企業人事部門
- (1) 株式会社AOKI:ライフステージに合わせて柔軟に働き方を変える「ギアチェン」で仕事との両立が実現!
- (2) 株式会社NTTデータ:「面従腹背」を吹き飛ばせ!~働き方変革は「腹落ち」と「自分事化」で実現する~
- (3) 株式会社KDDIエボルバ:夢を追いかける社員を支援する「エボルバで、あなたの夢かなえませんか」プロジェクト
- (4) サイボウズ株式会社:「100人いれば、100通りの働き方」サイボウズでの仕事を複(副)業とする人材を募集する『複業採用』
- (5) さくらインターネット株式会社:「働きやすい」環境を整え、社員の「働きがい」を支援する「さぶりこ(Sakura Business and Life Co-creation)」
- (6) サッポロホールディングス株式会社:「自らのキャリアは自ら切り拓く」マインドを持った人財を育成する「越境プロモータープログラム」
- (7) GEジャパン株式会社:「査定」から「達成支援」へ。 人事評価の目的を根本的に変える「ノーレイティング」
- (8) ソニー株式会社:「社員のチャレンジ精神に火を灯す」新たなキャリア施策をスタート
- (9) ソフトバンク株式会社:AIによるエントリーシート選考で500時間の工数を削減
- (10) テルモ株式会社:がんになっても安心して働ける「がん就労支援ルール」を新設
- (11) トレンドマイクロ株式会社:自社のITセキュリティ人材をソーシャルリソース化し、社会に還元
- (12) 日本航空株式会社:テレワークの活用で休暇先での業務を可能にする「ワーケーション」
- (13) 森下仁丹株式会社:オッサンも変わる。ニッポンも変わる。性別・年齢不問。挑戦し続ける人材を募集する『第四新卒採用』
- (14) LifeWorkS project Shiodome:汐留エリア企業・行政・NPOが集結し、オープンイノベーションを起こす
- (15) One JAPAN:大企業の若手・中堅有志団体の実践共同体
ライフステージに合わせて柔軟に働き方を変える「ギアチェン」で仕事との両立が実現!
AOKIではライフステージや状況に応じて、社員が働き方を柔軟に選択できる「ギアチェンジパッケージ」など、多様な働き方を支援する取り組みを行っている。
「ギアチェンジパッケージ」は、社員の事情に応じて正社員・エリア正社員(転居を伴う異動なし)・パートナー社員(パート社員・異動なし)間で転換可能なほか、パートナー社員が上長面談を経てエリア正社員や正社員にキャリアアップ可能な制度。また、育児・介護、病気治療などの事情で時短、曜日限定、日数短縮、地域限定勤務なども社員区分を変えずに一定期間可能だ(育児・介護事情の期間は法定を上回る)。さらに有期雇用のパートナー社員も全員無期化し、長期的なキャリア形成を可能にした。
この他にも、パートナー社員とエリア正社員の時間あたり給与、評価、福利厚生も同水準にしたほか、退職した社員の復職を支援するジョブリターン制度、継続雇用年齢引き上げ、インターバル勤務制度なども実施。社員が働きやすい環境づくりに力を入れている。
「面従腹背」を吹き飛ばせ!~働き方変革は「腹落ち」と「自分事化」で実現する~
NTTデータでは、社内アンケートで働き方変革の浸透度を測ったところ、ある社員像が浮上した。組織の取り組みが進んでいても、内心賛同していない「面従腹背」社員たちだ。そこで、社員に正面から向き合い、共感の醸成に注力した施策を打ち出した。
その一つが、他社事例の取材コンテンツ「突撃! 隣の働き方変革」の発信。他社の働き方変革にかける想いと苦労を社内ポータルで紹介した6本の記事は、腹落ちしていない社員が働き方変革を自分事として考える契機となった。
次に、事業部長11名が変革への約束事をセミナー形式およびコンテンツとして発信する「リレートーク」。参加者と事業部長との質疑応答を経て、社員の納得感が得られる場とした。
このようにして働き方変革への心理的な壁を取り除くことに時間をかけた結果、働き方変革の共感・実践度の大幅な改善が経年調査で認められた。社内では自発的に働き方変革の情報を収集する動きと、会社と社員自身の成長のために変革を進めようとの意識が芽生えてきている。
夢を追いかける社員を支援する「エボルバで、あなたの夢かなえませんか」プロジェクト
社員がワクワクする会社を実現するため『Workcreation(ワークリエーション)―未来の「働く」をクリエイトする―』をビジョンに掲げるKDDIエボルバ。同社では、社員の才能や能力を伸ばせるきっかけづくりを目的に、2016年6月に「エボルバで、あなたの夢をかなえませんか」プロジェクトを開始。働きながら夢を追いかける社員への支援を行っている。
