HRのオピニオンリーダー100人が提言、日本の人事を考える情報誌 「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ)」

「人・組織・経営」研究の第一人者に聞く“リスキリング”

“変化の時代”の働き方、組織づくりに欠かせない
「アンラーニング」の視点とは

松尾 睦さん(北海道大学大学院 経済学研究院 教授)

北海道大学大学院 経済学研究院 教授 松尾 睦さん

過去に第一線で活躍し、プロフェッショナルな仕事をしていた人が、時代と共に結果を残せなくなるのはなぜなのでしょうか。北海道大学大学院の松尾睦教授は、そのカギを握るのが「アンラーニング」だと語ります。DX推進や脱炭素社会の実現といった社会変革の流れを受けて、従業員の“職業能力の再開発・再教育”を行う「リスキリング」に注目が集まる昨今。この変化の時代に求められる学び直しとは何か。また企業の人事は、社員が学び、成長し続ける組織をどうつくるべきか。松尾教授へのインタビューから、そのヒントを探ります。

Profile

まつお・まこと/1988年小樽商科大学商学部卒業。92年北海道大学大学院文学研究科(行動科学専攻)修士課程修了。99年東京工業大学大学院社会理工学研究科(人間行動システム専攻)博士課程修了。博士(学術)。2004年英国ランカスター大学にてPh.D. (Management Learning)取得。神戸大学大学院経営学研究科教授などを経て現職。著書に『部下の強みを引き出す 経験学習リーダーシップ』(「HRアワード2020」書籍部門 入賞)『「経験学習」ケーススタディ』『職場が生きる 人が育つ 「経験学習」入門』(「HRアワード2012」書籍部門 最優秀賞 受賞)(いずれもダイヤモンド社)ほか。

変化の時代に求められる「アンラーニング」

コロナ禍による環境変化や気候変動への対策、DX推進の流れを受けて、世界では“職業能力の再開発・再教育”を意味する「リスキリング」の重要性が高まっています。松尾先生は、日本企業の「リスキリング」の状況をどのようにご覧になっていますか。

「リスキリング」や「学び直し」が話題になること自体は、良い傾向だと思います。ただ、コロナ禍による環境変化への対処療法として一時的に取り入れるだけではあまり意味がありません。例えばリモートワーク一つをとっても、「感染拡大がゆるやかになってきたから全て元に戻そう」という企業と、「せっかくリモートワークに挑戦したのだから、コロナ禍をきっかけに働き方を見直そう」という企業では、未来が違ってくるはずです。

リスキリングにおいては「アンラーニング」も重要かと思います。まずはあらためて「アンラーニングとは何か」ということから教えていただけますか。

「アンラーニング」とは、時代に合わなくなった知識やスキル・信念などを意図的に捨てて、有用な知識やスキル・信念を新たに取り入れていく、いわば“入れ替え学習”のことです。“ソフトウェアのアップデート”に近いイメージですね。 哲学者の鶴見俊輔氏はアンラーニングを「学びほぐし」と訳しました。この訳はわかりやすく、絶妙な表現ですよね。硬直した知識やスキルを「ほぐし」て、新しく「組み立て直して」いくわけですから。

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