AI時代のマネジメント― コントロールからセンスメーキングへ
中川 功一さん(大阪大学大学院 経済学研究科 准教授)
なかがわ・こういち/経営学者。「アカデミーの力を社会に」を掲げ、学界と実社会の橋渡しをライフワークとする。専門はイノベーション、アントレプレナーシップ、経営戦略。YouTubeチャンネル「中川先生のやさしいビジネス研究」にて、毎週火・金に経営学講義を配信中。著書に『戦略硬直化のスパイラル』(有斐閣)『ど素人でもわかる経営学』(翔泳社)『経営戦略』(中央経済社)がある。
人事の仕事は事業戦略と密接につながっている
これからの時代に求められるマネジメントは、どのようなものになるでしょうか。私はその変化を、「コントロール型」から「センスメーキング型」と表現しています。
従来のマネジメントは、組織を保守・維持することを目的としていました。日本の経営学黎明期を支えた三隅は、組織マネジメントの基本は二つ、組織へのインプットとアウトプットの管理であると説きます(三隅,1978)。すなわち、人材・資金・情報・知識といったインプットを日々管理し、そこから高いアウトプットを産出すべく、そのプロセスを制御:コントロールすることが、マネジャーの役割だと述べたわけです。
しかし、現代ではこの基本の部分が、変わろうとしています。端的に言えば、物質的な組織のインプットとアウトプットの制御をAIが代替することによって、マネジャーの役割は人への心理的働きかけに焦点が置かれるようになるのです。
第四次産業革命といわれる、情報技術による事務労働や知的労働での機械への代替は、すでに起こっています。私たちの仕事を制御する業務は、加速的に機械に委ねられるようになっています(井上,2016)。工場内で機械が人間の仕事を代替したことと、同じことがこれからのホワイトカラー労働で起こっていくのです。
この続きは「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ) Vol.8」でご覧になれます。
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