講演者インタビュー
女性活躍推進をする上で、
人事が知っておかなくてはならない子育て支援の大改革とは
株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長
小室 淑恵氏
2015年4月、消費税率引き上げによる増収分を活用し、子育て支援の充実を図る「子ども・子育て支援新制度」がスタートします。これにより全国に保育園・こども園・小規模保育など多様な取組が進み、待機児童の解消、働く女性の職場復帰の促進が期待されます。本講演では、制度改革を詳しく解説し、企業内保育所が今後どのように作りやすくなるかという事例も交えながら、こうした情報をいち早く社内に還元し、仕事と子育ての両立問題に直面する社員のモチベーションアップにつなげるヒントをご紹介します。
―― 今回の講演のポイントについて、お聞かせください。
小室:政府の女性活躍支援がますます加速しています。女性の管理職を30%にする、役員に1名以上の女性を登用するといった目標値をかかげて、実行の段階に入る企業も増えてきました。これらを実現しようとする際にまず課題となるのが「女性の子育てと仕事の両立時期をいかに企業としてサポートするか」。どのような支援体制を持っているのか、どんな実例・ロールモデルがいるのかを積極的に発信することで、女子学生に魅力を提示していかなくては優秀な学生を引き付けることはできません。もう「新卒・男子・日本人」だけの採用では必要な人材の数と質をまかなえない、「人材の奪い合い」のフェーズに入っているのです。
一方で社内には介護で時間制約を持つ「男性管理職」が増えており、長時間労働で仕事をこなす人材は今後存在しなくなっていきます。組織として業績をあげていくには、時間に制約のある育児期の女性にも「ほどほどに働いてもらえばいい」ではなく、「短時間でもしっかりと成果を出して意欲的に仕事をしてもらう」ための環境づくりが欠かせません。
こうした中で企業には、独自の制度を整えるだけでなく「国の制度を最大限活用し、上手に両立する」ことを促していくための「タイムリーで正確な情報提供」の役割が求められます。特に来年の4月からの制度変更で待機児童は大きく減少する見込みなので、いち早くその情報を提供し、復帰への前向きな動きを引き出すことは重要です。今回の講演は、内閣府の担当者から直接説明が受けられる貴重な機会です。
―― 子ども・子育て新制度の概要について、お聞かせください。
小室:来年4月から本格スタートする「子ども・子育て支援新制度」では、消費税引き上げの増収分を活用することで、保育の場を増やして待機児童を減らす取組や、地域のさまざまな子育て支援を利用しやすくする取組などが進められます。
具体的には、教育と保育を一体的に行い、保護者の就労状況が変わっても継続利用できる「認定こども園」の普及や、待機児童の多い0~2歳児を対象とした小規模保育等の創設をはじめ、地域の実情に応じて様々な子育て支援のメニューが用意されることになります。
このように、女性が働き続ける上で不可欠な社会インフラの充実が図られますので、ぜひ企業の方々も新制度の内容を十分に把握してほしいと思います。
また、企業の取組との関係では、事業所内に設けられた保育施設などで従業員の子どもと地域の子どもを一緒に保育する「事業所内保育」についても、新たに市町村の認可事業として位置付けられますので、女性活躍推進の一施策として、ぜひ企業の方々にも導入をご検討いただきたいと思います。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
小室:9月より、産業競争力会議の民間議員に任命されて活動しています。女性活躍推進の流れは、政府の中央でも驚くほど積極的に議論されています。また同時に活発に議論されているのが働き方改革・休み方改革です。長時間労働の是正と女性活躍推進がどのように関係しているのか、また、具体的にその両方を効果的に推進するにはどうしたら良いのかについても、お話しいたします。900社以上をコンサルティングしてきた実績をもとに事例を多くお話しますので、ぜひご参加ください。
- 株式会社ワーク・ライフバランス
代表取締役社長 - 小室 淑恵氏(こむろ よしえ)
- 900社以上へのコンサルティング実績を持ち、残業を減らして業績を上げる「働き方見直しコンサルティング」に定評がある。2児の母として子育てをしながら効率の良い働き方を実践。『6時に帰るチーム術』など著書多数。消費増税集中点検会合、内閣府「子ども・子育て会議」他複数公務を兼務。金沢工業大学客員教授。
- 日本の人事部「HRカンファレンス」事務局
- 〒107-0062 東京都港区南青山2-2-3 ヒューリック青山外苑東通ビル6階
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