アートを媒介に、企業のミッションやビジョンの構築や理解を目指すセッションを提供しているHRインスティテュート。ワークショップの参加者たちは「アートフルシンキングプログラム」の簡易バージョンを体験した。カラフルなバランスボールや風船が持ち込まれ、他のセミナーとは全く違った会場の雰囲気も手伝い、グループに分かれて行われた最初の自己紹介からリラックスした雰囲気が充満した。
まずは、風船のバトンを次々に回しながら、グループ毎に配布された絵の感想を一言ずつ述べる5分間のセッション。絵を変え、座席を変わり繰り返された。「パッとみた印象を話す言葉と、じっくり見で話す言葉では、使う単語も表現も違ってきます。まずは言葉に壁を作らず、とにかく感じたままを言葉にする状態を作り出すアクティビティーとして、この手法をよく用いています」と小島氏。
次に取り組んだのは「リレーお話づくり」。参加者が表現する言葉のすべては大切なものであり、なるべく多くの人で共有できるような状態に持っていくことを目的としたセッションだ。1枚の同じ絵を見て一人ひとりが「いつ、どこで、誰が、何をして、どうなったか」の五つを空想して紙に書く。その五つを一旦バラバラにして、他の人の空想と組み合わせて生まれたストーリーを、バランスボールに座って順番に発表するというものだ。
このように、アートを使い、バランスボールなどで環境を変えながら、感覚や感情を引き出すことがこのセッションの特徴に挙げられる。「大人は常に言動を考え、社会的に振る舞うケースが多いと言えます。ただ研修や会議ではもっと思考の可能性を拡げるべき。そこで『アフォーダンス理論』を取り入れているのです。すなわち、ある環境に飛び込んだ瞬間に、脳が考えるよりも先んずる身体の反応を活かした手法です。環境という変数によって言動のパターンや殻を崩し、新たな創造を生み出します」。小島氏は身体を起点に思考を「ほぐす」ことによる可能性や価値観の拡がりを語る。
「バランスボールに座っての研修」「壁全面のホワイトボード活用」「レイアウトの可変性が高い八角形の机の配置」など、創造性に働きかける環境づくりを進める企業は少なくない。「米国では歩きながらの会議も流行っています」と小島氏。個々人の能力を引き出す上で「アフォーダンス理論」は、とても重要な理論と言える。