日本の生産年齢人口は、約50年後に現在の45.9%まで減少するという予測がある。10年ごとに10%ずつ減ると言われるが、これは何を意味するのか。「企業の生産性もそれだけ減少すると考えられます。対策としては65歳以上のシニア、女性、外国人の労働力の活用が挙げられますが、それだけでは不十分。ホワイトカラー層の生産性向上にも取り組むべきです」と若林氏は語る。生産性向上は、収益性向上にも繋がるからだ。
「生産性向上のための目的・目標設定は、全員に分かりやすくするべきです。たとえば、残業時間の削減を掲げる際は、労働時間の定義も明確にしなければなりません。部署ごとに曖昧な点もあるはず、全社で話し合い、はっきりと線引きしないと徹底できません。その上で“残業削減と売り上げアップ”の板挟みをどう解消するか、メンバーをどう意識付けるかといった事前の議論や、開始後のPDCAサイクル、そして目標に対する責任の在処も明確にして進めるべきです」。1日一人30分残業を削減するだけで、50人企業では1180万円が削減できるという。営業利益に換算したときのインパクトは大きい。
全社的な取り組みだけでなく、個人の生産性向上への取り組みも欠かせない。「より短時間で同じアウトプットを出せる能力開発が重要です。そのためには、1日の労働時間を、稼働・準稼働・非稼働に分けるメソッドが効果的だと考えます。それぞれを、密度を高める仕事、捨てたり短縮化したりする仕事、なくす仕事と捉えて中身を見直すのです」。若林氏は実際に使用している生産性チェックリストを示しながら、メール処理時間や探し物をしている時間が意外に長いと実情を指摘する。1日8時間労働とすると、2時間15分はメール処理、1時間は探し物をしていたという調査も紹介された。
このような時間の使い方は周囲には分かりにくく可視化が難しいため、改善しにくい。研修などで学ぶべきという認識も低く、手付かずにされてきたが、生産性向上を考えれば決して見逃せない。「メール処理や探し物に問題意識を感じている方は少ないので、従来のやり方を改善するにはパワーが必要です。習慣を変えるには21日から30日かかりますから、意識して継続しなければなりません。しかし、全社的な施策と個人の能力開発を両輪で回していけば、必ず生産性は向上します」。そして、収益性向上にも確実に反映されるのである。