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特別講演[I-2]

自主自立型人材を育成する新研修プログラム
~新人・若手の行動変容を習慣化する秘訣~

和泉大氏 photo
アチーブメント株式会社 組織変革コンサルタント / マネジャー 准選択理論心理士
和泉大氏(いずみ・ひろし)
プロフィール:大学卒業後、文化系NPO・環境系ベンチャーを経て大手上場IT企業に入社。入社後わずか10ヶ月、当時グループ最年少で子会社の取締役に就任 し、経営者として組織作りに携わる。アチーブメント入社後は、管理職層の意識改革や理念浸透のコンサルティングを手掛けるほか、自ら研修講師として新人・ 若手の育成を担当している。管轄のチームメンバー10名のうち4名がゆとり世代の若手社員で、前期は前年対比190%を超える目標達成を実現。

自主自立型人材とは、組織人として正しい行動ができ、組織人としての責任を全うし、成果を上げることができる人材のこと。自分勝手とは違い、積極性だけでもないため、組織に求められることに向かって、主体的に行動できる必要がある。研修によって、いかに自らを価値ある人材へと導いていくのか。そのヒントとなるのが、「すべての行動は自らの選択である」とする選択理論心理学だ。この手法を使えば、効果的に自らに変容を起こし、学んだ行動を習慣化させることができる。人材の研修プログラムに詳しい、アチーブメントの和泉大氏が、その方法について語った。

【本講演企業】
アチーブメント株式会社は『上質の追求』を企業理念に、高品質の人材教育を通して、個人と組織の目標達成を支援しています。目標達成の原理原則を技術として習得できる教育プログラムを提供しており、人間の行動メカニズムを解明した心理学である「選択理論」を基礎理論として、人の内発的動機付けを元にした経営を自ら実践しています。社員約120名のうち80%以上が新卒入社の社員にも関わらず、お蔭様で増収増益を続けております。

新人は3年で、「目標達成につながる仕事習慣」が固定化する

アチーブメントは、個人と組織に向けた人材教育コンサルティング企業。人材育成、社員研修、新卒採用コンサルティング、組織開発まで、さまざまな人事課題の解決を支援している。コンサルティングの基礎理論にあるのは、すべての行動は自らの選択であるとする選択理論心理学だ。米国の精神科医ウイリアム・グラッサー博士が提唱した理論で、世界60ヵ国以上で実践されている。近年は学生からの注目も高まっており、新卒採用の際のエントリーは2万人を超える時もある。2013年に実施された日経の就職希望企業ランキングでは、総合93位、社員300名以下の中小企業では人気1位という評価を得ている。

和泉大氏 Photo和泉氏は最初に、米国の作家、ダニエル・ピンク著の書籍『モチベーション3.0』を紹介した。本書はモチベーションの歴史を紹介し、これからの内発的動機づけを軸とするモチベーション3.0について解説した書籍だ。

「日本を例に取ると、高度成長以前はモチベーション1.0で、サバイバルの時代で生き抜くことが目的でした。次の2.0は、高度成長期の信賞必罰の時代。アメとムチで、頑張るほど報酬が上がり生活も豊かになりました。そして今、先進国は3.0の時代です。そのポイントはワクワク感。人の内側から起こるモチベーションを重視するようになっています」

モチベーション3.0で重視すべきは自立性、熟達性、目的。今の管理職も3.0でマネジメントを行うことが理想だが、自らは2.0で育ってきた人たちであり、スムーズな移行ができていない。その影響もあってか、日本での大学新卒の3年目離職率は31%(厚生労働省、平成22年3月卒業者)と上がっている。ゆえにマネジメントに依存しない強い若手が必要とされている。

「この流れを止めるには、3年を目処とした、自主自立型人材を育成する研修が必要です。新人は3年で目標達成ができる人、できない人で、その仕事習慣が決められてしまいます。いかに自主自立型に引き上げるかが、問われているのです」

人を導く動機は、その人の内側に先に存在している

次に和泉氏は、社会人に必要とされる個別のスキルについて解説した。社会人基礎力には三つの分類がある。一つ目は「前に踏み出す力(アクション)」、能力要素には主体性、働きかけ力、実行力がある。二つ目は「考え抜く力(シンキング)」で、課題発見力、計画力、創造力。三つ目は「チームで働く力(チームワーク)」で、発信力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、規律性、ストレスコントロール力だ。

「これらの能力要素の中で、企業が重視するものはどれだと思いますか。アンケートを行うと、1位は実行力、2位は主体性、3位は課題発見力です。まさに、自主自立型人材が求められていることがわかります」

アチーブメント社では自主自立型人材について「組織人として正しい行動ができ、組織人としての責任を全うし、成果を上げることができる人材」と定義している。これは「選択理論心理学」で知られる、アメリカの精神科医ウイリアム・グラッサー博士の唱える行動を選択する判断基準、「Right(社会正義に反しないか)」「Reality(現実的か)」「Responsibility(責任、他をジャマしないか)」を参考にしている。

この『正しい行動』とは、各企業が定める理念や指針、フィロソフィーに表されているものだ。自社がどんな価値観を大事にしたいのかを、理解しなければならない。

そして、選択理論心理学における行動とは以下のように定義されている。「人は外側からの刺激によって動機づけられ反応するのではなく、動機はその人の内側に先に存在している。刺激は、一つの情報として取り込まれ、自らの動機に見合ったものかどうか本人が選択し、行動に移している」。外からの刺激はすべてが情報であり、ゆえに自ら選択し行動が生まれるのだ。

