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パネルセッション[H]

「リーダー論」に新たな波を起こす二人のキーパーソンが語る
“次代を担うリーダーに求められる条件”

楠木建氏 photo
一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授
楠木建氏(くすのき・けん
プロフィール:1964年東京生まれ。専攻は競争戦略とイノベーション。企業が競争優位を構築する論理について研究している。一橋大学大学院商学研究科博士課程修 了(1992)。一橋大学商学部専任講師、同大学同学部助教授、同大学大学院国際企業戦略研究科准教授を経て、2010年から現職。1997年から 2000 年まで一橋大学イノベーション研究センター助教授を兼任。1994-1995年と2002年、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授を兼 任。著書として『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(2010、東洋経済新報社)、『経営センスの論理』(2013、新潮社)、『戦略読書日記』(2013、プレジデント社)、『「好き嫌い」と経営』(2014、東洋経済新報社)などがある。

中竹竜二氏 photo
(公財)日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター /
U20日本代表ヘッドコーチ 株式会社TEAM BOX代表取締役
中竹竜二氏(なかたけ・りゅうじ)
プロフィール:1973年、福岡県生まれ。早稲田大学入学後ラグビー蹴球部に入部。4年次には主将を務め全国大学選手権準優勝。卒業後渡英し、レスタ―大学大学院社会学部修了。01年株式会社三菱総合研究所入社。06年早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、07年度から2年連続で全国大学選手権を制覇。10 年4月より日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターに就任。12年度はラグビーU20日本代表監督を兼任。日本における「フォロワーシップ論」の提唱者のひとりとして、次世代リーダーの育成・教育や組織力強化、成人向けの学びの環境づくりに貢献。企業コンサルタントとしても活躍中。主な著書に『自分で動ける部下の育て方—期待マネジメント入門』(ディスカヴァー新書)、『部下を育てるリーダーのレトリック』(日経BP)など。

早稲田大学ラグビー部を三度の学生日本一に導いた名将、中竹竜二氏。そこに至るまでには、独自のリーダー選抜論とチームづくりへの思いがあった。個々のスタイルを見抜き、その組み合わせによってチーム力を最大化する――そのスタンスは、企業におけるリーダー育成に通じるものがある。本セッションでは中竹氏と、組織や競争戦略の研究を通じて一流のビジネスリーダーを数多く知る一橋大学大学院教授の楠木建氏が登壇。組織の現場を知る二人のキーパーソンが、これからのリーダーに求められる条件について語りあった。

キャプテンに「ベストな人材」を選ぶことは間違っている

最初に中竹氏が、「現場で活躍するキャプテンの創り方」と言うテーマで講演を行った。中竹氏は、高校と大学でラグビー部のキャプテンを経験。その後、早稲田大学の監督を4年間務めた。日本代表20歳以下の監督やヘッドコーチも経験している。

中竹竜二氏 Photo「僕自身がキャプテンと監督の両方を経験してみて違うと思ったのは、当然ですが、監督は試合には出られないということです。しかし、監督もキャプテンも組織のリーダーなんですね。チームをまとめることや、選手の気持ちを高めるという役割も同じです。ところが、担う仕事は全く違うんです。この役割と仕事を混同してしまうと、成果が出ません」

では、監督とキャプテン、それぞれの「仕事」とはどのようなものか。監督は、戦略をつくって効率的にチームを動かし、一つの方向にまとめること。キャプテンは、自分の全力プレーを見せて手本を示し、現場をまとめることだ。

「スポーツチームにおけるリーダーのポジションは4種類あります。監督、コーチ、キャプテン、ポジションリーダーです。このうち、監督やキャプテンには、一人で決断できる能力が求められます。一方、コーチやポジションリーダーには、高い専門性が求められます。つまり、監督やキャプテンを決めるときには、選手としてベストな人材でなくてもいいということです」

中竹氏は、監督やキャプテンに必要な資質は三つあると言う。一つ目は、一人で決めることが多いので「決断力」。二つ目は、一人で決めたことの責任を負わなければいけないので、「タフネス」。三つ目は、各ポジションに専門家がいるので、それを受け入ることができる「許容性」だ。

