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「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ)」TOP  >  2016 Vol.4  >  石倉洋子さんインタビュー
「人・組織・経営」研究の第一人者が語る

日本企業の真の「グローバル化」はどうすれば実現できるのか
自前主義を脱し、世界に目を向けて本当に必要な人材を活用する

石倉 洋子さん(一橋大学名誉教授)

一橋大学名誉教授 石倉洋子さん

日本で「グローバル化」の必要性が叫ばれるようになってからかなりの年月が経ちますが、「グローバル企業」としての地位を確立している日本企業は、依然として少ないのが実情です。まして「グローバル人材」となると、さらに厳しい状況にあると言わざるを得ません。なぜ日本企業のグローバル化は、遅れているのでしょうか。また、世界で活躍できるグローバル人材をどのようにして育てていけばいいのでしょうか。企業のグローバル化の現状に詳しい一橋大学名誉教授の石倉洋子先生に、日本企業に向けてアドバイスをいただきました。

Profile

いしくら・ようこ/1949年生まれ。71年上智大学外国語学部英語学科卒業後、フリーの通訳などとして活躍。80年バージニア大学大学院にて経営学修士(MBA)取得、85年ハーバード大学ではハーバード・ビジネス・スクール経営学博士(DBA)を日本人女性で初めて取得する。85年よりマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社で世界の企業戦略等のコンサルティングに従事した後、92年青山学院大学国際政治経済学部教授、2000年一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授、11年慶応義塾大学院メディアデザイン研究科教授を歴任する。専門は経営戦略、競争力、グローバル人材。現在、日清食品ホールディングス株式会社、ライフネット生命保険株式会社、双日株式会社、株式会社資生堂などで社外取締役を務める。世界経済フォーラム(Global Agenda Council Future of Jobs)メンバー。2010年より「石倉洋子のグローバルゼミ」、2013年より「ダボスの経験を東京で」など、世界の課題を英語で議論する「場」の実験を継続して行っている。主な著書に『世界級のキャリアのつくり方』(共著、東洋経済新報社)、『戦略シフト』(東洋経済新報社)、『グローバルキャリア』(東洋経済新報社)、『世界で活躍する人が大切にしている小さな心がけ』(日経BP社)などがある。

「グローバル化」とは、世界を全体・一つのシステムと捉える相互関連性である

石倉先生は、「グローバル化」という言葉をどのように定義されていますか。

グローバル化とは、「世界が舞台」であるということです。現在は、IoTなどを基盤とした「第4次産業革命」の時代に突入したと言われていますが、そのスピード感や及ぼす範囲、システムへの影響は、従来のものと全く違います。また、イランが自由経済圏に入る一方で中国経済が失速するなど、世界を舞台に予想のつかない出来事が頻繁に起きています。現在は、世界のどこかで何かが起きると、即座に世界中へ大きな影響が及んでいきますが、それに対応していくことがグローバル化の本質と言えるでしょう。

グローバル化の背景にはいろいろな要因がありますが、一番大きいのはテクノロジーの発達です。それによって世界中が瞬時につながり、「境界」がなくなりました。企業活動に関することだけではなく、政治・経済・社会など、あらゆる分野でも同じです。全てがインター・コネクト(相互関連)され、国境や人種、性別など、人々を分けるさまざまな境界が意味を失う。まさに世界全体がつながっているということです。

では、日本企業のグローバル化の状況をどのようにご覧になっていますか。

「世界はつながっている」という実感が足りないと思います。依然として、自分が所属している業界のことばかり気にしたり、国外と海外(日本人と外国人)を分けて捉えたりする傾向があります。こういった意識を変えなければ、現在のグローバル化の流れに対応することは難しいでしょう。

少子高齢化が進む今後、日本国内に留まっていても成長は期待できません。しかし、「アジアに進出する」などといった方向性は示していても、具体的な戦略となると、中身が乏しい企業が多いのが実情です。世界全体を見て、研究開発や調達、生産、販売をどこでどのように行うのか、グローバル・サプライチェーンに代表される、一気通貫でつないだ事業戦略を構築できていません。地域を超えたオペレーションが不可欠なのに、それを可能にするグローバル人材の絶対数が足りないからです。

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