プロジェクトの第一弾として、在籍する約17,000人の全社員を対象に、働きながら音楽活動をする社員を支援するプログラム「ハタラク」×「オンガク」を開始。 社員は自分の楽曲のデジタル配信や、カラオケBOXチェーンへの楽曲登録などのPR活動への支援を受けられ、発生した売上も社員本人に還元される。
夢を追いかけることと仕事の両立が難しく、能力は高くても就職潜在層となっている人材は少なくない。夢を追う社員を応援することは、在籍する社員の意欲向上に加え、優秀な人材の獲得にもつながる。同社では、今後も制度の拡充などにより、さらなる支援を行っていく。
「100人いれば、100通りの働き方」サイボウズでの仕事を複(副)業とする人材を募集する『複業採用』
2012年より社員の複(副)業を認め、個人の自立と多様な働き方の実現を目指して取り組みを続けてきたサイボウズ。政府の働き方改革が急速に進み、複(副)業に対して前向きな流れが生じている中、同社での仕事を複(副)業とする人材を募集する「複業採用」を開始した。
さまざまな知見や専門性を持った人材を、契約形態にとらわれない多様なスタイルで採用し、理想でつながり、一緒にチームワークあふれる社会を目指していける仲間との出会いを期待して開始した、という同制度。地方のNPO法人を運営する人材が研修コンテンツ作りなどの専門スキルを活かし、地元にいながらリモート環境で同社の仕事を行うなど、「専業」では出会えなかった人材の採用が実現している。
人手不足が進む現在、より優秀な人材を獲得する手段として、有効な一手となる複業採用という形態。働き方の多様性への対応は、これからの採用のトレンドとなっていくだろう。
【企業情報】https://cybozu.co.jp/company/job/recruitment/fukugyou/
「働きやすい」環境を整え、社員の「働きがい」を支援する「さぶりこ(Sakura Business and Life Co-creation)」
「制度より風土」という考え方のもと、さくらインターネット「らしい」働き方として「さぶりこ(Sakura Business and Life Co-creation)」を導入。社員のキャリアや働き方を支援する取り組みを行っている。
もともと残業も少なく(月間平均約8時間)、育児休業の取得率も高い(女性100%、男性約50%)同社では、「風土」を大切にしている。「さぶりこ」の導入についても、「制度として存在するだけでなく、実際に利用しやすい風土づくり」を意識した。役員・人事・社員間の対話に力を入れ、意見交換を行うイベントも実施。社員から新たな制度を提案するプレゼンも行われ、実際にいくつかの制度の導入が決定したという。
導入した主な制度は、自宅・カフェ・コワーキングスペースなど社外での勤務を認める「どこでもワーキング」、副業などの社外活動に携わることを推奨する「パラレルキャリア」、勤務時間を10分単位でスライド可能にする「フレックス」、業務が完了していれば定時30分前でも退社を認める「ショート30」など。
「自らのキャリアは自ら切り拓く」マインドを持った人財を育成する「越境プロモータープログラム」
サッポロビール社では、「自燃型」の若手・中堅社員の育成や、部門間の縦割り意識の払拭が、従業員意識調査などから課題として浮かび上がっていた。
こうした状況をグループ人事戦略の基本理念である「越境せよ」の推進によって打破し、「自らのキャリアは自ら切り拓く」マインドを持った中堅・若手人財を育成し、彼らをテコに、本社部門の組織開発に取り組もうとしたのが、「越境プロモータープログラム」だ。
「越境プロモータープログラム」では、リーダー(中堅社員)1名とメンバー(若手社員)4名のチームで本社部署の業務を体験し、その部署の業務に対し、自分たちで考えた越境提案を行う。中堅・若手社員のリーダーシップ開発やマインドセット、あわせて他部署の管理職をメンタ―として巻き込むことにより、本社部門の相互理解などにもつながっているという。
同社では今後、プログラムのグループ全体への展開を検討し、越境が日常的に行われる組織風土の実現を目指している。
「査定」から「達成支援」へ。 人事評価の目的を根本的に変える「ノーレイティング」
