「日本企業においては、マネジメント専業という現場管理職は存在していません。“マネジメントとビジネスを融合させる役割”の現場管理職がプレイヤー機能を兼ねるのは、むしろ当たり前のことです。問題は、そのバランスが崩れていることなのです」と為広氏は語る。
【調査データ】
●管理職の4割以上が、活動の半分以上を“プレイヤー”として動いている
●マネジメント活動に支障をきたしていると感じている管理職が過半数
為広氏は、「ひと言で表現するなら『悲鳴を挙げている存在』です。しかしもっと怖いのは、部下がその姿を見て、『スキルアップはしたいが、責任を伴うキャリアアップはしたくない』と思うことなのです」と次世代への影響を指摘した。
【マネジメントの定義と現状】
為広氏は講演において、“マネジメント”を『成果を生み出す活動(企業における営利活動)を、強化・安定・保守するための一連の活動』と定義した。現場管理職は、営利活動とマネジメント活動の両方を担う存在だが、PCや携帯電話の登場による“仕事の属人化”、コンプライアンス強化やITシステム導入による“各種帳票類、確認業務の増加”など、求められるマネジメント活動が増加、高レベル化してきている。過去の状況に戻れない以上、現場管理職の“仕事の進め方”を変えない限り、疲弊からは脱却できない。
「日常業務中には、自分の仕事について長時間考えることは難しいでしょう。だからこそ、組織的に時間を取って“管理職の仕事”について考える必要があるのです」
【権限委譲のステップ】
為広氏は、疲弊するプレイングマネジャーへの処方箋として「部下に対する権限の委譲(エンパワーメント)が有効である」と解説する。単純な“仕事の丸投げ”ではなく、「成長を促す経験」として仕事を与えることで、“組織目標の達成と疲弊状態からの脱却”を両立させることが目的だ。そのために、三つのステップを紹介した。
為広氏は最後に「権限委譲の目的は、管理職が“楽”をするためのものではありません。管理職自身が、一段高い所にレベルアップをするためのものなのです」と熱く語った。