っていく働き方見直しプログラムが有効です。仕事の見える化ツール「朝メール」の取組み方や会議を減らす「会議1/8」など、職場ごとの課題に合わせた具体的な解決策をお話します。
―― 貴社の強みや特徴について、お聞かせください。
小室:弊社は、ワーク・ライフバランスに関するトータルソリューションを提供しています。女性が育児休業からスムーズに復帰し、活躍するための支援プログラムarmoは400社以上が導入。育児休業後の短時間勤務取得者向けの研修では、子育てをしながらほどほどのキャリアを目指すのではなく、ビジョンを持って仕事に意欲的に取り組む女性を増やすお手伝いをしています。
また、近年急激に増えている男性や管理職層の介護と育児の両立問題にも対応。介護と仕事の両立ナビや介護ガイドブックなどを提供し、介護による離職を防いでいます。長時間労働の改善コンサルティングでは、単に早く帰るのが目標ではなく、生産性を向上させるチームマネジメントの手法を提供することで、900社以上が高い成果をあげています。
育児介護での離職を防ぎながら職場の生産性を向上させ、短時間で高い成果の出せる職場を作ることで5年後10年後も勝ち続けることのできる職場づくりをサポートできるのが、弊社のワーク・ライフバランスに関するトータルソリューションの強みです。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
小室:現在の日本の高齢化比率は約25%、すでに世界で最も高齢化しています。そして、あと4年で団塊世代は75歳に突入し、さらなる大介護時代がやってきます。タイムリミットまでもうあまり時間がありません。また、2030年には韓国が、2040年には中国が日本と同じ高齢者比率になります。長時間労働に頼らず、生産性向上により勝てるモデルを確立することで、新しい働き方を世界に発信していきましょう。
- 株式会社ワーク・ライフバランス
代表取締役社長 - 小室 淑恵氏(こむろ・よしえ)
- 900社以上の企業へのコンサルティング実績を持ち、残業を減らして業績を上げる「働き方見直しコンサルティング」の手法に定評がある。『6時に帰るチーム術』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。自身も2児の母として子育てをしながら効率よく短時間で成果を上げる働き方を実践。2009年金沢工業大学客員教授に就任。内閣府「仕事と生活の調和連携推進・評価部会」委員など複数公務を兼任。
- 日本の人事部「HRカンファレンス」事務局
- 〒107-0062 東京都港区南青山2-2-3 ヒューリック青山外苑東通ビル6階
- E-mail:hrc@jinjibu.jp