皆さまの中には、「財務会計」研修と聞くと、憂鬱な気分になる方がいらっしゃるかもしれません。冒頭から宣伝のようになり恐縮ですが、当社は財務会計研修のコンテンツの内容の良さ、自分で言うのもどうかと思いますが、私を含め、主力財務講師陣の質の良さをウリにしています(笑)。「財務会計体験セミナー」という固いタイトルではありますが、皆さまには楽しいお時間を過ごしていただければと思います。
メインテーマは「アカウンティング」ですが、初めに申し上げておきたいのは経理などの専門職でなければ、わからなくても大丈夫ということです。目指すのは、財務諸表からさまざまなメッセージを引き出し、パッと見た瞬間に気の利いた一言が言える「読む」レベルです。
財務諸表はおもしろいことに、細かいところまでわかろうとすると余計に読めなくなるもので、ざっくりと「どうしたらいいの?」という視点で見られるようになると、大きな結論を出せます。ですから「わかろうわかろう」としてはいけません。ここまで知っていればいいという線引きがあればよく、実務などはネットで検索すればいくらでも出てくることを知っておきましょう。
再度、強調して申し上げておきます。重要なのは、財務諸表をパッと見た瞬間に気の利いたことを言えるようになること。そしてそれを、取引先や銀行にどう見せるかを考えることです。
財務とはオプションの固まりですから、重要なのは継続性の原則です。有価証券の評価方法も何通りかありますので、財務諸表の作り方など何万通りもできてしまいます。一回選んだら続けるというルールでやっていけば、数字が読めるし、気の利いたことが言えるようになるでしょう。
ではここで、実体とフィクションについて考えましょう。売上高・利益・資金繰りなどが「実体」であるにもかかわらず、株価・信用力・評判といった「フィクション」は実体に大きな影響を与えています。「倒産する」と言われている会社100社のうち、本当に倒産しそうなのは10社ということもあります。
財務とは「フィクション」で実体をコントロールすることであり、あえて悪く言えば「無から有を生み出す詐欺師的な世界」のこと。ですから本日は数字を読み、「どう見せるのか」のヒントとなるお話とワークをしていきたいと思います。
まず、損益計算書の基本構造を知っておきましょう。損益計算書とは、一定期間(通常は1年)の経営成績(フロー)を表示したもので「収益」と「費用」の差額分が「当期純利益」となります。
この中の「売上原価」とは、当期に販売された商品や製品をいくらで調達したかを示す金額で、これを売上高から引いたものが、企業の商品力や競争力を表す「売上総利益(粗利益)」です。
「販売費および一般管理費」とは、販売や管理にかかった費用のことで、これを売上総利益(粗利益)から引いたものが、本業の収益力を表す「営業利益」のこと。「営業外収益/営業外費用」は、本業以外の活動から経常的に発生する収益と費用で、これを営業利益に加減すると、1年間普通に事業を営んだ時に生まれる利益を示す「経常利益」に。「特別利益/特別損失」とは、経常的ではなく臨時的・偶発的に発生する損益や、過年度に謝って経常した収益や費用の修正による損益で、これを経常利益に加減すると、法人税・住民税・事業税を差し引く前の段階の利益を示す「税金等調整前利益」になります。
ここで、財務比率を11通りご紹介しておきます。
以上のことを踏まえて、ワークをやってみましょう。
これは「価格の違い」と「原価の違い」という視点で見るとわかりやすいと思います。
いくつかの視点を挙げてみましたが、財務諸表を読めるようになる出発地点は「同じ利益でもどうやって利益をあげているかを考えること」です。本業でも儲かっているのか、工場を売って固定資産売却利益で100億儲かっているか。これでは企業の健全性が全く違います。
また、商品売買でも、売上高(商品や製品、サービスの対価)と売上原価(売った物をいくらで調達したか)を考えてみる必要があります。製造もしかり。製造であれば、原材料費+人件費+外注費用費+減価償却費などですね。
しかし、会計上ではそうしたことが見えません。売上総利益(粗利益)を見て、分析することが必要になる。そして、商品力や競争力によって、市場でいくらの付加価値をつけたのか。オンリーワン企業だと売上総利益を取れますが、似たような会社では粗利益を取れないという結果になるのです。ほかにも営業利益や販売、管理費などの有無によって業界特性があるため、業界によっても視点を変えていく必要があるでしょう。
アナリストレポートなどを見ると、緻密な分析をするためのツールとして財務比率を使っている印象がありますが、実際に気が利いた一言が言えるかどうかは、財務諸表をパッと見た瞬間の感覚値で実際には複雑な分析は必要ないのです。例えば、自分と相性のいい比率を七つ程度選んで、どんな財務諸表を見る時にでも、電卓を使わずに目分量で見る。執拗なまでに自分が選び出した比率を、電卓を使わずに比較し続けると、瞬時に頭のなかで相対的な比較ができるようになり、どこかのタイミングで開眼しますから。私の場合は週4日ペースで4ヵ月かかりましたが、誰でも読めるようになるのです。問題は「真剣味」と「頻度」だと思います。
次にごくさらりとファイナンス編をご紹介します。サイコム・ブレインズのファイナンスの基本プログラムは、1)ファイナンスの意義、2)投資プロジェクトの評価手法、3)キャッシュフローの予測方法、4)資本コストの推定方法、5)企業価値・理論株価の算定方法となっています。これを軸に、もちろん企業様ごとにカスタマイズしたメニューの作成も行います。
なぜバリュエーションを学ぶ必要があるのか。それは「採否決定」「順位づけ」「プライシング」「バリュードライバー」のためです。
投資判断を行う際に使われる主要評価テクニックとしては「回収期間法(PP法:Payback Period)」「正味現在価値法(NPV法:Net Present Value)」「内部利益率法(IRR法:Internal Rate of Return)」の三つの手法があります。
前者二つの方法について解説しますと、回収期間法とは、「キャッシュフローの累積合計=初期投資額」となる期間のことで、採否決定の場合、PP
ファイナンスとは、いくら投資したらいくら儲かるのかを知る事です。そう考えると、ファイナンスは財務を専門にしている人だけではなく、事業を行う全ての人に理解してもらう必要があると言えます。営業や技術の人でも、会社から予算を与えられて利益を出すという事は変わりませんから、ぜひ学んでもらいたいと思います。
以上、簡単ですが、アカウンティングをメインに財務会計についてお話いたしました。財務会計に苦手意識を持つのではなく、こうした機会に少しでも身近に、そしておもしろさを感じていただければと思います。特にアカウンティングに関しては場数を踏むことがキモです。研修で得られるものは60%、経験が40%と考えた上で、上手にセミナーを活用していただければ幸いです。