GEは2016年に、「業績評価×リーダーシップバリュー評価」の軸で従業員の評価を九つのブロックに位置づける「9ブロック」ツールを廃止。多くの日本の企業が手本にしてきたツールを廃止したことで、多くの人事担当者に衝撃を与えた。新しく導入された人事評価制度の重要なコンセプトは「ノーレイティング」だ。ノーレイティングとは、社員を年度単位の評価に応じてランク付けする従来の年次評価(レイティング)を廃止する、人事評価の新たな潮流。現在、欧米企業を中心に広がりを見せており、年次ベースでのランク付けによる査定をオン・ゴーイングの達成支援に重点を移すことで社員の成長を促す。同社では社員の成果と成長に対するよりタイムリーな対話やフィードバックに重点を置いていくに当たり、人事制度という仕組みやツールに限らず、人事評価を巡る評価者と従業員の新しいあり方を基礎づけるために「トラスト(信頼)」など会社のカルチャーまで踏み込んだ改革を実践中。評価の目的を、社員のパフォーマンスの「査定」から「達成支援」へと変革する取り組みは、他社に与える影響も大きいと考えられ、今後の動向が注目される。
【企業情報】http://www.ge.com/
「社員のチャレンジ精神に火を灯す」新たなキャリア施策をスタート
構造改革を終え、成長フェーズへと舵を切ったソニーでは、社員一人ひとりがチャレンジ精神を持って主体的にキャリアを考えられる施策をスタートした。
継続的に高い業績をあげた社員にFA権を付与し、希望部署への異動をサポートする「FA制度」。社員が自分のレジュメを公開し、求人部署からの打診を受けることができる「キャリアリンク」。現業務を継続しつつ週1~2日他部署の業務を行う事で、異動という形式によらずともキャリアの幅を広げることが可能な「キャリアプラス」。上記に加え、既存の社内募集制度を、ビジネス上の重要案件に特化した「特別募集」、バラエティに富んだ求人を掲載した「大募集」に改編。
「自分のキャリアは自分で築く」というカルチャーの上にこれらの施策を展開することで、社員の主体的なキャリア形成へのチャレンジとビジネスニーズに基づく求人との新しいマッチングを実現、部署を横断した積極的なキャリア支援を実現した取り組みとして、今後の動きが注目される。
【企業情報】http://www.sony.jp/
AIによるエントリーシート選考で500時間の工数を削減
ソフトバンク株式会社では、新卒採用のエントリーシート選考にAI「IBM Watson」を活用。大幅な工数削減を実現した。
同社では、学生からのエントリーを待つ従来の選考から、ターゲット学生に積極的にアプローチする「攻めの選考」へとシフトするにあたり、既存の業務の効率化が課題となっていた。中でも、エントリーシートの確認は、人事担当者にとって大きな負担となる業務の一つだった。
そこで同社では、自然言語分類技術を用いてエントリーシートの内容を分析し、合否を判断するAIを導入。さまざまな試行錯誤を経て、ジャッジの精度を人間が行った場合とほぼ同等まで向上させた。AIが不合格としたエントリーシートのチェックは人間が行っているが、年間約500時間の工数削減を行うことができるという。
同社では今後、AI導入によって生まれた人員や時間を活用し、学生との接点拡大や現場を巻き込むインターンシップなど、新たな新卒採用の実現を目指す。
【企業情報】https://jinjibu.jp/hrt/article/detl/techactivities/1788/
がんになっても安心して働ける「がん就労支援ルール」を新設
日本人の二人に一人ががんになるといわれる現在、がんの罹患後に仕事を続ける人も増えている。こうした背景から、テルモ株式会社では、がんに罹患した社員が治療を行いながら働き続けられる環境づくりを目指し、「がん就労支援ルール」を新設した。
同社は多様な社員の活躍を推進するため、ダイバーシティの推進や健康経営に力を入れており、その中でがんへの取り組みとして、社員へのがん検診の無料化、社員や配偶者を対象とした乳がん検診の啓発など、早期発見・早期治療につながるさまざまな取り組みを行ってきた。新設した「がん就労支援ルール」では、がんに罹患した際の失効有給休暇の利用や無給休暇の付与、短時間勤務や時差勤務などの柔軟な勤務形態を認めた。
がんに罹患した社員へのサポートがますます多くの企業の課題となる中で、同社の取り組みが今後も注目される。
【企業情報】http://www.terumo.co.jp/pressrelease/detail/20170124/276
自社のITセキュリティ人材をソーシャルリソース化し、社会に還元
国家機関や民間企業、一般市民へのサイバー攻撃が社会的な問題となる中、トレンドマイクロでは、自社のITセキュリティ人材を積極的に社会へ還元する「トレンドマイクロ ピープルエコシステム」を実践している。同社では、採用・育成した人材を企業の垣根を超えてソーシャルリソース化することで、ビジョンである「デジタルインフォメーションを安全に交換できる社会の実現」を目指しているのだ。
社外で経験を積むことは、社員自身の成長や、その後のキャリア形成にもつながるという。現在、社員による警察などへのアドバイザー協力や人事交流を通じた他社のセキュリティ人材の育成への貢献などにより、社外のセキュリティエンジニアの育成に協力しているほか、今後は社員の学術界や政界への転身、起業支援などにも力を入れる方針だ。
