「シェアードサービスを導入済みの企業は約80%」という東証一部上場企業を対象とした調査結果がある。このうち85%が人事業務で導入済みという。「シェアードサービスの利用は一部では増えていると言えます。ただ、導入後の評価を見るとコスト削減面における満足度は50%にとどまり、グループ経営基盤強化面においては70%が効果不十分というデータもあります」と湯淺氏は課題を指摘する。
シェアードサービスの大きな課題は三つ。「コスト削減」「セキュリティ強化や内部統制の整備等といった付加価値の創造」「業務のテンプレート化」だ。「業務を標準化させてノウハウを体系化・蓄積し、それを継続させたいという要望が大きい。ただしこれは親会社やグループ会社が、意識改革に積極的に取り組まないと簡単には実現できません。大きなシステムやカスタマイズの展開には相当なコストもかかります。その上いくらクラウドサービスが充実してきたと言っても、オペレーションの必要性は付きまといます」。従って課題克服にはアウトソーシングの上手な活用が不可欠と言う。
例えば給与業務は主に四つに分類される。社員と情報のやりとりをする「回収認定」、質問に答える「社員窓口」、子会社や自治体等とのやり取りをする「外部窓口」、データをコンピュータにインプット・チェックして明細書を作成する「計算業務」だ。「一般的に企業がアウトソーシングしているのは計算業務だけと言えます。ところがコスト換算するとアウトソーシングしても削減効果はわずか5%程度に過ぎない。これは回収認定業務と社員・外部窓口業務が社内に残ってしまうためです。思い切って全てを外注化し、アウトソーサーの持つテンプレートをうまく活用することで、業務の効率化を図るべきです」
さらに介護保険、社会保険制度等の改正により、給与業務だけをとってみても年々複雑化しているのは明らか。「これらを社内で全て把握して処理する時代は終りつつあるのではないでしょうか。業務継続面から見ると、激甚災害等におけるBCPやコンプライアンス、情報セキュリティ強化等も必要ですが、自社単独では整備が難しくコストもかさみます。そう考えると専門のプロを活用する体制をとった方が効率的です」。ベンダーを選ぶ際は、サービスの精度を継続して担保できるような確立された運用体制を持つか否かが一つのポイントになると、湯淺氏はアドバイスを付け加えた。