「僕はキャプテンを選ぶ際に、キャラクターも大事ですが、他のグループやポジションリーダーなどとの関係性を重視してきました。もう一つは象徴性です。チームの象徴となる人間であること。『キャプテンシー』とは現場の象徴、いわゆる鏡の役割です」

キャプテンに必要なのは「生き生きできる環境」

続いて中竹氏は、早稲田大学ラグビー部の監督時代の経験について語った。「2007年、監督2年目のときに、大学選手権優勝という目標を設定しました。実はその前年度に決勝戦で大敗したのですが、今度こそ圧倒的な力で勝ちたいと考え、『決勝戦は50対0で勝つ』というゴールを設定しました。スローガンはPenetrate(突き抜ける)としました」

この目標に見合うキャプテンは誰かと考えたときに、突き抜けるような勝ちが似合う選手は一人しかいないと、権丈選手に依頼したという。彼は不器用で、実直なプレースタイルが持ち味の選手だったが、彼の横には五郎丸選手(現・日本代表)というかなりの頭脳派の選手がいた。

「実はこのチーム、全くまとまりがなかったんです。チームワークを軽視し、チーム内でも真っ向勝負。ケガもいとわないくらいに競争していました。しかし、決勝戦で権丈キャプテンは円陣の中でこう言ったのです。『俺たちはバラバラで、まとまって勝とうなんて思っていなかった。でも、この決勝戦で勝ってまとまろうぜ』と。本当に試合に勝って、チームは最後に仲良くなることができました」

パネルセッションの様子 Photo一度優勝すると慢心しがちなので、とにかく前年度を超えて二連覇しようと、翌年度のスローガンは「Dynamic Challenge(大胆な挑戦)」と設定した。「この年にキャプテンになった豊田選手は、最もキャプテンらしくないキャプテンでした。言葉も態度も悪く、チーム一の反則王。それに僕と彼は、すごく仲が悪かったんです。それでも彼をキャプテンに選んだ理由は、監督としての最初の『大胆な挑戦』だと思ったからです。彼も勝つことにはすごく素直な選手であり、キャプテンを引き受けてくれて、最後には優勝できました」

中竹氏は意識していたのは、キャプテンを適切に選び、最も生き生きできる環境をつくってあげること。逆に考えれば、キャプテンが生き生きしていないのは、キャプテン選考が間違っているか、戦略が間違っているかのどちらかである。

「僕が常に思っているのは、どんな組織に対しても機能するキャプテンはいないということです。また、どんなキャプテンでも機能する組織もありません。キャプテンが自分らしくいることを僕は『スタイル』と呼んでいますが、そのスタイルを保てるような環境をつくることが大事だと思っています」

人事が、社員ごとの「スタイル」を知れば強い組織がつくれる

ここからは、楠木氏と中竹氏によるディスカッションが行われた。

楠木建氏 Photo楠木:僕は今、多様性やダイバーシティを安易に語っている人が増えていると思います。そういう人には二つのパターンがあって、一つは、全く統合について考えていない人です。多様性が増えれば自動で何かが生まれると思っている。多様性の後に統合が必要なことを、忘れているんですね。もう一つはまとめようとするんだけど、自分の手のひらに乗る多様性しか認めない人。統合できる範囲の多様性しか認めないということです。

多様性というとき、何の切り口で多様にしようとしているかは大事なことです。一番ありがちなのは性別、国籍、年齢ですが、これらは考えてみるとすごく表面的な話ですよね。一方、中竹さんがおっしゃるようなスタイルやキャラクターの多様性は簡単にはつかめないことです。このことを意識されたのは勝つことにつながっていると思いますが、それはどういうロジックですか。