自社のノウハウや人材を社外に広く公開することで、企業としての成長と社会的メリットの双方を実現する取り組みとして、今後の展開が注目される。
テレワークの活用で休暇先での業務を可能にする「ワーケーション」
多くの企業が働き方改革の一環としてテレワークの導入を進める中、日本航空(JAL)が取り入れた新たなテレワークの仕組みが、「ワーケーション」だ。ワーケーションとは、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語で、テレワークを用いた旅行先などでの業務を認めるというもの。社員全員が20日間の有給休暇を取得することが狙い。
同社では、主にデスクワークを行う地上職社員を対象に、休暇先などでの最大5日間のテレワークを認める。業務開始時や終了時の進捗共有を行うことで、業務期間は出勤日として扱われる。
ワーケーションの活用により、急な業務の発生で旅行をキャンセルしなければならなくなる、といった問題も解決される。また、有給休暇と組み合わせての利用も可能なため、休暇が終わってから数日間旅先でテレワークを行い、リフレッシュを図るといった活用方法も考えられる。同社では、今後もテレワークの活用により、社員の新たな活力につなげることを目指している。
オッサンも変わる。ニッポンも変わる。性別・年齢不問。挑戦し続ける人材を募集する『第四新卒採用』
森下仁丹が開始したのは、社会人としての経験を十分積んだ後も仕事に対する情熱を失わず、次のキャリアにチャレンジしようとする人材を、性別・年齢を問わず採用していくとして、「第四新卒採用」と名付けた中途採用。
「オッサンも変わる。ニッポンも変わる。」と印象的な新聞広告などを一般新卒採用の解禁日に合わせて開始。そのインパクトもあり、幹部候補の即戦力確保を狙ったこの採用手法は、中高年の新しい働き方の提案として注目を浴びた。
人材採用といえば、若い世代を募集するのが当たり前という風潮の中、実は圧倒的に足りていないのは、マネジメントの核となる人材だという同社。会社のリーダーとなり、社員を導いてくれる人を求める募集には、20代から70代まで2000人もの応募があったという。
「第四新卒採用」は、多くの企業で課題となっている、ベテラン人材の活用とマネジメント人材不足の一つの解となるだろう。
汐留エリア企業・行政・NPOが集結し、オープンイノベーションを起こす
企業や団体の枠を超えた「オープンイノベーション」が、人事分野にも広がっている。中でも今注目されるのが、汐留エリアにある企業・行政・NPOなどが合同で実施する「LifeWorkS project Shiodome」の取り組みだ。
資生堂やソフトバンク、日本テレビ、パナソニックといった日本を代表する大企業が集まる汐留エリア。近年、「働き方」や「キャリア支援」への関心が高まる中で、企業の枠を超えたキャリア支援や働き方の新たなモデルを創出できないかと考えたのが、発足のきっかけだった。
「LifeWorkS(ライフがよろこぶ、ワークを増やそう)」を活動コンセプトに、人事主導でイノベーション創造に向けた場づくりを実施。各社社員を中心に学生や行政、NPOなどを巻き込みながら、すでに「各社オフィスを子どものために解放するプロジェクト」や「企業間で越境(相互インターンなど)を促進するプロジェクト」などがスタートしている。企業や団体の枠を超え、未来の街のあり方を考えるその取り組みには、多くの企業人事からも関心が集まっている。
大企業の若手・中堅有志団体の実践共同体
One JAPANは、企業の枠を超えた挑戦を促し、社会をよりよくするために生まれた、大企業の若手有志団体のプラットフォームだ。大企業の多くが、組織が細分化された縦割り型で、決定までのスピードが遅く、新しい提案はなかなか受け入れられない、いわゆる「大企業病」に陥る中で、そこで働く若手社員もさまざまな悩みを抱えている。One JAPANではこうした状況を打破するため、各企業の若手社員の力を結集させ、社会をよりよくするために活動を行っている。
現在、One JAPANにはパナソニックや富士ゼロックス、NTTグループなど、日本を代表する大企業約40社から、1000名近くの有志の若手社員たちが参加。企業やセクターを超えた共創プロジェクトの企画・実行や、新たな働き方の提案や実践、若手社員に関する調査とレポートの発信などを実施している。
今後もOne JAPANではこれらの活動を通じて、参加する一人ひとりが刺激を受け、行動につなげることができるようなプラットフォームの創出を行い、よりよい社会の実現を目指していく。
【企業情報】http://onejapan.jp/