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特別講演[G-6]

タレント・マネジメントで会社を変える
―最新のITを活用すれば人事はここまでできる

平野正信氏 photo
サムトータル・システムズ株式会社 代表取締役社長
平野正信氏(ひらの・まさのぶ)
プロフィール:IBMの開発エンジニア、日経マグロウヒル社(現日経BP社)記者、ハイペリオン日本法人代表、レッドハット・アジア担当VPなどを経て現在に 至る。記者としての人脈、ソフトウエア全般、会計、人事などのITソリューションなどの豊富な経験を生かし、業界のビジョナリーとして活躍。明快な説明に 定評がある。

近い将来、世界的に生産年齢人材が枯渇すると予測されている。それに備えて企業には、既存人材の育成モデルの構築が求められている。サムトータル・システムズは、タレント・マネジメントおよびラーニング・マネジメントといった注目分野で、ソフトウエアを提供する世界的企業。これからより積極的な人事、人材育成が求められる中、同社では最新のITを使って、どれだけの課題を解決することができると考えているのか――。サムトータル・システムズの代表取締役社長、平野正信氏が現状を語った。

【本講演企業】
サムトータル・システムズは、企業の成長戦略に沿った人材育成、スキル開発のためのラーニング・マネジメント、タレント・マネジメントに関するシステム等の統合人事ソリューションをご提供、サポートする独立系プロバイダーです。サムトータルは、「タレントエクスパンション」製品によって、企業の従業員に隠された潜在能力を引き出し、開発するための全く新しいアプローチを提供する唯一のHRソリューションプロバイダであり、人材の持つ可能性を引き出し、従業員がより良い仕事を行うために必要な情報や資源を提供しています。 創業以来20年以上に渡り、全世界で4,500万人以上の利用者と全世界で3,500社以上の顧客実績があります。

世界的に生産年齢人口が枯渇。人員を増やせない時代が来る

サムトータル・システムズは、米国に本社を持ち、タレント・マネジメントおよびラーニング・マネジメント関連のサービスを提供する、世界的なソフトウエア企業だ。顧客企業は3500社を超え、ユーザーは約4500万人。フォーチュン500の43%が採用している。2014年にはスキルソフト社、ラーニング、タレントの独立系最大手のサムトータル社を買収し、拡大を続けている。本講演では日本法人の代表取締役、平野正信氏が登壇。ITによる人材育成の可能性から語り始めた。

平野正信氏 Photo「主要国の生産年齢人口を見ると、今後は世界的に減少する傾向にあります。日本も2060年まで低下を続け、現在の50%になると言われています。しかし、海外でも人は余らないため、国外に求めることはできない。そうなると、今いる人たちにさらに頑張ってもらわなければなりません」

今後、企業の力を高めるためには、外的要因に流されない確固たる土台作りが重要となる。土台作りの基本は、今いる社員を大事にすること。これからは経営戦略と連動させた、現社員の人材開発・人材育成が必須条件となる。

「GE改革で有名なジャック・ウェルチ氏は、人事で会社を立て直した唯一の経営者と言えるでしょう。その手法はいまだに評価されています。人の価値を高めるため、教育はとても重要です。人は教育によって、単なる存在(人在)という位置付けではなく、会社の財産(人財)になります。また、モチベーションが上がれば「自らもっと働きたい、社会に貢献したい」と考えることのできる、貴重な人材となります。だからこそ、社会人向けのビジネス系スキルの教育が必要なのです」

タレント・マネジメントにラーニングを連動させる

世界的なeラーニングプロバイダーであるスキルソフト社は、ビジネス・スキル・コンテンツに特化し、4万タイトル以上の体系化されたサービスを提供している。その目的、効果について平野氏はこう語る。

「主な目的は五つあります。一つ目は、規範となる社会人の条件を知ることです。コミュニケーション能力に始まり、プロセスも重要。最近特に重要なのは、グローバリズムです。常識を押し付けるのではなく、違いを認める。これからは“どちらが正しい”と考えるのではなく、単に違う、つまり“ジャスト・ディファレント”と考えるべきです。また、仕事と家庭の両立も大切です。仕事ばかりを考えず、プライベートも尊重する。人事として仕組みを提供すれば、これは決して不可能ではありません」

二つ目は、リーダーシップと管理だ。管理の要点、CFO的発想、組織力、能力評価、リソースの確保、助言方法、リーダーシップの要件・行動、プロジェクト効率などを学ぶ。三つ目は、戦略を練り、組織力を高めること。管理の質、優れた組織、グローバリゼーション、リスク管理、Six Sigma(不良率)、マーケティング戦略、顧客開拓、顧客満足を学ぶ。

四つ目は、より良い製品・サービスの提供(営業と顧客)。五つ目は、リソースの確保だ。人材をしっかり確保し、頑張ってもらうこと。その点では予算の確保(財務、人事、総務)が大事になり、PL的な観点で組織をつくることが求められる。

ここで平野氏は、人事システムの発展について解説する。人事システムは1990年代に、従業員を把握するための名簿管理として導入された。次の段階では、給与を支払うシステムとして使われる。給与決定には、入社後の履歴が重要であり、その情報蓄積に使用された。その延長線上にあるのがタレント・マネジメント・システムだ。

