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特別講演[D-3]

多忙な管理職を鍛え、学習する組織をつくる
~オンライン学習の最新事情~

山口裕二氏
株式会社ビジネス・ブレークスルー 法人営業本部 営業部長
山口 裕二氏(やまぐち・ゆうじ)
プロフィール:1967年生。早稲田大学卒業。日本テレコム株式会社に入社後、携帯電話・PHS事業の立ち上げなど営業・事業企画に従事。2001 年より(株)ビジネス・ブレークスルーの法人営業部門に参画し、法人顧客への遠隔教育を主軸とした企業研修・人材育成ソリューションの営業・企画・実施を 統括。

人材育成は「変革」の時代に入った

私どもビジネス・ブレークスルー(以下BBT)は、「世界で活躍するビジネスリーダー育成」をミッションに掲げ、1998年に経営コンサルタントの大前研一が作った会社です。主にインターネットを活用した遠隔型マネジメント教育サービスを提供していますが、ブロードバンドもスマホもなかった当時から「インターネットで教育を行う」という信念のもと、チャレンジを続けてきました。

私どものオンライン学習サービスの強みは三つあります。一つ目は、一流の経営者、コンサルタントなどにさまざまなテーマでお話しいただいた、累計1万時間を超える映像コンテンツ。二つ目は、自社開発した「AirCampusR」という遠隔教育システムで、PCだけでなくiPad、iPhone、Androidなどでも受講ができるものです。オンライン上で、教授やファシリテーターも参加しながらさまざまな課題について議論し、知恵を共有しつつ創造的な解決策を導いていくことができます。三つ目は実績・ノウハウです。文部科学省から認可された大学・大学院の経営も行っており、学士や修士(MBA)の資格も取得できます。法人企業への導入実績は約1000社、受講人数はのべ約4万7000人。MBA取得者は約1200名を数え、国内最大規模のオンラインビジネススクールと言えます。

企業の研修ご担当者様からは、日々、さまざまな人材育成の課題をうかがっています。たとえば、「日々新しい課題にチャレンジしなくてはならない環境において、従来機能していたOJTがほとんど機能しなくなった」ということ。業務知識や基本コミュニケーション能力までは日々のOJTでなんとか教育できますが、交渉力、チームリーダーシップ、論理思考、戦略立案能力、グローバルリーダーシップなど、今まさに多くのビジネスパーソンに求められているこれらビジネススキルについては、意図的に研修を実施していく必要性を多くの人事の方が感じておられます。

「グローバル人材の育成」も多くの企業が抱える悩みです。国内の生産部門一筋だった方がいきなり現地の経営を任されることも珍しくなくなってきています。経営には、R&D、調達、生産、物流、販売等、ビジネスシステム全体に対する知見や勘所、判断力を持ち合わせていることが求められますが、生産部門のみでキャリアを創ってこられた方にこれらの知識・スキルを求めるのは現実的ではありません。こうした異動の前に、やはり研修トレーニングが必要です。しかし、現状すぐに現地に行かなければならず、多くの企業では十分な赴任前教育などできていない状況ではないかと思います。そこで、現地に行ってからも学習できるオンライン学習の期待が高まっているわけです。

山口裕二氏 講演photo 実務的な課題としては、受講生の「スケジュール調整に苦労する」という悩みもよくお聞きします。特に役職が上位者になればなるほど、スケジュール調整に苦労します。業務多忙の中、全国から社員を集めて研修をすることは、今後さらに厳しくなってくると思われます。

以上のようなビジネス環境の変化から、集合研修に頼った人材育成はもはや限界と言わざるを得ません。まさに今、人材育成はイノベーション、変革が求められる時代に入ったのではないでしょうか。企業から効果の高い「オンライン学習を組み込めないか」というご相談をいただく機会が本当に増えてきました。オンライン学習を活用し、物理的制約を超えて学びあい、集合研修以上の期待・効果を持った事例も豊富にあります。企業研修のやり方そのものを変革していくことが、今後企業の競争力を左右する重要な要素になってくると私たちは考えます。

オンライン学習による事例紹介

〈事例1〉「多忙な管理職を鍛える」 

化学メーカーのクラレ様で4年ほど続いている研修の事例です。繊維メーカーから化学メーカーへの事業構造の変化、急速なグローバル化の進展、若手社員の特徴の変化などから、部長職が適切な組織人材マネジメントを行う重要性がさらに高まってきたという課題をいただきました。「勤務地が東京以外の方が多く、集まることは現実的でない。職場で継続的に研修できないか」とのご要望もありました。

