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特別講演[D-1]

企業が求めるビジネスミーティング英語力
~調査結果とTOEIC SWテストの活用

安藤 益代氏 photo
一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会 IP事業本部長
安藤 益代氏(あんどう・ますよ)
プロフィール:国際ビジネスコミュニケーション協会におけるTOEICプログラムの企業・学校向けマーケティング、普及、実施責任者として、企業・ 学校におけるリスニング、リーディング、スピーキング、ライティング4技能測定の普及とグローバル人材育成をサポート。17年の国際教育コンサルティング経験を持つ。

国際ビジネスコミュニケーション協会は、2013年に大学英語教育学会(JACET)と共同で「企業が求めるビジネスミーティング英語力」の調査を実施。国際的業務に携わる管理職909名が、部下たちの仕事現場でのリアルな英語力について回答した。講演では、同協会の安藤益代氏が調査結果を報告。また、課題解決に向けた方策の一つとしてTOEICスピーキングテスト/ライティングテスト(TOEIC SWテスト)の効果的な活用法を紹介した。

【本講演企業】
国際ビジネスコミュニケーション協会は「グローバルコミュニティーにおける円滑なコミュニケーションの促進」をミッションとし、TOEICプログラムの実施・運営をはじめグローバル人材育成をサポートするためにさまざまな活動を実施しています。TOEICプログラムにはリスニング・リーディングの「TOEICテスト」に加え、スピーキングテスト/ライティングテストがあります。ビジネスにおける実践の現場で求められる英語力をスコアで測定できる「TOEICスピーキングテスト/ライティングテスト」を「TOEICテスト」とあわせて活用することで、実践の場で即戦力となる英語力の測定、グローバル人材育成の指標となります。
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企業の管理職909名が「部下の英語力」について回答

国際ビジネスコミュニケーション協会は、「グローバルコミュニティーにおける円滑なコミュニケーションの促進」をミッションとし、TOEICプログラムの実施・運営を始め、グローバル人材育成を支援するさまざまな活動を行う。TOEICプログラムには「TOEIC テスト」 、「TOEICスピーキングテスト/ライティングテスト(TOEIC SWテスト)」、「TOEIC Bridge」の三つのテストがある。いずれも世界共通のテストで、2012年には約150ヵ国、約700万人がTOEICプログラムを受験、アジアや欧米など14,000以上の企業・大学・団体等が活用している。

安藤氏の講演は、最近の仕事環境の変化とその影響に関する説明から始まった。「近年、テレビ会議、電話会議、SNSの活用などIT技術の飛躍的な進歩によりコミュニケーション・スタイルが変わってきました。また、ポスト・リーマンショック、韓国・BRICs・ASEAN諸国の躍進によりビジネスの対象も変化し、英語が母国語でない者同士(多国籍・多文化・多国間)のコミュニケーションが増加しています。ビジネス現場では海外拠点の増加や国際部門の拡大でグローバル人育成の需要が増し、ローテーションできる人材の不足も起きています。より高度なグローバル人材が求められ、業務目的を達成できる英語力、発信スキルの強化が行われています。また、外国人採用も増えてきました」

現在、日本企業の人材の英語力はどのような状態なのか。ビジネス現場の真の姿を知るために、2013年に同協会と大学英語教育学会(JACET)は、共同で「企業が求めるビジネスミーティング英語力」の調査を実施した。

「調査対象は国際的業務に携わる管理職で、部下の英語力について909名が回答しました。プロフィールによると、英語使用歴は10~15年、海外業務経験は3~4年。所属部署の人員は管理職人数3~4人で非管理職人数10~13人、うち英語使用者数は6~7人。職場の英語による仕事率は3割以上でした。英語会議の開催率は20.3%~21%。会議の頻度は社内英語会議が月5回、提携先では2.5回、社外では2.7回。参加人数は社内6~10人、提携では3~5人、社外は3~5人でした」

英語の実力はCEFR平均レベルであり、B1でTOEIC550点レベル。CEFR目標レベルはB2.2で850点レベル。300点ほどのスコア差があったという。

アンケートに見える「分かり合うことの難しさ」

次はアンケート結果の発表。その内容からは、ビジネス現場で英語を使いこなす難しさが伝わってきた。「社内・提携会議では『課題発掘/問題解決・調整』、社外会議では『交渉』が最も困難な項目でした。相手の主張をくみ取って応対する過程や、ニュアンス・細部の伝達・理解に関する困難度も高い。また、リスニングが際立って困難で、話がわからなくなるケースもよくあるようです。これはネイティブの早い英語、さまざまな国の独特な発音が影響しています。また、気後れする、恥ずかしいなど精神的要因があると答えた人は5割以上。異文化理解の難しさを指摘する声が多くありました」

安藤益代氏 講演photo 英語ミーティングの実態を見ると、会議形態では、社内はテレビ・ネットが約5割、社外は対面が8割。意外なのは、提携先や社外では言語的背景が多様で英語が母国語の人よりも、英語を第2言語や外国語とするノンネイティブの割合が大きかったことだ。開催目的を見ると、提携先・社外との会議では交渉や販売系の会議が多い。また、目的別困難度を見ると、提携先では目的にかかわらず5割程度が困難と感じている。社外では交渉が際立って困難度が高い。

続いて、安藤氏は会議での作業・工程単位での困難度を解説した。「ビジネスミーティングを『準備→背景説明→提案→質疑応答→意見交換→結論』と分けると、準備~結論では『コンセンサスを得る』『判断や結論を下す』『解決策や対応策を示す』『意見交換をする』『質疑に回答する』の項目で難易度が高い。また、相手の主張をくみ取り、応対する過程での困難度が高くなっています」