「タレント・マネジメント・システムは、人事考課の延長線上にあります。人事考課では期初に目標を立て、1年後にどれだけ達成できたかをチェック。その管理が最低限の作業です。そこで、次はどうすればいいかを考えるために、コンピテンシー評価が加わります。なぜ活躍できなかったのか、行動特性は何か、そもそもスキルはあるのか。スキルとして、技能、語学力、専門知識・経験、保有能力が確認されます」

そこからスキルを身につけさせるために、拡張機能としてラーニング・マネジメント・システム(LMS)との連係がつくられていく。個人の実績と能力の“見える化”を行い、学びの履歴から将来の姿を考えた管理を行っていくのだ。

人の成長を管理することが、すべての課題解決につながる

次に、ラーニング・マネジメント・システム(LMS)の活用パターンが紹介された。一つ目は、社員教育、研修管理だ。新人教育から管理者教育まで、順を追って管理していく。あくまでもマネジメントシステムとして管理し、その方向性を見据えていく活用が必要になる。以前はエクセルで行う企業もあったが、現状ではとてもエクセルだけで管理ができるデータ量を超えてきている。

二つ目の活用パターンは、代理店教育だ。販売・拡販のために、代理店、リセラー、パートナー教育を提供する。「別会社への教育は今までのシステムでは難しかったので、ニーズが高まっています。教育費用を代理店側に投資してもらう形ももちろんありますから、コスト的に見合うかどうかを判断できるような機能が求められています。製品にはこのようなさまざまな柔軟で有益な機能が搭載されています」

平野正信氏 Photo次に紹介されたのは、タレント・マネジメントの活用パターンだ。その一例目は採用前から採用後の配属までの管理だ。「採用機能の目的は、人をプールしておき、いつでも採用できる状況をつくることにあります。そのため、外部人材データベース、ターゲットとなる人材の学校別・地域別分析を行い、採用の基準となる学歴、行動特性(コンピテンシー)、能力(スキル)を管理。また、面接および評価プロセスのシステム化を行い、面接者のスケジュール管理。採用候補者の管理し、入社後の人材配置と試用期間中の経過確認も行います」

二例目は、組織をリードする管理職、経営職の管理と研修だ。組織をリードする人材をいかに育てるかは重要なテーマ。タレント・プロファイル・データベースでは名簿に加え、人材モデルに基づく各種能力、知識、実績、目標達成度、管理能力を把握する。今後はこれらのデータが増えていき、その人はどういう人なのかというデータをいかに適切に持つかが重要になる。

三例目は、今後将来を担う幹部候補生(トップ・ガン)の選抜と育成だ。人材モデルに基づく各種能力、潜在能力、必要なキャリアを管理し、その上で通信簿といった資料をつくっていく。その人に企業が期待しているという意識を持たせ、辞めさせないことも重要になる。

四例目として紹介されたのは、グローバルにおける人材の評価と育成だ。グローバルな人材に対して、どう向き合うかということは、プロファイルの点からもとても重要だ。「日本だけで考えれば把握しやすいのですが、海外まで含めるなら、きちんとデータ化しなければ管理できません。特に事前目標設定は重要で、これが評価の基本となります。目標は事前に明示しなければ、査定のときに非常に困ります。海外ではそうなった理由を求めるので、“あと出しジャンケン”は禁物です。あくまでも公平性を考えつつ、そこに本社へのキャリアパスも盛り込むことを想定しておくことのも最近の傾向です」

個人のパフォーマンスとコストを、事業に関連づけて管理

サムトータルのサービスの特徴として、独自の柔軟性・拡張性が上げられる。その一つが、タレント・プロファイルへの数値パラメータの付加機能だ。ここでは四つのパラメータが付加できる。

一つ目は、売上パラメータ。所属する組織、グループの売上から導き出した、一人当りの売上額を計算。貢献度に応じ、一人当りの売上額を個人ごとに調整できる。ポテンシャルに応じた一人当り売上額の最大値と最小値も設定できる。二つ目は、コストパラメータだ。所属する組織、グループの全体コストから割り出した、一人当りの経費を計算。職制、実績に応じた給与額による個人ごとの調整も可能だ。三つ目は、投資パラメータ。組織シミュレーションの際、新たな投資が必要なときに備えることができる。個人や組織に紐付けることが可能だ。四つ目は環境パラメータ。ビジネス、経済、競合など各種要因で変化する環境変数を設定できる。

また、組織シミュレーション機能がある点も大きな特徴だ。現行の組織のまま、人材の配置換えや適材適所シミュレーションが可能。配置が理想的に行われた場合の、コストと売上シミュレーションまで見せてくれる。ここまでできるタレント・マネジメント・システムは他にはまずない。

最後に平野氏は、人材管理の将来について語った。「今後、人材管理は人そのものではなく、その人のパフォーマンス、その人のコストといったものが、事業との関連の中で管理されていくべきだと考えます。そのためにはいろいろな分析が必要ですが、これまでのようなバラバラの思考ではうまくいきません。中心に人事システムデータベースがあり、その周りに教育の履歴や、個人レベルでのPLといった売上・コストなどが総合的に管理されるシステムが必要になっていく。それがこれからの流れです」

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