2015年卒業予定者の採用に関する広報活動の開始時期を、4年生になる直前の3月に後ろ倒しすることが予定されている。2013年度卒業者を採用する際の2ヵ月後ろ倒しに続く大きな変動だが、今や企業にとって未来を見据えた採用活動は重要なものとなっている。では、実際に企業はどのように対応していけばいいのか。「2015採用対応型 未来志向の採用手法とは ~就活生を惹きつける採用手法に迫る~」と題して、株式会社ネオキャリア 新卒採用企画営業部部長の篠原広高氏が講演を行った。
講演はまず、2014年卒業予定者の採用活動に関する振り返りから始まった。マイナビの新卒採用予定調査によれば、48.2%の企業でエントリー数が減少。「13年卒業者の採用あたりから、母集団形成に苦戦する企業が見られるようになりました」と、篠原氏は語る。
「企業の採用活動の時期を見ると、13年卒業者と比較して多少前倒しの傾向にあります。13年卒業者で苦戦した企業が多かったので、早めに動いたところが増えたようです。活動の早期化は今後も続くと思われます」。学生の志望調査を見ると大手志向が増加。14年卒業予定者の採用では、先行きをみながら採用数を増やす大手企業もあり、そのニュースが学生に影響したようだ。
では、現状の内定率、就活終了予定はどうなっているのか。4月26日付の日本経済新聞によれば、内定率は14.4%で、前年の13.6%よりアップした。「マイナビの調査によれば、採用活動を8月までに終了すると回答した企業は67.8%で、前年66.2%よりアップ。上場企業に限ると75.4%で、前年の67.5%よりも大幅にアップしました。今年は内定承諾率も高く、昨年以上のペースで採用活動が終了しそうです。しかし、中小企業やベンチャー企業の声を聞くと『数は集まっても、質はもう一つ。内定しても他社にもっていかれるケースが増えている』という声が聞かれます」。時期が早まる中、人材の奪い合いが厳しさを増しているようだ。
これに加え、経団連は2015年度卒業予定者から、採用活動の解禁を12月から翌年3月へと3ヵ月の後ろ倒しを行う予定だ。しかし、これに属さない企業では倫理憲章に捉われない採用活動を行う動きもあり、ますます企業の採用活動は混迷を深めそうだ。2015年度卒業予定者の採用では、2016年度卒業予定者の採用を見据えた戦略が必要になっている。
では、ネオキャリア自体の採用活動はどうだったのか。「2014年度卒業予定者の採用はエントリー2万件、説明会集客4500名、内定承諾70名で、比較的順調でした。有名企業に内定をもらっていても、最終的に当社を選ぶ学生も多くいました。どうすれば、このようなことができると思われますか」と、篠原氏は参加者に質問を投げかける。
ネオキャリアには、多くの学生の声を聞ける場所がある。2012年5月、新宿に「就トモカフェ」をオープン。就活生や学生が月間2000人、これまでに1万人を超える学生が訪れたという。篠原氏はここの店長でもある。「学生はSPIの勉強をしたり、今受けている企業の情報交換をしたり、企業人事を自主的に招いて勉強会をしたりと自由です。特徴的なのは1万人のうち3500人が地方学生という点ですね」
篠原氏は、学生たちについてこう語る。「自己分析を行う学生は多いのですが、思い込みの部分も多い。大人が話をすると軸がぶれることもあります。そのため、共感してくれたり、一緒に考えてくれたりする人には大きな信頼を寄せる傾向があります。そして、学生は最終的には『人』で企業を選ぶのです。複数の内定をもらっていても、最後は人。学生は働いたことがないから判断材料が少ない。だからこそ人が重要なのです」
ここで篠原氏は、2015年度卒業予定者の採用に向けて、どんな会社でも使える欲しい学生を採用する三つのポイントを紹介する。「『接触頻度を増やす』『面接官・リクルーターのスキルをあげる』『スピード、スピード、スピード』の三つです。しかし、二つだけ前提があります」
「量を確保するためのポイントは二つ。一つ目は就職サイトの活用です。利用すれば学生の目にふれ、量を確保することができます。また、企業は管理がしやすくなるというメリットもあります。二つ目は、企業ホームページの拡張です。3年くらい前からホームページを見る学生が増えました。志望度が高い学生ほど訪れる場です。これらに加え、イベントやフェイスブックなども必要に応じて活用するとよいでしょう」