また、スキルでの困難(スピーキング力、会議力、リスニング力、人間関係の構築力)では、「ニュアンスを不理解」「ニュアンスを伝えず」「細部説明の不理解」「細部の説明せず」で難易度が高く、ニュアンス・細部に対する困難度が高い。

シンプルな言い方ならわかっても、少し複雑な言い方をされると途端にわからなくなる。英語の困難(単語力、ニュアンス・ユーモア、英語理解力)では、「速いリスニング」「さまざまな発音を聞き取る」で困難度が高く、リスニングが際立って困難だ。精神要因(集中力、タイミング、想定外への対応)では、「英語に自信が持てず躊躇」「積極的姿勢がない」「割り込みができない」「想定外の展開に慌てる」「集中力が持続しない」で精神的要因があるとの回答が5割以上だ。

自由回答では、5割が異文化理解の難しさを指摘。「相手の商習慣がわからない」「起承転結がはっきりしない」「発言の仕方に違い」といった声が聞かれた。安藤氏は会議を乗り切る心構えとして、“経験を積むこと”“国ごとに相手の話し方や英語環境を勉強すること”の大切さを説く。

「例えば、インドの方はよく話し、数字に徹底的にこだわる人が多い。私がインドの方との電話会議に参加したとき、日本人は数字の小数点以下が多少違っても問題ないと思いますが、そこで、なぜ違うのかと言われたことがあります。結果、3時間の会議のうち2割くらいしか話せませんでした。会議相手がどのような人かを知り、対処を準備することは大切です」

「今ここでしかできない」とモードを切換え、会議に臨む

次に安藤氏は、英語会議をうまく進行させる方法について解説。ポイントは「モード切換」と「英語力」だ。「モード切換とは自分、チーム、参加者すべてが、会議からBusiness Meetingへと気持ちを切り替えること。海外の方は『ここは議論の場だから問題を解決して、きちんと意思決定しましょう』と言います。情報交換は他でできても議論は今ここでしかできない。ミーティングのゴールを明示してそこへ導く意思を持つべきです」

また安藤氏は日本人が注意すべき点として、異なる意見への対処を挙げる。「ちがう」を英語になおすと「wrong(間違った)」と「different(異なる)」の二通り。無意識に使う「ちがう」という日本語の中に潜在的に違う意見が出ることをよしとしない風潮はないだろうか。一方、海外の人は違う意見を「ウェルカム」と歓迎する。また、日本人は会議に上司や先輩がいると恐縮し意見を言わないことがあるが、海外の人は「決定権のある人が集まるから大事な会議」と期待感を持って臨む。この点が違うのだ。

また安藤氏は、会議進行者は参加者の役割を把握し、ミーティングへの貢献を第一に考え、時間当たりの生産性なども意識すべきだと言う。そして、忘れがちだが参加者へのリスペクトとアテンションを心に留めることが大事だ。

「私の体験ですが、ある国際会議で採決を取ると、一人だけ反対だったことがありました。そのとき進行役が『彼をアンハッピーな気持ちのまま、母国に帰すわけにはいかない』とその結論に少し留保事項を加えたのです。それがあればその人には会議に出た意味が生まれます。進行役の姿勢に心を打たれました」

可視化が難しかった「英語発信力」をテストで把握

二つ目のポイントは「英語力」だ。最も大切なことは、スピーキング力とライティング力を身に付けること。「なまりや多少の誤りがあっても、情報をきちんと伝え、タスクを達成する。その場で、英語で考え、論理を展開できる即応力を身につけることが重要です。特に現場でのスピーキング力の向上は企業ニーズが高くなっています」

これを学ぶ近道は、自ら英語の勉強は行いつつ、会議で自ら発言の機会を得るよう努力することだ。英語力の基本は「状況を説明する」「質問に答える」「文書の情報にもとづいて説明する」「発生した問題に対して解決策を述べる」「賛否あるテーマについて自分の意見を論理的に述べる」であり、この基本を大事にすべきである。

安藤益代氏 講演photoここでの英語力チェックには、TOEICスピーキングテスト/ライティングテスト(TOEIC SWテスト)が最適だ。TOEIC SWテストは国際的な職場環境において、効果的に英語でコミュニケーションをするために必要な「話す・書く」能力をスコアで測定できる。日本ではすでに約140の企業・学校が活用している。テスト形式はPC上で音声を吹き込み、文章を入力。テスト時間はスピーキング20分、ライティング60分だ。PCを使用して受験するが、回答データは米国に送信され複数の採点者によって厳密な基準に沿って採点が行われる、信頼性の高いテストである。問題の素材として、上述の会議の場で必要な英語をはじめ、日常生活やビジネスで頻繁に遭遇する場面を採用している。

「これまで可視化が難しかった英語発信力をスコアで測定でき、自分の力を証明できます。実践的なコミュニケーション能力を測定できるので、自分の英語を“わかる”ではなく“使える”レベルかどうかを測定することができます」

2014年1月にTOEIC SWテスト団体特別受験制度では新たなモバイルシステムを導入。インターネットへの接続が不要になり社内で気軽に実施できるようになった。テスト実施日・期間・時間も柔軟に設定できる。また、テスト結果の受け取りもこれまでより早くなっている。スピーキングのみ、ライティングのみの受験も可能。また、希望により試験官の手配も可能だ。

身に付けるまで大いに困難さが伴う「ビジネスミーティング英語力」。それだけに、日々スコアがチェックできることは、成長を図るうえでも重要だ。安藤氏の話は参加者にとって、ビジネス英語の奥深さと学ぶ面白さが感じられた講演となったようだ。

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