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HR領域の“傾向と対策”

長時間労働の規制はなぜ必要なのか

安藤 至大さん(日本大学准教授)

日本大学准教授 安藤至大さん

現在、政府で進められている労働時間法制の見直しに注目が集まっています。その中で「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル労働制)」の創設については、残業代ゼロ法案だとして特に批判されていますが、同時に検討されている「働き過ぎ防止のための法制度の整備等」については、あまり話題になっていません。そもそもなぜ長時間労働の規制は必要なのでしょうか。労使が話し合って、望ましい労働条件を決めることができないのはなぜでしょうか。

Profile

あんどう・むねとも/1976年東京生まれ。1998年法政大学経済学部卒業。2004年東京大学博士(経済学)。政策研究大学院大学助教授などを経て、現在は日本大学准教授。専門は、契約理論、労働経済学、法と経済学。著書に『ミクロ経済学の第一歩』(有斐閣、2013年)、『働き方の教科書』(ちくま新書、2015年)などがある。またNHK(Eテレ)の経済学番組「オイコノミア」やBSジャパン「日経みんなの経済教室」の講師としても活躍している。

現行の労働時間規制とは

まず長時間労働に対する、現行の規制とはどのようなものかを見ておきましょう。法律では1日8時間、週40時間の法定労働時間を超える働かせ方はしてはいけないことになっています。しかしこの基準は絶対的なものではありません。労使協定(いわゆる36協定)を結ぶことと法定の割増賃金を支払うことにより、法定労働時間を超えて働かせることができるからです。つまり法定労働時間・36協定・割増賃金の三つを通じて、長時間労働を抑制しようとするのが現行の規制なのです。

企業で正社員として働く場合には、普通は自分で労働時間を決めることができません。会社側が設定した標準的な労働時間(例えば一日8時間)を働くことが求められますし、それに加えて必要な時には残業を命じられるからです。

ここで重要なのは、労働者が合理的な選択を行えるかどうかです。自分の健康状態をきちんと理解して、また的確な判断ができる労働者であれば、健康を害してしまいかねない長時間労働を命じられた場合には、会社を辞めるという選択ができるでしょう。しかし過労死や過労自殺が少なからず発生している現状を考えると、自分の健康状態をうまく管理できない、また精神的に追いつめられて適切な判断が下せない労働者も一定程度は存在していると思われます。労働時間の規制が必要となるのは、このような労働者の健康被害を防止する必要があるからです。

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