「私どもは『仕事が面白い』『職場が楽しい』と、子どもたちの前で堂々と語れる大人を増やすべく、組織変革や人材育成のお手伝いをしています」と語る高橋氏。組織には「イキイキ」「あたたか」「ギスギス」「冷え冷え」などの感情があると言う。今、増えているのは、活力を失った「不機嫌な」職場。「その一番の原因は仕事の仕方にあります。役割、業務範囲がどんどん細分化され、一人で仕事を抱え込む人が増えた。自分のことだけで精一杯、お互いの状況も気づけず、助け合うこともできない。さらに、雇用や勤務形態などの多様化によって理解不足や行き違いも起こりやすい。こんな職場が元気な人の活力まで奪ってしまっています」
高橋氏は、組織の感情を「快・不快」「活性・沈静」という2軸で分けた図で解説する。「例えば『イキイキ感情』では[仕事が面白い][職場が楽しい][将来への期待]という高揚感が共有されると、今度は[自分からやってみよう][周りをリードしよう][チャレンジしよう]という主体性が生まれます。さらにみんなが同じ目標に向かい、一緒に困難を乗り越えていく連帯感も広まっていく。逆に『冷え冷え感情』では不安感が広がり、前向きになれずに落ち込んでいく人が出てくる。やがて自分を卑下してあきらめ、[どうせ何をやっても変わらない][我慢しよう]という感情から、周りと関わりたくなくなる人も増えていきます。すると互いの関係が希薄な職場になってしまいます」
「ご機嫌な職場」では他者と自己への意識が高まるという好循環が続き、「不機嫌な職場」では人を萎縮させ、被害者意識を増殖させる悪循環ができてしまう。従って、人材育成の際に職場感情は無視できない。「いい人を作りたかったら、いい職場を作ることです。そのためには、個々が成果を出すために互いが支援・連動し合うリレーションシップを作り出すことが必要。このいい例が、オリンピックの競泳やなでしこジャパンに見られたチームワークです。個人が成果を出せるためにお互いが支え合い、連動し合う関係作りです」。このマネジメントに有効な四つのステップは(1)関係の土台を作り、(2)お互いの良さと連動の仕方を共有し、(3)互いに気付き合い感心を持ち合う習慣を作り、(4)成果や結果をフィードバックし認め合う。互いが周囲から頼られる存在になろうという意識の連鎖を起こしていくことが、個も組織も強くしていくのだ。