HRのオピニオンリーダー100人が提言、日本の人事を考える情報誌 「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ)」

「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ)」TOP  >  2018 Vol.6  >  岡田邦夫さんインタビュー
「人事トレンド2018」健康経営

人事もPDCAを回す時代へ
「日本の人事を科学する」データ活用の視点とは

岡田 邦夫さん(特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長)

特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 岡田邦夫さん

近年、従業員の健康増進への取り組みを経営上の「コスト」ではなく「投資」として位置付け、生産性の向上や医療費負担の削減を実現、成長性のある企業として社会的価値の向上を目指す「健康経営」を推進する動きが活発化しています。いま「健康経営」はどのような状況にあり、企業が戦略的に取り組みを進めていくにはどうすればいのでしょうか。同分野に関する第一人者である、岡田邦夫さんにお話をうかがいました。 *「健康経営®」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

Profile

おかだ・くにお/大阪ガス株式会社人事部大阪ガスグループ健康開発センター統括産業医。大阪経済大学人間科学部客員教授、プール学院大学教育学部教授、同健康・スポーツ科学センター長。 大阪市立大学医学部卒業後、大阪ガス産業医、健康開発センター健康管理医長、関西学院大学社会学部非常勤講師、大阪市立大学医学部非常勤講師、同志社大学スポーツ健康科学部嘱託講師、大阪市立医学部臨床教授、日本陸上競技連盟医事委員などを歴任。大阪陸上競技協会理事などの役職を務める。著書に『判例から学ぶ従業員の健康管理と訴訟対策ハンドブック』(法研)『産業医学実践講座』(南江堂)『行動変容を可能とする特定保健指導のすすめ方』(社会保険研究所)『「健康経営」推進ガイドブック』(経団連出版)『これからの人と企業を創る健康経営』(健康経営研究会・共著)ほか多数。

「健康」は「業績」に結びつく 企業に求められる健康経営

企業が「健康経営」に取り組む意義についてお聞かせください。

企業が従業員の健康増進に注力すれば、「業績の向上」につながります。なぜなら、従業員の健康は生産性に直結しているからです。心身に不調を感じていると、仕事に集中することはできません。「労働の質」を高めるにはまず、「健康の質」を高めることが必要なのです。労働の質が高まれば、生み出される「商品・サービスの質」も高まります。「健康の質」「労働の質」「商品・サービスの質」という三つの要素が連鎖し、業績が向上するのです。ですから、経営者がどれだけ「商品・サービスの質」を高めようとしても、そもそも従業員の「健康の質」が低ければ、成果は得られません。

私たち健康経営研究会が、「人の健康が企業のイメージに極めて大きな影響を与える」と考え始めたのは、今から15年ほど前です。かつて資本主義社会では、「従業員の労働力」には対価を支払っても、その「健康」に対価を支払うという考え方がありませんでした。しかし、働く人の健康に関する基盤をきちんと整えておかなければ、企業の骨組みは緩んでいきます。それが、近年多発している「過労死事件」などで明らかとなってきました。

働く人の健康価値を高めるには投資が必要です。経営者は、労働生産性を高めて利益を出すために投資を行いますが、人に対する投資も必要不可欠。そこから、健康経営という考え方が生まれてきたわけです。

15年以上も前に、健康経営に着目された理由についてお聞かせください。

話はもっと以前にさかのぼります。当時、私は医師として病院に勤務していたのですが、健康診断を受けない人がかなり多かった。日本人は、特に体に悪いところがなければ、健康維持に関してあまり関心を持たないのです。

ところが、がん検診未受診者対策で職場の上司が「健康診断を受けるように」と言えば、一気に受診率は上がります。組織の中に確固たるヒエラルキーがあるので、経営者や上司が業務の一環として言葉を発すれば、従業員はそれに従うからです。 このような職場慣行・風土の下、毎年健康診断を受けて、早期発見・早期治療をしていけば、退職後も元気で有意義なセカンドライフを送ることができます。逆に言うと、このような施策を行わなければ、これからの高齢社会で日本経済は破たんしてしまいます。平成7年(1995年)に「高齢社会対策基本法」ができた時、日本社会の急速な高齢化はすでに予測されていました。そこで、従業員の健康を担うという、企業の役割がクローズアップされるようになったのです。

この続きは「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ) Vol.6」でご覧になれます。

詳細を見る