2020年を目指して~女性活躍推進3.0の幕明け
中島 豊さん(中央大学大学院戦略経営研究科 特任教授)
なかしま・ゆたか/東京大学卒業後、新卒で就職した日本企業にて人事部門に配属されたことがきっかけで、以後31年間にわたり合計7社の外資系含めた会社で人材マネジメントの仕事に携わる。その間、ミシガン大学にてMBA, 中央大学で博士(総合政策)を取得。現在、中央大学ビジネススクールで教鞭をとる一方で、外資系金融にて執行役員として人事を担当している。著書に「ケースで学ぶ人事の仕組みとルール」、訳書に「人事コンピテンシー」(ウ―リック他)等、他多数。
女性差別禁止とダイバーシティ
1986年に施行された男女雇用機会均等法によって、女性であることを理由にした差別が禁止されたことを日本における「女性活躍推進1.0」と呼ぶことができるであろう。そして、昨年、安倍政権の成長戦略の柱の一つとなった女性活躍推進における「2020年に女性管理職30%」という目標が示された。これは、政府として女性に対する「積極的格差是正措置」(Affirmative Action)に具体的に取り組み始める「女性活躍推進2.0」の幕明けであるといえる。
米国では、1070年代から80年代を中心に、まずは人種、次に性別における差別解消積極措置として、様々なAffirmative Actionの施策が展開され。その具体的な推進方法は、例えば、州立大学の新入生の○○%は、黒人の学生を入れる、といったように、それまで差別されていた側の人に対して優遇枠を設けるというものであった。
こうした施策の背景には、差別の対象となっている「社会的弱者」は、何世代にもわたる社会的・歴史的扱いによって生み出されたという考え方がある。例えば、大学を出ていない黒人は、収入のよい職業につけないために子供への教育投資ができず、結果、次の世代も高等教育を受けることができない、と連鎖する負のスパイラル現象である。Affirmative Actionは、安定した就学/就職の機会を与えることで、少しでも社会的な格差を埋め、社会的弱者が同じラインに立つきっかけとしよう、という趣旨のもとに導入されたのである。 こうした施策は、それまで優遇されてきた社会的強者であった白人や男性の側からは、当然反発が起こる。米国では、平等原則に反する「逆差別」であるとして憲法訴訟が起こされるなど、社会全体を巻き込んだ大議論となった。その中から、ダイバーシティ(多様性)の拡大を推し進めることで混乱するなどの影響は出るものの、他方で社会や組織が、持続的に発展していくためのより優れた能力を獲得することで、そのマイナスを補う以上のプラスの効果を生み出すようなダイバーシティ・マネジメントの必要性が認識されるようになったのである。
この続きは「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ) Vol.3」でご覧になれます。
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