「選択理論心理学には三つの原則があります。一つ目は『人は一つの目的を持って行動する。自分の環境を操作して自分の欲しているイメージの状態に近づけようとする』。二つ目は『人は自分自身の行動に責任がある。社会や他人、過去のせいではない。すべてはその人の責任(源)である』。三つ目は『人は変わることができる。自らの行為と思考の選択によって、豊かな人生を送ることができる』。すべての行動は、自らの選択であると考えることが基本姿勢と言えます。つまり受動的な人も実はそれを選んでいるのですが、自分で気づいていないのです」

願望を明確にすることが、主体性を上げる最もシンプルな方法

続いて和泉氏は、自主自立型人材を育てるポイントについて解説した。それは自分の欲しているイメージを持っているか、願望を持っているかにあるという。ではそれはどこから生まれるのか。グラッサー氏は人間には五つの基本的欲求があると語っている。それは「生存の欲求:安全・安定、健康」「愛・所属の欲求:愛、所属」「力の欲求:達成、承認、貢献、競争」「自由の欲求:解放、変化、こだわり」「楽しみの欲求:ユーモア、好奇心、学習・成長、創造性」だ。

「五つの欲求は並列だと言われています。ただし、欲求は人によって強さが違い、その強弱は生まれながらのもの。個性を決める要因にもなっています。『愛・所属』が強い人は人と一緒にやることがモチベーションになり、『力』が強い人は自分で達成したいとか人に負けたくないと思う。『自由』が強い人は自分らしさにこだわりたい。ですから、まず自分をしっかり分析し、自分は何によってモチベーションが上がるのかを知るべきです。ただし、バランスを崩すと問題も起きます。例えば『力』が強すぎると、他人を犠牲にしても達成しようとチームワークを乱します。これらのタイプがわかれば、マネジメントもしやすくなります」

ここで和泉氏は、来場者に「両手を出してください」と語りかけた。「左手は、今あなたが願っていることです。右手はこれからの行動です。二つを合わせてみてください。はい、これが目標達成ですね。願っていることと行動していることが一致した状態です」

和泉大氏 Photoいざ行動となったときに、主体性が最も出ていない状態は、左手の「願望」が不明確な場合だ。そこでいくら行動しても向かう方向性が分からないため、いずれモチベーションは下がる。そのため、まずは願望を明確にすることが、主体性を上げる最もシンプルな方法といえる。

次に和泉氏は、社内のモチベーション事例について紹介した。「当社でトップセールスとなった社会人4年目の後輩のケースです。彼は願望を見出すことで大きく飛躍しました。それはどんな願望だったかというと、『研修によって悲しい若者を減らしたい』ということでした。彼には『競争』の欲求や『貢献』の欲求は高くありません。同期と比較しても、それでモチベーションが上がるタイプではない。それより『所属』の欲求、『承認』の欲求が高かったのです。そこで私も、それに関わる言葉がけを意識しました。そしてトップセールスになる前、彼は成果を自慢するのではなく、やはり人へ感謝することを目的に頑張りました。」

主体性だけを上げようとしても、なかなか上がるものではない。願望の中に目標を入れこむ、そんな技術を身につけると人は強くなる。それに願望が強ければ、それは習慣化へと向かう。その意味でも、五つの欲求を自分で分析し明確にする時間を持つことは重要だ。

コントロールが「できるもの」「できないもの」を理解し、自分を操作する

最後に和泉氏は、行動におけるコントロールについて説明した。人間の行動にはコントロールできるものと、できないものがある。そこで来場者にクルマの運転をイメージするように促した。

「四つのタイヤのうち、前輪は『行為』と『思考』、後輪は『感情』と『生理反応』です。人はこの四つを操作しています。ハンドルを動かすと、前輪である『行為』と『思考』が動きます。この二つはコントロールしやすいわけです。後輪の『感情』と『生理反応』はあとから付いて行きます。実はモチベーションが下がっているときは、後輪の『感情』と『生理反応』に焦点が当たっています。コントロールできないものに焦点が当たると、モチベーションは下がる。上司に注意されて落ちこんだり、初めてのことに挑戦しようとして不安になったりすると、実行力不全に陥ります。これは『行為』と『思考』が停止しているわけです」

和泉氏は、他にも人にコントロールできないものがあると語る。それは「過去」と「他人」。過去のミスや、人と自分が合わないことに焦点を当てても、それはコントロールできないから変われない。では、どうすればいいのか。やはりここでも、ポイントは願望を明確にすることにある。

これらは行動のメカニズムであり、行動におけるコントロールも訓練すれば誰でもできるという。ただし、理論ばかり言っていても変わることができないため、アチーブメントでは研修に体験型研修を組み込んでいる。理論を学んだ後も「知っている」で終わらずに、行動からも学ぶことができる。体験型ワークは300以上あり、テーマにあった気づきを設計することが可能だ。

「企業の場合、入社2年目から研修支援の仕組みがなくなるところが多いようです。ビジネス習慣は3年で確立されますから、1年目にクリアできない課題を残すとそのまま引きずることになります。フォロー研修や2年目、3年目も研修を行い、その年次の課題はその年のうちにクリアすべきです。皆さまも3年を目処にして、研修計画を立ててください」

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