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特別講演[D-2]

優秀な新卒学生を採用し続けられる人事担当者が
いつも考えているたった一つの事

清水達也氏
株式会社DEiBA Company 代表取締役
ビジネス・ブレークスルー大学講師
清水 達也氏(しみず・たつや)
プロフィール:リクルートにて人材系事業 の総責任者・取締役常務執行役員、リクルートエージェント・リクルートキャリアコンサルティングでは代表取締役を歴任するなど、長年日本の人材業界を牽 引。同社退社後はカプコンUSA,INC.取締役、ベネッセホールディングス顧問・経営企画部長などを経て、現在はDEiBA Company代表取締役。

成長企業は現在の母集団よりも上を狙うべき

1996年にリクナビという新卒採用向けの就職情報サイトが誕生し、WEBでのエントリー応募が定着した今、企業は面接をする学生の母集団形成に困ることは少なくなりました。学生が一人もエントリーしないケースは、まずありません。そこで、多くの企業は、エントリーしてくれた学生の母集団から絞り込んでいく、スクリーニング型採用に切り変えています。そんな中「本当に採用したい人材が採れているか」という課題が生じてきました。昔に比べて優秀でガッツがある学生は減り、優秀な人材の採用は厳しくなっています。

母集団形成には、企業力やイメージが反映されます。そのため、例えば会社が急成長している場合、現在と5年後の母集団を比べると、5年後は現在より優秀な学生が集まっていることになります。従って、企業が成長している時、現在の母集団だけで採用を行うと、数年後には社歴の長さとレベルの高さが比例せず、上司の方のレベルが低いという現象が起きる可能性もあります。成長を目指すなら、今の母集団より高いレベルの学生を狙うべきです。

また、インターネットによる採用システムではエントリー数が多いため、企業側では、WEBテストやエントリーシートの段階で、足切りラインを設定し、面接に進む前に人数を絞り込むケースが多々あります。しかし、それにより、採用したい優秀な人材に出会えないこともあるのです。

「学園祭実行委員長」「サークル立ち上げ」をどう評価するか

では、優秀な人材とはどのような人なのでしょうか。多くの企業が「コミュニケーション能力の高い人」と答えます。コミュニケーション能力とは総合的なものですが、採用においては、その中の「伝える力」だけが過大評価される傾向がみられます。これが入社後のミスマッチを生んでいる要因です。 企業が採用したい優秀な人材とは、主体的で行動力があってエネルギーがある。そして基礎能力、コミュニケーション能力をある程度以上備えている人のようですが、はたして今行われている面接の中で、そこを見抜くことはできているでしょうか。

「大学時代に最も力を入れたことは何ですか?」
多くの企業がこの質問をしますよね。そもそも、なぜこの質問をするのでしょうか。そして、なぜ「大学時代」なのでしょうか。人間の基本的な性格形成や人格形成には親の影響が大きく、幼少時代に強制的に続けさせられていた行動が元となります。その後、高校や大学に進むと、ようやく自発的に行動できる機会が増えていきます。この期間に自ら取り組んだ「自発的行動」について確認したいという目的が先ほどの質問の背景には本来あるのではないでしょうか。ところが「大学時代」という言葉が一人歩きをし、学生の多くはファストフード店や居酒屋でのアルバイト経験について話します。そこで何をやったかと質問されれば、「店の売上げアップに貢献しました」「右利きの人のためにジョッキを右向きに置きました」などと答えるのです。初めて聞けば「オリジナリティーがある」と思うかもしれませんが、就活本などに自己PR事例として載っている回答にすぎません。それにもかかわらず、毎年多くの面接官は就活生の事前準備した回答を見抜くことができず、だまされてしまいます。

清水達也氏/講演 photoこの場合、面接で見極めるポイントは、「持続性」と「経験の深さ」です。面接を行うと、学園祭実行委員長やサークル立ち上げ、アルバイトリーダーなどの話をする学生が多く出ますよね。ビジネスマンとして、会社が必要とする人材は、継続性を備えているはずです。一瞬の力でビジネスはできませんからね。継続的に努力し続けることこそ重要ですから、面接ではそこに着目すべきだと言えます。

それから、価値観と柔軟性も重要です。兄弟姉妹のいる場合、一般的に思春期が早くなります。とはいえ、思春期が遅く来た子もその後追いつきます。これと同じで、他の人よりも少し思想的に進んでいる学生の場合、例えば「サークル立ち上げ」など、後天的に作られた表層的価値観に引っ張られる傾向があります。面接時に自信たっぷりに話していても、ビジネスの世界に入れば、過信による自信はすぐ壊れます。経験していないことが多発しますので、柔軟性が低い人は入社後にとても苦労します。

このように、面接では表層的な面に目を奪われてしまい、相手の根底に到達できていない点が問題です。面接官には、学生の継続性や柔軟性、根幹の価値観を見極める力が求められます。

