リンクアンドモチベーションは2012年実績で、159社5374名に新入社員研修を実施。そこから得た新入社員の傾向を水谷氏はこう語る。「一つはゴールが見えないと動かない。答えがある課題には積極的ですが、ゴールを設定するような課題では思考が止まってしまいます。二つ目は最短のショートカットを追い求める。効果的に進めたいと思うあまり、動き出しが遅れがちです」。その根底には「ムダなことはしたくない」「スマートにやりたい」といった価値観があるようだ。
一方、雑誌『ハーバード・ビジネス・レビュー』2012年12月号には、こんな言葉が踊った。「動かない営業はいらない」。欧州を代表するコンサルティングファームのトップの言葉で、営業の行動量の重要性を説いたものだ。「客先を回って“所感”を拾い、顧客像を捉える行動の勧めです。まるで一昔前に戻ったような提言ですが、このように会社と新入社員の意識ギャップはますます広がっています」
そんな新入社員が仕事に入ると、「自分ひとりで閉じる」「目的を考えない」「考えてばかりで走れない」「相手の立場に立てない」という状態になり、「課題」「仲間」「顧客」にストレスを抱えることになる。「そうならないためには、事前に同様の経験を積ませることしかありません」。新入社員研修「ダーウィン」では、企業が職場で求める思考・行動パターンの「観点(何を重視してほしいのか)」と「基準(どれ位行ってほしいのか)」に対する期待値のすり合わせを行う。
研修で伝える観点はS・T・A・Rだ。「Say:報連相を怠らずに常に発信し続けろ!」「Target:常に目的と優先順位を考えろ!」「Action:悩む前にまずは一歩を踏み出せ!」「Role play:顧客・上司・同僚などの他者の立場に立て!」。STARで新人に必須のスタンスを効果的に植えつけている。「研修は5~6人の1グループが求人広告会社という設定。(株)クリエイトモチベーションという架空の会社に対し、求人広告のヒアリングから提案を行い、受注を目指します」。研修では、例えば課題に「何から始めたらいいかわからない」と思い、仲間には「意見の食い違いに戸惑い」、顧客には「何を求められているのかわからない」「同意を得られず不満が募る」といったストレスを感じる。まさに予行演習だ。「この経験の予防接種で免疫を高めてほしい」と水谷氏は締めくくった。