中竹:ゴールは学生日本一ですから、メンバーは決勝戦で使える選手でないといけない。僕が常に選手に言っていたのは、決勝戦は逆境の空間だから、スキルだけでなく自分のスタイルをきちんと磨いてくれということです。スキルは平常時には使えます。例えば、ちょっと相手が弱ければ、すごいパスを出す選手がいる。でも、ちょっと強い相手だと、そのスキルを出さずに封印したりする。それでは、決勝戦で使えません。本当の逆境で拠り所にできるのはスタイル。それを鍛え上げることが重要なんですね。

あるとき、スクラムだけが強い一人の選手を選出しました。戦略を考えると、その年はスクラムがとても重要だったからです。ある試合で、この選手がパスをミスして大苦戦したことがあります。試合後に彼はパスを練習したいと言ってきたんですが、僕は「10年以上パスを練習してきてもミスするのだから、もううまくはならない。試合ではパスしないでくれ。ボールが転がってきたら、パスのふりだけしてくれ」と、言いました。すると、次の試合では、落ち着いてパスをするふりができた。味方もパスしないとわかっているから、すごく落ち着いてボールが回せる。敵もパスのふりに引っかかってくれました。

楠木:この例はスキルを総合的にみる、ということとは真逆ですね。本人が自分のスタイルを理解して、迷いなく進むと自信が持てる。そして周囲は「こいつはこういうスタイルだ」とわかっているから、合わせられる。その連携が最終的にものを言うわけです。中竹さんは、選手一人ひとりとスタイルは何なのか、徹底的に話をされている。このようなことが、人事の方にとってもすごく重要だと思います。性別、国籍、年齢をエクセルに打ち込んで管理することではない。スタイルで人を認識することが重要です。

中竹:早稲田大学ラグビー部は6軍まであって、各々で練習試合を行うんですが、たまに2軍と社会人の強豪を大戦させたりしました。90対0で負けたりするんですが、そこで何を見るのかというと、その中で誰が本当に自分のスタイルを持って戦っていたかということです。土壇場の力を見るんですね。スタイルは本当に逆境で通用するかどうかが肝なので、試合で見ておかないと確認できないんです。決勝戦以上の逆境を組んで、ジャッジしていました。

人の「好き嫌い」を利用して、努力を娯楽化する

楠木氏は中竹氏の話すスタイルのことを、センスと呼ぶ。このセンスやスタイルというものは、余人をもって代えがたいものであり、おそらく育てる方法もないと楠木氏は語る。そのかわり、うまくはまれば、本人は水を得た魚のように活躍してくれる。

パネルセッションの様子 Photo 楠木:僕は何でもかんでも、育てたり育成したりする対象にしすぎていると感じています。しかし、育てられないものが最後はモノを言う。だから、センスやスタイルのある人をむしろ見極めるとか、育つ場をつくることのほうが、より仕事としては重要だと思います。

いま人事は表では多様性と言いながらも、その裏では一つの解を探すような動きが多い。やり方が一様になっているように感じます。ラグビーは毎年、キャプテンが変わって、その都度チームのまとめ方も変えています。そこにヒントがあると思うんですね。

人のまとめ方というのは実に微妙で、いくつも答えがあります。組織に一様なまとめ方というものはないはずなんです。そして、人が仕事でセンスを発揮するときは、「良し悪し」よりも「好き嫌い」のほうがモノを言うと思っています。なぜかというと、努力が娯楽化するからです。その結果、他者に負けないものを獲得する。人事がこのことを理解して使えば、これほどコストパフォーマンスの良いものありません。インセンティブすら、いらないほどですから。これがマネジメントの本質だと思います。

中竹:会社でいうと、リーダーズキャンプのような、徹底的に考える、本気の模擬トレーニングのような場を設けることが大事だと思います。いろいろなケースを想定して、みんなで何度も話しあう。すると、「この人はこれが好きで、こんなセンスやスタイルを持っているのか」ということがわかってきます。そこから、キャプテンを選んでみるのも、いいのではないでしょうか。

スポーツを軸にして語られた、リーダー論。そこにあるのは、組織の上部がいかに本質を理解しているかで、リーダー育成が左右されると言う事実。そのことを実感できたディスカッションとなった。

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