「自分史を元に行う面接」の勧め

面接官が学生の本質を見極めるには、「質問力」「フレームワーク力」が欠かせません。一番シンプルなフレームは5W1Hですが、さらに「相手の何を理解しようとしているのか」という視点を持って臨むべきです。「その話、すごいね」で終わらせずに「すごい話をどう評価するのか」と質問を続けなければ、インパクトを受けるだけで意外に深く話は引き出せないですよね。ところが、個人での質問力とフレームワーク力の向上は難しいものです。

そこで私は、まず「どんな子だったのか」を知る視点で質問をすればいい、と人事の方にお伝えしています。また、予想される質問を避けることもポイントです。学生に質問の意図を理解された状態で答えを作られてしまっては、その真偽を見破ることは難しくなります。

では、具体的にどうすればいいのでしょうか。私がお勧めしているのは、「自分史を元に行う面接」です。まず高校まで何をやってきたのかを面接の前に書かせるのです。家庭・学校での役割(クラス委員長、生徒会長の経験など)、周囲との関係、習い事、クラブ、サークル、受験などイベントや習慣についてです。それらについて尋ねるだけで、面接官の質問力を高めることができます。

清水達也氏/講演 photoそして、どこから自発的な行動に切り替えるタイミングがあったのかをチェックすることが重要です。なぜなら、親への反発的エネルギーが、「悔しい」「何かが違う」「親の言う事を聞かないぞ」と自発的なものに切り替わった瞬間、その人の個性が出てくるからです。このような点を知っておけば、学生の根底に到達しやすくなります。

例を挙げましょう。ある学生は小学校でピアノとお茶を週1回習い、中学受験を途中で辞め、高校受験は第一志望不合格。そして大学入学後、急にいろんなことを始めました。ベンチャー企業のインターン、高校進学指導のアルバイト(3年間継続)、フルマラソン完走。すごいと思いますよね。でも、聞いてみると、ピアノもお茶も人に言われたから習った。中学受験を辞めたのはそこまでやらなくていいと思ったから。第一志望の高校に落ちたけど第二志望でも別によかった、と言います。全般的に反発的エネルギーを持って突破しようとした経験がない点が気になります。ここを理解した上で、大学での活動内容に賭けてみようと採用を決めるのであればいいのです。

ルーチン化による考察力低下の危険

質問する際には、判断軸を持っておくことが大切です。例えば、クラブ活動、サークル、習い事は、長く続くほどいいわけではありません。どのぐらい真剣に取り組んでいたかが重要です。真面目に試行錯誤しながら取り組んだのと、不真面目にただ続けたのとでは、全く意味が違うのです。

運動部出身者を好む企業が多いようですが、運動部員は確かに毎日厳しい練習をしますから、根性があるとは言えるでしょう。ただ、忘れてならないのは、練習はルーチンであるという側面です。ルーチン化は考える力を失わせる危険をはらんでいます。言われた事ができる点ではいいとしても、その次の行動を求めるのであれはルーチン部分だけではダメだという判断が必要です。変化や工夫を求める気持ちの有無をチェックしなければなりません。

人間関係では、周囲との関係、学校での役割などから関係構築力と環境順応力を判断軸として参考にするといいかと思います。たとえば自分たちの組織に合うか合わないかは、子どもの時からの環境順応力をみればいいのです。

それから、挫折という経験は極めて重要です。挫折してどのように対応したのか、それが何に活かされたのかを質問すべきです。逆に、成功体験も重要。これは良い習慣に結びつきやすいと言われますから、成功体験から何を学び、何が変わったのかを尋ねるのです。

偶然の出会いから始まる、説得型採用の推進

今の採用活動で、優秀な人材を採用するためには説得をすることが大変重要です。私たちの会社では、企業と学生が偶然出会うきっかけ(出会いの場)を提供しています。学生たちが業界研究を行う以前から、就職意識の高い学生と優秀な人材を採用したい企業にお集まりいただき、イベント形式で出会いの場を実施しています。

実際のイベントでは、2日間で200人以上の学生が参加します。1日約6時間のプログラムを組み、グループディスカッションを11回も行います。その様子を企業の方々に見ていただきます。会場内では、企業と学生がiPadを使って、「一度会ってみたい」「この学生が気になる」などの評価結果を、クローズドサイト上でお互いに送信し、伝える事ができます。このように、「直接企業の話を聞いてみよう」と学生の気持ちを動かす仕掛けを多く取り入れています。昨年1年間で、約2500人の学生と、約140社の企業にご参加いただきました。

優秀な人材を採用するためには、今後はスクリーニング型採用だけでは難しくなりますので、当社では説得型採用に切り替えることを推進しています。企業人事側が長年WEBエントリー型の採用活動に慣れたことにより、学生を説得する力、見極める力が低下してしまった事は否めません。そこをもう一度見直していくべきだと私たちは考えています。

株式会社DEiBA Company ロゴ

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