山口裕二氏 講演資料研修概要としては、初回は新任の部長を集めて、人事の第一人者である高橋俊介氏によるオリエンテーションを兼ねた集合研修。動機付け、チームビルディング等を半日行ったほか、オンライン学習のガイダンスも組み合わせてスタートしました。その後3ヵ月間、オンライン上で高橋俊介氏の映像講義「マネジャーのための組織人材マネジメント論」各1時間全6回シリーズを視聴していただき、毎週出される課題に対して議論を重ねていきます。内省と対話を繰り返しながら、最終的には研修の学びと今後の部長職としてのアクションプランを、社長・役員にプレゼンテーションします。

iPad、Androidなどの端末も利用できるため、受講生の多くは通勤時間をうまく活用して電車で講義を見たり、議論したりしています。ファシリテーターだけでなく、他の受講生からも様々な視点での問いかけがなされ、議論・対話はどんどん深まりをみせていきます。このように、「他人からフィードバックを受け、気付きを得て、よりよい行動を習慣化させる」といった学びは、短期間の集合研修のみでは得がたいと思います。気付き・内省・習慣化のサイクルが、思考特性や行動の変容へとつながる学習効果の高い研修を実現しています。

〈事例2〉「経営視点で『考える力』を身につける」

経営人材を育てる代表的な事例は、大前研一によるBBT大学大学院のクラスです。MBA教育は過去の企業ケースを題材としたケースメソッドから学びを得ていくスタイルですが、BBTでは実在する現在進行形の企業ケースを題材にした「リアル・タイム・オンライン・ケーススタディ(RTOCS)」を実施しています。

たとえば「もしも私が「ドイツのRIMOWAの経営陣」だったら、爆発的に売れているスーツケースの売り方に関してどのような変更を加えるか?」というお題が出され、1週間単位でこれに取り組む。これを2年間続け、自身が経営者の視座に立って戦略を考え抜くための思考を強化します。

このような手法を企業研修にも取り入れる事例が非常に増えてきており、研修を通じて、徐々に自分で答えを創れるようになっていく様子を目の当たりにします。正解のない経営の世界において経営者候補・リーダーを対象にした仮説思考・戦略思考を鍛える研修として、最も効果的な学習方法であると我々は考えています。

〈事例3〉「論理思考を鍛える」

この冬、オンライン学習と通学学習を組み合わせた新しい講座、「ロジカルシンキング 超入門トレーニング」を立ち上げました。論理思考の研修は多くの会社で取り入れられていますし、参考にできるビジネス書も何十冊も出ています。しかし、受講者や人事担当者からは「分かった気はするが、実際どのぐらいできるのか不安」「1日研修した時はできたつもりになったが、業務に活かせていない」といった話をお聞きします。ビジネス書で知識が理解できても、「分かる」と「できる」は違います。また、1日や2日の研修では、思考の習慣づけも難しいものです。

そこで開発したのが、3ヵ月で「論理的に物事を考えること」が体系的に学べるプログラムです。月1回の通学(スクーリング)とオンライン学習を組み合わせた形式で、1~2日に詰め込むのではなく、毎日少しずつ考える習慣をつけていくことで論理的な思考を定着させることができます。

〈事例4〉「学習する組織・風土を醸成する」

これは日本ユニシス様の事例です。SIから提案型ビジネスへ転換するため、「社員一人ひとりが待ちの姿勢でなく、自ら情報を求め、主体的にどんどん学べるような仕組みをつくりたい」という相談をいただきました。そこで、“ITの最新動向”といったビジネスに直結する映像や、他社や海外の事例、最新のビジネストレンドなど、参考になるさまざまな映像を毎月20タイトルほど選んで全社員に配信しています。

また、集合研修と組み合わせたハイブリット型教育も加速させています。「映像を見てください」と呼びかけるだけでなく、「この研修が終った後は、この映像を見て感想を送ってください」と連動させた形での学習を進めています。「通勤電車を書斎に」というキャッチコピーを掲げ、スマートフォンを使って移動時間や隙間時間を有効に活用するような学習スタイルも奨励しながら取り組んでいただいています。

日本はオンライン学習の後進国

山口裕二氏 講演photo最後に、社会人学習の現状と今後のオンライン学習のあり方についてお話します。OECDの2007年の調査によると、社会に出てからあらためて大学に通う人の割合は、日本では1.8%しかありません。しかし、首位のアイスランドは37.3%もあり、米国で23.5%、国際平均では21.3%もあります。「勉強は大学まで」という現状は、今の日本の大学の教育内容・水準を考えると、国際競争激しいビジネス世界にあってかなり危機的な状況だと考えています。

一方で時間的、物理的制約を超えるオンライン大学は、アメリカでは20校以上、韓国も17校以上が認可されています。ところが日本では現在、サイバー大学とBBTだけ。日本はITインフラがこれだけ整っていながら、オンライン学習の分野でいまだ後進国のままといえます。

今後は、人材育成の分野では「正解がある知識」を学ぶ教育から「正解がないこと」に対して考えていく力、クリエイティブな思考力、構想力が重要になってくるはずです。しかし、短期間の集合研修だけではとてもこうした力を身につけることは困難です。私たちはこういった観点からも、長期間実施可能なオンライン学習を企業研修にもっと普及していくべき、と考えています。本日は、ありがとうございました。

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