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特別講演[F-6]

現場視点の組織改革
~映像を活用した人と組織の変革の進め方~

末吉輝彦氏 photo
株式会社日本能率協会マネジメントセンター シニアHRMコンサルタント
末吉輝彦氏(すえよし・てるひこ)
プロフィール:映像制作会社で企画・製作に従事。(社)日本能率協会に入職後、映像を活用した教育コンテンツの開発・製作を担当。(株)日本能率協会マネジメントセンターへ転籍後、映像活用のノウハウを活かした教育プログラム開発およびコンサルティング手法を確立。現在は職場改善に映像を活用したコンサルティング活動を行っている。

風土改革、理念浸透、CS向上活動、業務改善活動など、多くの企業で行われる組織横断型プロジェクト。しかし、これらの取り組みを成功させることはなかなか難しい。どうすれば、社員たちに同じ思いを抱かせることができるのか――。そのための方策として、映像の活用が注目されている。10年にわたり映像による組織活性に取り組んできた、株式会社日本能率協会マネジメントセンターのシニアHRMコンサルタント 末吉輝彦氏が「現場視点の組織改革 ~映像を活用した人と組織の変革の進め方~」というテーマで、実例を交えながら語った。

【本講演企業】
私たち日本能率協会マネジメントセンターは、1942年(昭和17年)に日本能率協会が創立されて以来、企業の経営革新を人材育成という分野から総合的に支援してまいりました。おかげさまを持ちまして、人づくりに関するお手伝いも、手帳や出版物も、時代をこえてお客様からご支持をいただいております。私たちは、人は生涯を通じて成長できる無限の可能性をもった存在であると信じています。成長したい、向上したいと願う人たちを支援しつづける企業でありたいと考えています。
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変革を阻害する「タテ割り組織」と「現場からの距離感」

どうして企業で行われる組織横断型プロジェクトは成功しにくいのか。末吉氏は、いま企業で起きている問題点を指摘する。「人と組織の変革といった全社的な取組みは、ほとんどの企業で行われています。しかし、プロジェクトを立ち上げたはいいが、2年ほどで終わってしまったといった声もよく聞きます。うまくいかないことの理由は、大きく二つ。タテ割りの組織化と、現場からの距離感です」

一つ目のタテ割りの組織化による障害とは、細分化された組織にある部署ごとの壁だ。人に仕事がついているような状態で、横が何をやっているのかもよくわからない。現場に蓄積された「技」「知恵」を共有することも難しい。まさに人の切れ目がノウハウの切れ目であり、新たに着任した人はゼロからスタートすることになりがちだ。人材育成も現場長の能力によって対応にバラつきが起きる。

末吉輝彦氏 講演photoもう一点は、現場からの距離感だ。たとえば、店舗を持つ企業では組織の上流から顧客接点のある店舗にたどり着くまでに、相当の距離が生まれる。また最近では、接客に人材派遣スタッフを使うところも多く、人材の中身も複雑化している。この立場の違いが現場までの距離感を生む。そして距離が生まれると現場ごとに「個別化」が起き、スタッフが一生懸命に顧客に向かっていても、そのサービスが絶対最適でなくなるケースも増えていく。

「私はこれらの問題に10年にわたり取り組んできました。そこで行き着いたのはその会社の仕事にかかわる映像素材をつくって、みんなで『共に視る(みる)』という方法です。会社のマニュアルや規則といった書物を見るより、一つの映像を見たほうが話もしやすい。このとき大事なことは、映像として見えているものだけでなく、見えてはいないが仕事上大事なことまで話せるかどうか。思いをはせる意識が必要になります」と、末吉氏は語る。

映像を「媒介」に語り合うことで一つになれる

同じ映像を見ても、人によって気づくポイントや感想は違う。しかし、それを語り合うことで共通する意識も見えてくる。「映像を見るとき、もし自分がその状況に置かれたらどうするかと考えてみる。頭の中で想像し、そのことについて隣の人と話してみる。背景にはどんな思いがあるかと考えていくと、見えている絵以外のところで、心を通じ合わせることができます。これが『共に視る』というコンセプトです。仕事の映像の中には、その会社らしさといった行動や言葉が含まれています。ただし、一人ひとりは違う物差しを持っていますから、こんな見方もあるのかと発見も生まれ、それが新たな刺激となるのです」

末吉氏は、常々企業に対して「映像を伝達ではなく、媒介にしてほしい」と伝えているという。伝達と考えてしまうと、対話では「その人であり自分」が出てしまう。そうではなく「媒介としてとらえ、それを契機に互いを相対化してほしい」と。すると、押し付けではない形での、理念や考え方を浸透させるきっかけになる。組織の活性化を図る有効な手段となりうるのだ。

「媒介と考えれば見えている映像から、見えていない部分を共有できるようになります。これは映像を使った共有モードです。映像を用いて同じものを見て、そこに注意を向けさせることは、互いの心を通わせる上で大きな意味を持ちます。共通感覚が生まれるのです」

人事部や企画部といった推進部署の役割は、この映像による共有モードになった様子を、さらにその外側から観察し、まとめることにある。そして、現場の人が気付いたこと、そこで共有できた新たな思いなどを、ほかの現場にも広めて、浸透させるのだ。

「そうすると、思いの共有と実践、気づきのサイクルが生まれます。推進部署が映像を使って、気づきの場を設けることはその点でも重要です。これを繰り返して、現場に刺激をよいタイミングで刺激を与え続けることは組織の成長につながります」

