HRのオピニオンリーダー100人が提言、日本の人事を考える情報誌 「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ)」

「人・組織・経営」研究の第一人者に聞く“コンフィデンス(信頼)”

「信頼」でつながり、世界で勝つ。これからのグローバルリーダーに求められるものとは

大滝 令嗣さん(早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授)

早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授 大滝令嗣さん

変化の激しい時代に、日本企業がグローバル市場で勝つためには何が必要なのでしょうか。早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授の大滝令嗣さんは、現地スタッフやさまざまなステークホルダーから信頼されるグローバルビジネスリーダーの育成が急務だと話します。現在、日本企業にはどのようなグローバル経営が求められており、その実現のためにはどのようなリーダーが必要なのか。その要諦を聞きました。

Profile

おおたき・れいじ/東北大学工学部卒業、カリフォルニア大学電子工学科博士課程修了。東芝半導体技術研究所、ヘイコンサルティング・コンサルタント、マーサージャパン・シニアコンサルタント等を経て、1988年 マーサージャパン代表取締役社長、2000年より代表取締役会長兼アジア地域代表。2005年にヘイコンサルティング・アジア地域代表、2008年にエーオンヒューイットジャパン代表取締役社長、2009年より同社の会長を務める。早稲田大学では2006年より教鞭(きょうべん)をとり、2011年から現職。他にシンガポール経済開発庁ボードメンバー等を歴任。

日本企業の「グローバル化」の現在地と課題

昨今はVUCAの時代といわれていますが、グローバルビジネスの難易度が上がっていることの背景には何があるのでしょうか。

昨今、新たに浮上しているチャレンジは、やはり有事でしょう。ウクライナ戦争、パレスチナ問題、そして潜在的には米中関係。有事の影響下でも平静を装ってグローバルビジネスを行うことは、これまで誰も経験していません。有事の際は影響が多岐にわたります。ウクライナ戦争では、小麦や肥料といったウクライナ発の原料価格が高騰し、企業はサプライチェーンの見直しを余儀なくされました。2023年、新型コロナウイルスの影響による停滞からはほぼ抜けることができましたが、混沌(こんとん)とした社会の中で、企業は今後どこでどれだけ稼いだらよいかという難しい課題を突き付けられています。

米中の衝突が起きたら、日本企業のビジネス環境はますます厳しくなりますね。

その通りですが、見方を変えれば、日本企業にとってまたとないチャンスでもあります。この数十年で日本企業は、中国や新興国に押されて国際市場でのシェアを大きく落としました。ただ、中国経済の現状はというと、不動産市場の低迷などで成長が減速し、足止めを食らっている状態。一方、日本経済は、円安による苦闘はありながらも経済は安定しているし、資金もある。挽回のチャンスです。

そのチャンスを生かすために、どのようなグローバル経営が求められているのでしょうか。

グローバル化を進めるにあたっては、まずグローバル化のスタイルを決める必要があるでしょう。企業の海外進出の形を、縦軸を「組織オペレーションの統一性」、横軸を「ローカル市場対応力」というマトリックスで整理すると、四つの形態、あるいはスタイルに分けられます。

世界的統一性が低く、ローカル市場対応力も低い企業は「インターナショナル企業」。本国で作った本国仕様の製品を輸出し、海外の代理店やエージェントを通じて売るという輸出ビジネスモデルの組織形態です。海外は他社に任せるのでオペレーションの統一性は低い状態です。本国仕様の製品がそのまま海外でも売れる会社はこのスタイルが合っています。

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