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特別セミナー[B]

企業を変革するリーダーシップとは
~変化に対応する組織だけが生き残る~
(協賛:株式会社レアリゼ)

【パネリスト】
野田 稔氏
明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科 教授、
株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 特任研究顧問
野田 稔氏(のだ・みのる)
プロフィール:野村総合研究所、リクルートフェロー、多摩大学教授を経て現職に至る。株式会社アミューズに所属し、テレビ・ラジオでも活躍中。2011 年5月よりNHK Eテレ『仕事学のすすめ』トランスレーターとして、また2012年4月よりBSジャパン『7PM』月曜・水曜のメインキャスターとして出演。専門は組織 論、経営戦略論、ミーティングマネジメント。著書に『組織論再入門』、『中堅崩壊』(ともにダイヤモンド社)など。

真田 茂人氏
株式会社レアリゼ 代表取締役社長
NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会 理事長
真田 茂人氏(さなだ・しげと)
プロフィール:株式会社リクルート、外資系金融会社、人材サービス会社設立を経て、株式会社レアリゼ設立。個人の意識変革を起点とした組織開発を強みとし、日本を代表する企業、行政法人、官公庁など幅広い分野において多数の研修導入、講演実績がある。また、サーバントリーダーシップの普及を通じ、グローバルに通用するリーダーの育成に力を入れ、日本再生に取り組んでいる。

“現場のリーダー”がパラダイムを生み出す

野田:本日は、本当の意味で組織を変えていく、もっと言えば社会を変えていくリーダーとはどんな人で、どんな行動をすべきかについてお話していきます。まずは、それぞれが短いプレゼンテーションを行いたいと思います。

日本と世界は今、大きな変化に直面しています。短期的に言うなら、震災や欧州危機、日韓日中問題に代表される問題は終息していません。世界的に大きな構造転換期を迎えています。G7はいつの間にかG20になり、日本のGDPは中国に追い抜かれました。10年前には考えられなかったことですね。

穏やかな、しかし極めて大きな中長期的変化もあります。中でも大きいのは、日本の人口問題です。今から100年後には、5000万人を切ると言われています。これから市場がどんどん小さくなっていくということです。そのため、これからの日本は、産業構造改革に繋がる連続的イノベーションを起こしていかなければなりません。

一言でいえばディ・マチュアを連続的に行わないといけない。ディ・マチュアとは脱・成熟の意味で、全ての産業、全ての企業は時代の変遷とともにその姿を変えることを迫られるということです。

たとえば、米国の自動車産業は右肩上がりで成長していったように思われますが、実はその時々で自動車という商品の概念を変容させています。馬車代わりとしてお金持ちの商品だったものを、庶民に広めたのがT型フォードです。ここで大きなパラダイムチェンジが起こります。次はGMが仕掛けました。クルマとは単なる必需品ではない、TPOで乗り換える、いわばファッションだと。その次は日本の自動車メーカーが仕掛けます。いわゆるコンパクトカーという新たな概念です。これは環境志向、省エネ志向にマッチしました。

このように、国も企業もドミナントデザイン(標準化デザイン)の創造的破壊を行い、そこからパラダイムチェンジを行わなければ、未来永劫、発展することは不可能です。

野田稔氏 講演photo では、このようなパラダイムはどこから生まれてくるのでしょうか。それは現場です。現場のリーダーたちが萌芽を見つけます。現場発のイノベーションをきちんとモノにしていく組織運営をしないといけません。企業変革を主導するのはそのようなミドルマネジャーです。私は主導するミドルは一人ではないと考えています。複数のリーダーによるチームが効果的です。

このような状況では、サーバント(奉仕型)リーダーシップが必要とされるのではないでしょうか。やるべきことが共有されていて、部下にこれを行う能力もやる気もあるのなら、リーダーがなすべきことは、それを邪魔せず、最大限手助けすることです。変革を主導する現場リーダーを輩出するには、自律的に学びあう組織風土の形成が必要です。この中で「コンセプトを出すリーダー」と「それを支えるリーダー」の両方を育成していかなくてはいけないと考えています。

君臨型リーダーでは“受身組織”になる

真田:続いて、私の考えを述べたいと思います。先日、世界30ヵ国以上に事業を展開する企業の人事の方と話をしました。今の一番の悩みは何かと聞くと「うちの日本人の役員にはリーダーシップがない」とおっしゃるのです。「自分の意見を言わない。どうも意見がないようだ。あったとしてもリスクを避けるためか、話さない」と。

私が普段接する企業でも、リーダーシップが足りないように思います。すべての問題を解決してくれるカリスマを待っているようで、依存心がある。それではいけないですね。

変化の激しい世の中では、君臨型のリーダーシップは厳しくなります。指示を待つ体質ができ、自ら行動できない受身の組織を作ってしまうのです。これでは変化に対応できません。だからこそ、メンバーを主役とした組織でのサーバント(奉仕型)リーダーシップが必要なのです。

真田茂人氏 講演photo外部環境の変化が激しくなると、会社のミッションやカルチャーといった深いレベルからの根本的な変革が求められます。社員の意識に上っていない、そして変えることが困難な深く根付いた前提や価値観や信念といった、組織の文化を変えていかなければなりません。そのためには、会社の根っこの部分までさかのぼらないといけない。そもそも私たちは何を目的に集まったのか、自分たちのコアバリューは何かといった前提から話す必要がある。ここまで行えるかどうかが、差を生みます。

