大企業から中小企業、公的機関まで、多くのコンサルティング実績を誇る、セレクションアンドバリエーション。同社代表取締役の平康氏はまず、日本社会が直面している「高齢化」をテーマに話し始めた。「60歳以上の雇用問題は10年後にはおさまりますが、現在のコア層である35歳から45歳の層がそのままスライドします。つまり、10年後には、多くの企業で45歳以上のシニア層が中核を成すという状況を迎えるのです。当然、全員管理職に引き上げるわけにはいきませんから、管理職でない高齢者をいかに活用するかという大問題に直面することになります」
続いて平康氏は、環境変化にさらされながらも成長を続けているグローバル企業や、大企業病からの脱却を果たした国内大手企業の実例を挙げながら「きちんと将来を予測して、来るべく変化に迅速に対応することが大事」と説く。
そして、講演は核心へ。「管理職でない高齢者」をいかに活用していくのかがテーマだ。まずは米国の機械技師、フレデリック・W・テイラーが20世紀初頭に提唱した科学的管理法を取り上げ、「環境変化に対応するためには、最小単位の組織をつくり、明確なリーダーシップを与えることが基本です」と説明。社員の年齢構成がどうであれ、組織づくりはフラット型ではなく、ラインマネジメントをベースにすべきだと主張した。
しかし、シニア層全員をリーダーに据えるわけにはいかないので、もう一つの対応が必要になる。平康氏は「ランクオーダー(組織階層)とロール(役割)とをハイブリッドするマネジメントが重要」と結論づける。「皆さんは専門職制度を想定すると思いますが、現在の専門職制度は出世争いからこぼれた人たちが対象になっていて、付加価値の源泉になっているとは言えません。そこで私は、意志決定ができて収益を生み出せる『プロフェッショナル』、さまざまな要素を加味して最適のものをつくる調整役である『デザイナー』、事業内での付加価値創出にかかわる『ハイレベルプレーヤー』という三つの役割に振り分けることを提案します。つまり、ラインマネジメントを軸に据えながらも、一部のシニア層にはラインをバックアップする明確な役割を与えるということです」。高齢化への対応という問題には、参加者の皆さんも大変関心が高かったようで、講演終了後、会場内は大きな拍手に包まれた。