単一の価値観、大量生産大量消費、標準化、モノの豊富さ・便利さといったキーワードに代表される成長社会から、今は多様な価値観、多品種少量生産、個別化、心の豊かさや個々の幸せが求められている社会へと変わりつつある。「世の中は変わりましたが、成長社会の中で心の原動力となっていた『モチベーション2.0』がいまだに残っています。ですから年々、企業の現場では士気が下がり、社会不安の中、未来に希望を見出せず萎縮しているように感じます。今必要なのは、モチベーション2.0すなわちアメとムチによる外発的動機付けではなく、『モチベーション3.0』なのです」と職場の風土づくりや活性化に長年携わってきた泉氏は語る。
今、求められるモチベーション3.0とは、個々が自己の中に内発的動機付けを見つけ、行動していくことを指す。「内発的動機付けのメカニズムは未知なる領域です。科学ではまだまだ解明できていません。ただ一人ひとりの心の奥に“感じる”ことができるのは確かです。内発手動機づけは、理屈でわかるのではなく、感覚を通して“気付く”しかないのです。ここで参考になるのが、陰を大事に感じていれば陽が生まれるという、陰陽の感じ方です。陰から陽へというドラマの中で体感ができ、成功循環も動き出します」。その自発的行動から生み出された結果は、場を活性化し、喜び合える風土を職場に息づかせる。
成功循環の中においては、関係性を深めることがもっとも重要だ。「属性や個性を知り合い、悩みを分かち合い、目的を共有し、そして同志となって人生の意味を観じる。そのようにレベルを深めていくのです。ここで高められるのは、関係性の質だけではありません。同時に自分の内なる会話、内なるコミュニケーションも始まるのです。これは新たな気づきを与え、自分の中にある無意識の領域にもアクセスしやすくしてくれます」
人間の思考の90%は無意識の中にあり、ここに多くのエネルギーが内包されていると泉氏は語る。「無意識の思考の世界にアプローチすることができれば、行動が変わり、成果もさらに変わってきます。コーチングや心理学では潜在意識と表現している、非常に繊細な部分です。ピュアで傷つきやすく、フタをして閉じ込めてしまいがちなものです」。ここが開放されやすいような場づくりを心がけていけば、個人も企業も自発的、内発的に活性化し、より成長していけるというわけである。