イベントレポート

HRカンファレンストップ > イベントレポート一覧 > 2014年-秋-  > 基調講演[I] 少子高齢化社会、労働力減少時代に必要な働き方とは ~がんと向き合いポジティブに仕事をしてきた経験...
基調講演[I]

少子高齢化社会、労働力減少時代に必要な働き方とは
~がんと向き合いポジティブに仕事をしてきた経験から考える~

鳥越俊太郎氏 photo
ジャーナリスト
鳥越俊太郎氏(とりごえ・しゅんたろう)
プロフィール:1940年3月13日生まれ。福岡県吉井町(現うきは市)出身。京都大学文学部卒業後、毎日新聞社に入社。新潟支局、大阪社会部、東京社会部、「サンデー毎日」編集部に所属し、外信部(テヘラン特派員)を経て1988年4月より「サンデー毎日」編集長。1989年に退職して以降、テレビ朝日系列「ザ・スクープ」「サンデージャングル」でキャスターを務めるなど、テレビメディアに活動の場を移した。2005年、ステージ4の大腸がんが発覚、肺や肝臓への転移を経て4度の手術を行った。2010年から始めたスポーツジムに加え2012年にはホノルルマラソン完走を果たすなど健康的なライフスタイルを貫いている。現在もさまざまなメディアで「ニュースの職人」として活躍中。

ジャーナリストの鳥越俊太郎氏は、2005年に大腸がんが発覚。腹腔鏡下手術で摘出し、仕事に復帰したが、その後、肺や肝臓への転移がわかり、計4度もの手術を行ってきた。大腸がんは、ステージ4という大変厳しい段階だったそうだが、現在は最後の手術から5年以上が経過し、いわゆる「5年生存率」を乗り切った。手術後はそれ以前にも増して、体を鍛えて健康を維持し、積極的に仕事をこなしている。鳥越氏はいくつものがんにどのように立ち向かい、いかに仕事への復帰を果たしたのか。そのポジティブな姿勢を、鳥越氏の言葉から学んだ。

人間ドックで大腸がんが発覚。がんとの戦いが始まる

鳥越氏はこれまでに6回の手術を経験している。そのうち、がんの手術は4回。このところは手術慣れしていると語る鳥越氏だが、がんという病気をどう見ているのか。

「日本は本当の意味でがん大国です。二人に一人はがんになると言われています。しかし、急に亡くなる病気よりは、きちんと身辺整理ができる、がんの方がいいかもしれません。そういう意味でも、がんで最後を迎えることも悪いことではないと思っています」

鳥越俊太郎氏 Photo最初にがんの兆候を感じたのは、2005年のこと。トイレに行って、流そうとしたらその水が赤黒く濁っていた。身体の中でどこか出血してるのではないか、と悪い予感がしたという。それから2週間ほどいろいろと考えたが、鳥越氏は人間ドックで検査を受けることにした。

「人間ドックでは生活習慣病をある程度発見できますが、ほとんどのがんは見つかりません。一つだけ人間ドックで見つけやすいのが、大腸がんです。なぜなら検便という関門があるからです。検査したところ、S字結腸を越えたあたりに黒い部分が見つかりました」

がんを早期に発見できれば、治癒の可能性が高まる。働きざかりの人たちの多くは仕事に追われて、がん検診や人間ドックを後回しにしがちだが、人事にとって社員に健康に働いてもらうことは、重要な役目と言える。「人事の皆さんも、社員の方々もお忙しいとは思いますが、ぜひ、検査を受けるようにしてください」

鳥越氏の手術は開腹ではなく、小さな穴からテレビカメラを入れて行う腹腔鏡手術だった。手術は無事終わり回復も早かったが、その翌年、肺に転移していたことが分かった。わき腹からカメラを入れて行う手術を行ったところ、左の肺の二箇所にがんがあったという。

「術後に先生から『この肺のがんは、おそらく大腸がんの転移です。鳥越さんに大腸がんはステージ2と言っていましたが、今日転移が判明し、実はステージ4だったことがわかりました』と言われました。ステージ4のあとは何があるかというと、末期だけ。しかし、ステージ4からでも快方に向かう人がいます。私は大腸がんがステージ4で、発覚から9年半経っています。ステージ4でも、元気に働ける人はいるんです」

大腸、両肺、肝臓と4回の手術を経て、「5年生存」を達成

その半年後には「右肺にもがんがある」と言われ、こちらも同じように手術。病理の検査結果は「良性」で悪性ではなかった。今度こそ治ったはずだと思っていたら、それから2年後、今度は肝臓にがんが見つかる。肝臓はカメラでの手術ができないから切開するしかなかった。これで鳥越氏は大腸、両方の肺、肝臓と4回の手術をしたことになる。

「皆さんは、がんには『5年生存率』というものがあるのをご存知でしょうか。がんになって5年生きているか、というのは一つの目安です。手術後に亡くなる人は1~3年目くらいが多い。従って5年生きていれば、治療によりがんが治ったといえる。私は2014年2月に無事5年を経ることができました」

がん復帰時に周囲の特別視は禁物。「配慮無用」こそが心遣い

鳥越俊太郎氏 Photoがんは誰がかかってもおかしくない病気だが、医療の進歩もあって、がん手術後の生存率は高くなっている。以前はがんになると仕事から外されるようなこともあったが、最近では企業も、がんにかかった社員が職場に復帰し、働くことができるような体制や制度を整えている。

「がんにおいては、免疫力が大切です。がん患者の方が精神的に健全でいることが、免疫力を保つ助けとなります。その意味でも、がんになった人が職場に復帰するときには、カゼをひいて休んでいたくらいに、ごく普通に迎え入れてほしいと思います。がんだから『気を使わないといけない』とか『特別な配慮をしなければいけない』とか、そんな必要はまったくありません。特別扱いすることは、復帰する人にとって、かえって辛いことです。ごく普通に『また職場に戻ってきたね』というぐらいの気持ちで迎え入れてもらえたら、きっと本人も気持ちよく復職ができると思います」

もし自分がそのような立場になったら、どう思うか。がんが発症し、手術や治療を受けた後に職場に戻ったら、周りの社員がはれ物に触るように接してくる。そう感じたら、どう思うか。あまり気持ちいいものではないだろう。

鳥越俊太郎氏 Photo 「がんの話には触れてはいけないとか、そういう配慮も無用です。『どんな手術をしたの』といったように、フランクに聞いたっていい。要するに、病気になった当人からすれば、普通に接してもらえることが一番いいんです。特別な気遣い、配慮、そういうものはかえって人の心を傷つける。私も自分自身ががんになって、そのことに気付きました。

それと同時に、善意で気を使う、善意でケアをするということも必要ありません。ケアは自分でやっていますから。他人がケアする必要はまったくない。ごくごく普通に、これまでと同じように、接してくれれば、それが本人にとっては最高なことです」

医療が進み、がんは特別視する病気ではなくなっている。また、鳥越氏のように、スポーツジムに通い、ホノルルマラソン完走を果たすなど、健康的なライフスタイルを貫いている人もいる。職場で同僚が病気から復帰してきたときに、自分ならどのように接するか――。参加者の方々は、鳥越氏の講演を通じて、改めてこの問題を考えることができたようだ。

参画をご希望の企業様
お問合せ先
株式会社HRビジョン 日本の人事部
「HRカンファレンス」運営事務局
〒107-0062
東京都港区南青山2-2-3 ヒューリック青山外苑東通ビル6階
E-mail:hrc@jinjibu.jp
株式会社アイ・キューは「プライバシーマーク」使用許諾事業者として認定されています

このページの先頭へ