「未来を担う次世代リーダーを育成するには、単に教育プログラムを導入したり、研修を実施したりするだけでは万全とは言えません。組織全体でトータルに取り組むことが重要でしょう」。岩﨑氏は講演の冒頭で、こう切り出した。最近の管理職には「判断力に乏しい」「固定的な役割に留まる」「情熱やエネルギーが不足している」といった傾向が見られると言うのだ。「これからのリーダーには自らビジョンを描き、大所高所で考え、周囲の人間を巻き込みながら事を進めるタイプが求められますが、そうしたタイプは少ないのが実情です。これは個人の問題だけでなく、多くの企業が目先の利益にこだわるあまり、現状維持や現状強化型の人財を登用しているという事情もあり、未来志向的で革新的な視野を持ったタイプを登用することが難しくなっているのです」
こうした課題を克服するには、人事制度や評価制度を抜本から見直すことが必要だが、人財育成の観点から見ると、昨今、注目を集めている「タレントマネジメント」の手法を用いることが有効だという。「まずは自社の事業目的や戦略を明確にすることです。そのうえで従業員一人ひとりがもつ潜在能力、パーソナリティーを把握し、それをどう磨いていけば事業目的や戦略を担っていける真のリーダーに育て上げられるかを見極めることです」
それでは、従業員が潜在的に秘めている能力を図るにはどんな手立てがあるのか。ここで岩﨑氏は同社の人材分析ツールである「パーソナル・スキャン」を取り上げる。パーソナル・スキャンとは「気質」「性質」「思考・行動特性(コンピテンシー)」「役割行動」という四つを定量的に診断、判定することで、本人すら気づいていない隠れた能力を把握するもの。「一人ひとりのパーソナリティーをしっかりと認識することにより、個々に合った育成施策を展開することが可能です。計画的かつ効果的なキャリア開発と人財育成、戦略的な人財活用の促進を図ることができます」
最後に岩﨑氏はこうまとめた。「優れた人財を大勢抱えながら、成果を出し切れていない企業が多く見受けられます。一人ひとりの社員がもつ能力が埋もれたままになっていて、これでは宝の持ち腐れです。個々のパーソナリティーを把握することで、それぞれの価値を引き出し、それを効果的に活用していく。そういった人財マネジメントこそが、いま求められていると言えるでしょう」