ここで求められるのは、視野を広げた取り組みができ、組織を次の段階へと導けるリーダーです。変革型リーダーシップでは、利己を超え、組織にとってどうなのかを考える必要があります。ここでフォロワーを鼓舞できれば、驚異的な成果を生むこともできます。パラダイムが固定化されたリーダーは生きていけない。これからは、柔軟な行動ができるサーバント(奉仕型)リーダーが求められます。

会話の価値を高める「ぐるぐるコミュニケーション」

野田:では、ここからは真田さんに質問する形で進めていきます。企業の深いところから見直さなければ、新しい時代についていけないという話がありました。だからこそ、誰もが新たな視点をもったカリスマリーダーに登場してほしいと思うのではないかと感じますが、いかがでしょうか。

真田:新しい時代を一人で切り拓けるだけのカリスマリーダーは、世の中に多くはいないでしょう。スティーブ・ジョブズも、世の中に一人しかいませんから。

野田:それでは、カリスマではない普通の人が自分の視野を柔軟に変えるためには、どのようにコミュニケーションを磨くべきなのでしょうか。

真田:コミュニケーションには三つのステップがあると考えます。一つは上司から部下への一方的な指示・命令を行う「一方通行コミュニケーション」です。しかし、これではいけないと考え、一般的には「双方向コミュニケーション」を図ろうとしますね。私は、これでもダメだと思うのです。

以前、私には一方的に話す上司がいました。この方と10年ぶりにお会いしたのですが、話の途中で「それで真田君はどうなの」と聞いてくれたのです。この人も変わったなと思って話し出すと、私が話す間は目が死んでいるんですね。自分が次に話すことを一所懸命考えている。私が話し終わると自分のことを話し出すわけです。つまり、話のやり取りになっていないんですね。

聞いているふりをしているだけでは、意味がありません。変化の少ない時代ならまだいいのですが、激動の時代にはいろいろな人の話を聞く必要がある。コミュニケーションを取ることで考えが変化することに価値があります。そのことを私は「ぐるぐるコミュニケーション」と名付けました。相手の話を聞いて、自分の考えを更新して、また相手に渡す。輪のようなコミュニケーションですね。このような行動をしないと視野は広がらないと思います。

野田:ぐるぐるコミュニケーションをしながらも、「部下を主役にしてくれる上司」と「自分が主役になる上司」という差が生まれるように思います。この違いは何でしょうか。

真田:何でも自分でやろうとする上司がいれば、その人の限界が組織の限界になるわけですから組織力につながりません。なぜ人を活用しようと思うのかといえば、その人が自分の限界を知っているから、そして謙虚さがあるからではないでしょうか。

大義を持てば、自分にも他人にも強くなれる

野田:サーバントリーダーシップについて、もっと詳しく教えていただけますか。

真田:サーバントリーダーは五つの価値観を持つ人といえます。(1)個人を尊重する、(2)導く、(3)サーブする、(4)人の持てる力を引き出す、(5)個人の成長へとつなげる。

野田稔氏 真田茂人氏 講演photoそしてサーバント・リーダーシップには10の特徴があります。「傾聴」「共感」「癒し」「気づき」「納得」「概念化」「先見力・予見力」「執事役」「人々の成長に関わる」「コミュニティ作り」です。「サーバント(奉仕する)」と聞くと、人を導かないイメージを受けますが、その特徴の中には「概念化」「先見力」といった要素があり、方向性を示す役割も持っています。

野田:大義あるミッションやビジョン、バリューを示す役割も持つのですね。

真田:一つ例をお話します。18年ずっと成長している製薬会社の話です。実はその直前は数年もの停滞期がありました。そこで行われた改革は日常のコミュニケーションです。改革は二つあり、一つは席替え。本社ビルを出て、大きなワンフロアのビルに移りました。そして偉い人は通路沿いに座るようにしたのです。すると、いやでも目が合いますから、上役に会うハードルがぐっと下がる。権威性を排除できたわけです。

もう一つは肩書きで呼ぶのを止め、さん付けで呼ぶようにしたこと。コミュニケーションを取りやすくしたように思いますが、実は逆で「取りにくくした」そうです。どういうことかと言うと、この会社は官僚的文化になっていました。上司が言うことは絶対で、部下は何も考えずに聞くだけ。お互いに楽だったわけです。それを変えたいと考え、お互いが質問し返すという教育を行った。すると、部下も意見を考えるようになります。互いが「本当に何が必要か」「どうしたら成果が上がるか」を考え、議論する風土ができたそうです。

その結果、18年前は年間で新商品が四つだった会社が、いまや年間200個以上も出せるようになった。それに伴って業績も上がった。つまり、ただの双方向のやりとりではなく、互いの話を聞き、高め合うやり取りができる風土を作ることが、大義あるビジョン、バリューを作ることにつながるわけです。

野田:サーバント・リーダーシップとは、その視点に気付けば誰でもが発揮できるものなのでしょうか。

真田:はい、そう思います。ただ、その方向へと自分をコントロールするには、明確な実現したいビジョンや夢を持つことが重要です。

野田:真田さんの話をうかがっていると、社員に大義を持たせることの重要性がよくわかります。そのことで自分に対しても、他人に対しても強くなれる。それがサーバント・リーダーシップなのではないでしょうか。本日はどうもありがとうございました。

【協賛】 株式会社レアリゼ

株式会社レアリゼロゴ

個人の意識変革を起点とした人材開発・組織開発のコンサルティングを展開。組織の経営戦略の方向性を踏まえ、人材育成上の本質的な問題を捉え、最適なプログラムをカスタムメイドにてご提案します。組織の持続的発展のために必要な「意識変革」を確実に実現し、企業の組織風土改革を支援します。


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