社会起業家を招き、毎週話を聞くFM横浜の番組でDJも担当する野口氏。20年にわたり実践的プログラムに基づいた経営人財・リーダー人材の育成に取り組んでいる。今回は、数多くの事例も交えながらの講演となった。最初に、昨今のグローバル化の流れのなか、イノベーションの必然性が増していることを指摘。「巨大マーケットとなるマステージ(中間層)をどうやって攻略するかという大きな意識転換が今、求められています。リバースイノベーション、すなわち新興国で商品を開発して作り、横展開していく必要があります」。イノベーションの成功事例として資生堂、日産、ワコールなどの現地戦略が紹介された。
次に「技術に勝ち世界標準化を試みたものの事業に負けた」という日本企業の実例に言及。「イノベーションはスペックアップだけではダメ。また、現地で何が求められているかのニーズだけでもダメです。ニーズを超えたウォンツを創り出すという『顧客価値の創造』が大切。何のためにグローバル展開、企業活動をしているのか。原点はどこにあるのかを考えるべきです」と敗因を分析する。IBMのCEOであるサミュエル・パルミサーノ氏の「勝者は嵐を生き延びた者ではなく、ゲームのルールを変えた者だ」という言葉を挙げ、野口氏は道を示す。「ゲームを変えるには、つまり、イノベーションを起こすには、現地のウォンツを創出できる組織、人を育成すべきです。そしてそのためには、今回のテーマである『ウェイ』が必要になります」
『ウェイ』とは、その企業らしい人や組織の動き方、動かし方のことを指す。強い組織の基盤になるミッション・ビジョンなどを共通の価値観として企業の中で明確化。それによりトップと現場を緊密に結びつける。また、『ウェイ』は方向性だけでなく現場の状況を判断する評価軸にもなるという。「理念を文章として整理したものだけでは不十分です。現場が理念に基づいた行動をすることが大事。そういう動きができるような、再現性ある仕組みができて初めて『ウェイ』と言えます」。この仕組みを持つ企業としてセブンアンドアイ、小林製薬、サムソンなどの実例が取り上げられた。
『ウェイ』のある組織づくり、人材作りは、イノベーションを恒常的に生み出す土壌や文化の醸成につながる。実践していくことで、企業は、グローバル化の中でも存在意義を強く発揮し続けることができるのだ。