社員の誰がどこにいるのか、誰が何をできるのかといった「カオ」が見えない状態は、成長企業が抱える大きな課題だ。それを解決したかったと「カオナビ」を開発した柳橋氏は語る。「人事システム『カオナビ』の特徴は三つあります。一つ目は、配置、抜擢、評価、育成といった人材開発領域に特化していること。二つ目は、クラウドサービスであること。そして、三つ目は、ネーミングが示す通り、社員の顔写真にこだわった作りとなっていることです」
なぜ顔写真なのか。柳橋氏は「従業員数が急増するIT企業や、合併などにより組織環境が変化した企業の声がヒントになった」と言う。「評価や研修制度、採用手法はさることながら、それ以前に顔と名前が一致しない社員が増え、収拾がつかない状況になっていました。すると『新しい事業や部門を作りたいが、誰が適任なのか』『イキのいい若手はいるが、いったい何に強いのか』ということがすぐ分からない。そこで、まずは顔と名前の一致をコンセプトにしたのです。顔写真からワンクリックで人材情報にたどり着ける操作性、閲覧性にもこだわりました」
例えば評価業務では、紙やエクセルシートを使う企業が依然として多い。「取りまとめ作業自体が煩雑で、評価情報を配置・抜擢・育成に活用するという視点にたどりついていない場合が多い。カオナビを活用すれば、ウェブ上で評価を簡単に実施し、過去の評価をワンクリックで時系列に見ることもでき、個人の成長度や課題なども多面的に捉える事ができます」
同じく自己申告制度と呼ばれる異動希望や新規事業提案などの社員発信の情報も簡単に入力でき、蓄積されるので、社員の生の声をマネジメントに活かすことも可能だ。経営陣がダイレクトに社員の声を共有できる。人材情報を経営がオープンに活用できる状態を作ることが大事だ。
また、顔写真付の組織図機能は、人材配置のバランスも俯瞰して一目で分かる。縦軸、横軸にそれぞれ、役職、性別、スキル、雇用形態などを設定すれば、メンバーの顔写真が画面上に並び、直感的に組織構成を把握できる。配置・抜擢・表彰といった二律背反を包含する組織戦略を「あの彼とこの彼女」「この上司の部下の彼」というように具体的にイメージしながら、遂行することができる。
文字通り、「人材の可視化・見える化」に対し、顔写真を活用しながら、効率的かつスピーディーな人材マネジメントに貢献するツールと言えるだろう。