「自分で考えようとせず他人の意見を鵜のみにする、深く考慮せず思いつきで行動する……。最近の若手社員にはこうした傾向が強いと言われます。たしかに一つのことを掘り下げて考えたり、多面的に物事をとらえたりすることを苦手とする人が増えているように思いませんか」。日本能率協会マネジメントセンターで研修プログラムの開発を手がける蕪木健司氏はこう問いかける。
「インターネットが普及し、どんな情報でも手軽に入手できるようになりました。以前なら何かを調べるときには、本を読んだり人に聞いたりして情報を集めたものですが、今はネットで検索してコピー&ペーストするだけで済みます。自分で創意工夫したり判断したりする必要がないため、『考える力』が育たないのです」
しかし、そんな環境で育った若い人たちもトレーニング次第で「考える力」が身につくそうだ。「何より大事なのは、事実を正確につかむ訓練を重ねることです。具体的には次の四つのコツを習得することです」
続いて蕪木氏は、新聞記者の技術を取り上げる。「新聞記者は、巷に溢れる多種多様な情報のなかからニュースバリューの高いものを取捨選択し、それらを組み合わせて記事に仕立てるという作業を日々行っています。まさに四つのコツをフルに活用して記事を作っているのです。そこで、彼らのノウハウを学べば、四つのコツを鍛えることができるのではないかと考え、このプログラムを始めました」
この後、プログラムで実践される演習を紹介。たとえば次のようなものだ。「文部科学省は2011年から小学校5年生から英語の必修とさせることに学習指導要領を変更しました。この政策についてあなたはどのように評価しますか」。自分なりの視点をもち、しっかりと道筋を立てて考えなければならない課題が与えられる。「もちろん『考える力』は一朝一夕に身に付くものではありません。しかし、日々トレーニングを重ねれば必ず向上します。皆さんの職場でも、すぐに取り組んでいただきたいと思います」