日本能率協会マネジメントセンターでは、このような映像を活用した「S-MAX(Service-Maximum)」というサービス感度向上プログラムを提供している。サービス感度とは、100人100通りの顧客の気持ちを瞬時に察知して、気配り・心配りができる感性能力のことだ。

これまで、コミュニケーションや接客術といったものは、個人のセンスによるところが多く、技術伝承は難しいと考えられてきた。「S-MAX」は映像を使い、個人センスの範囲だった「気づき」の感性能力を引き出す教育プログラムとして開発されている。手順は、企業サイドと気づきのプロセスを確認しながら、仕事現場の動画での生映像を制作。その映像を見ながらファシリテーター(気づかせ役・引き出し役)を立ててミーティングを行う。プログラムは、映像を「見て」、互いに「話し」、文章に「書く」といった、意識化の「しかけ」が駆使された内容となっている。現在では、このプログラムの技術を応用し、技術伝承に加え、組織改革支援などを行っている。また、「S-MAX」はファシリテーターの重要度が高いため、「オリジナル教材開発」に加え、「ファシリテーターの派遣・養成」がパッケージされたプログラムとなっている。

「リアルな現場映像」が持つ強烈な説得力

映像による組織活性化は、実際にはどのように行われているのか。末吉氏は「S-MAX」を実施した企業事例を紹介していった。

●事例1:三国コカ・コーラボトリング 営業マンと組織の活性化

三国コカ・コーラには、飲料製品の販売を担当し、自販機設置交渉をするセールスマネジャーがいるが、個々の営業にノウハウが保有され、広く組織的に共有化されていなかった。営業の先達から口伝えで学んできた「営業マンの心得」も大事なことと認識して、全員で唱和はするものの形骸化。そこで原点回帰して、三国コカ「営業マンの心得」の再認識を通し、その根底にある「思い」や「考え方」を共有。マインドの醸成と実践のための行動を獲得する「場」を展開したいと、「S-MAX」活用された。

映像制作では、営業の仕事に密着し、自販機を置かせてもらっている企業の社長も登場してリアルな仕事現場が再現された。インタビューでは、営業と社長の信頼関係がよく伝わるコメントが聞かれた。

「各拠点の営業部署で『共に視る』場を設け、映像の中で『いい関係』ができているお客様に、三国マンとしての『どのような思い』が伝わっているのか、気づき合いのディスカッション(気づき教育)を行いました。結果、『大事にしたいマインドが共通の感覚になった』、『組織内のつながりを感じるようになった』との評価をいただいた。また、映像には営業ノウハウ(技)も盛り込まれており『営業技術の伝承がスムーズになった』との声もありました」

●事例2:ISETAN MiRRORのコンセプト浸透

三越伊勢丹のコスメ新業態「ISETAN MiRROR」の売りは、「自由に比較検討できる環境をサポート」「お客さまのニーズにあわせた多様なアドバイス」「ブランドの枠を超えたご提案」の3点。そこで「欲しいときに・好きなように・欲しいモノだけ買えるラグジュアリーコスメショップ」というコンセプトの実践を、マネージャーからスタッフまで共有したいと「S-MAX」が活用された。

末吉輝彦氏 講演photo映像では、店舗スタッフが実際にお客様に化粧品を勧める様子を撮影。また、エリアマネージャー、店長、お客様と各々の立場からのインタビューが盛り込まれた。コメントでは店の特徴を活かしたいという姿勢が、各々のポジションで語られており、映像による「気づきの場」を通して、新しい価値を提供する新業態での組織活性化が図られた。

「複数のインタビューでも共通する部分があり、それを聞くと店のコンセプトについて深い納得が得られます。これも『共に視る』効果です。そして、管理者と現場スタッフの『思い』の一貫性を図ることも可能になります。結果、先方からは『ショップの理念への理解・納得・共鳴ができる』と評価をいただきました。新スタイルに対する誇りが芽生え、チームワーク醸成の場づくりにも活かされているということです」

●事例3:東武鉄道技術部門へのCSアプローチ

鉄道会社にはタテ割り組織の風土があり、東武鉄道技術部門も例外ではなかった。同じ技術部門である車両部、工務部、電気部といった部署同士も、他が何をやっているかわかりづらい。会社が推進するCS活動も、挨拶・マナー運動との違いをクリアにできない状態であり、具体的に何をすれば良いのか困惑し、なかなか積極的には実践されなかった。そこでCS活動を浸透させるため「S-MAX」が活用された。

「熱き想いの先に」と題して、各部署で働く技術者の姿を映像として制作。「気づきの勉強会」を実施し、CS活動に消極的だった技術部門の活性化を図った。その中で素直に感じたことを語り合う「場」を初めて設け、普段見ることのない自分の仕事、他部署の仕事を見て「互いに心が通じる」ことを実感してもらった。

「先方からは、『技術部門がCSを語り始めてくれた』と大変良い評価をいただきました。勉強会をきっかけに、安全が顧客サービスにつながることを理解してもらい、自分の仕事を見つめ直し、また仲間を感じてもらえた。今では積極的にCS活動への取組みを考え、行動しているそうです」

最後に、末吉氏は、組織活性化のための映像活用では「実感がもてる場づくりが重要」と語った。 「共に視ることを実践しながら、そこに実感がもてる『場』をつくること。そのためにはどのような映像を使うかが重要になります。そしてミーティングの成否を左右するのは、ファシリテーターの質。よいファシリテーターも、成功への大切な要素となります。推進事務局としての『場のしかけ』がさらに重要になってきます」

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