インターンシップナビの活用を見ると、6月1日のオープン後、6月中までに情報収集を終える学生が多い。そのため、大手企業の人事は6月1日を強く意識している。「この日にどんな情報を出すか、大手企業は危機感をもって準備します。学生の動きが集中することを知っているからです。インターンシップを実施する企業は、業界問わず増加傾向にあります。2016年度卒業予定者の実施時点では、今の150%にまで企業が増えるとも予想されます。実は2013年度卒業者で採用に関する広報が2ヵ月後ろ倒しになった時、企業は様子見してあまり対策を講じませんでした。その結果、学生の動くタイミングに動けず、採用が想定以上に長引いてしまった企業も多かったのです。よりドラスティックに採用の時期が動く2016年度採用では、その反省を踏まえて活動する企業が増えるでしょう」
ここで学生の声が紹介された。
「これらの結果は、学生との接触頻度が影響しています。以前私たちが、接触頻度と内定承諾の関係性を調べたのですが、選考回数が多いほうが内定承諾を得やすい。特に3回と4回では結果が大きく違います。学生は会社に選ばれながら、自分自身でも会社を選んでいるんです」
接触頻度を増やすには、ポイントが二つある。「まずは、いかに『人事以外』の社員と接触させるか。人事と何度会ってもあまり意味はありません。それより、現場の社員にどれだけ会わせられるかのほうが重要です。志望度合いに大きく影響を及ぼすからです。次に、学生に『想像を越える驚き』を提供できるか。よく『専務』『事業部長』といった肩書きのある人に会わせようとしがちですが、肩書きはあまり意味がありません。それより、学生がイメージしやすい入社3年目までの社員に会わせたほうがいいでしょう。『3年後にこんな姿になるなんてイメージができない、この会社に入ればそこまで成長できるのかな』といったように、学生が憧れる人に会わせるべきです」
「リクルーターの質に差があると、学生は不満を持ちます。若い人でこのレベルだから、と会社全体の社員レベルまで疑われてしまう。私たちの調査で、企業への志望度が上がった時点はいつかを聞いたところ、面接36.6%、先輩社員との接触21.3%で、約6割近い人が会った人がきっかけだったと答えました」
ネオキャリアでは、面接官研修・リクルーター研修を実施し、各事業部にリクルーターリーダーを配置。目標に対し面談数がどこまで進んだか、学生は何を懸念し、他社はどこを受けているかなど、情報を把握している。また、就活の段階ごとに研修を行い、リクルーターのスキルを高めている。「人選に細心の注意を払うことが重要です。そのため、外部の力を借りてでも、スキルアップは図るべきです。また、会社全体で採用に関わる意識醸成も大切です」
採用の成否が分かれるのは、たとえば仕事がすごくできる人をリクルーターにするような場合だ。学生が話を聞いてすごいと思っても、自分はなれないと思われたのでは意味がない。「仕事のすごさよりも、自分の話を聞いて相談にのってくれる人、学生に寄り添ってアドバイスできる人に親近感を持つ傾向があります。しかし、このスタイルはやらされ感があるとすぐわかってしまうので注意が必要です」
「学生側も、どのようなタイミングで企業から連絡が来るのかを知っています。二つ目のコメントは、企業側がお見合いしているうちに他社に決まってしまったパターン。新卒採用は、基本的にスピードが早い企業のほうが強いと思ってください」
ネオキャリアでは、欲しい学生には即、連絡している。その場で内定通知もあるという。「ただし、すぐに連絡がくると、その企業は危ないかもしれないと考える学生もいます。採用がうまくいっていないのではないかと考えるんですね。学生のタイプを判断すべきです。それだけで一気に採用数が増えた例もあります。ただ、健全なえこひいきなら善と考えます。また、本当にほしい人材なら誠意を見せるべきです」
ネオキャリアでは上記のような分析のもと、その企業のほしい人物像を、欲しい人数採用するための採用支援を行っている。「Strategy(採用戦略の立案)→Entry(知る〜出会う)→Contact(セミナー〜選考)→Fix(内定〜入社)とすべての段階で支援可能です。Outsourcing(学生の管理・連絡代行・セミナー代行)も行います。企業によっては戦略の立案から行い、要件が決まっていればエントリー、応募数を増やす方策や、内定承諾を得るための工夫など、企業様の課題に応じたサービスやアドバイスを行っています」。参加者は篠原氏の講演を通じて、学生の就職活動における本音を垣間見ることができたようだ。