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「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ)」TOP  >  2015 Vol.3  >  出口治明さんインタビュー
フロンティアリーダーに聞く

人を知り、能力を引き出して、組み合わせる。
“根拠なき精神論”を打破する最強のマネジメントとは

出口 治明さん(ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO)

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO 出口治明さん

「先日、東京駅で本当にびっくりしました」。ライフネット生命創業者の出口治明CEOは、東京駅で見知らぬ若者から突然、名刺交換を求められたそうです。「『度胸をつけるために、名刺100枚もらってこい』と上司に言われたそうですが、そんな研修を行っている会社がまだあるんですね」。出口さんはこのケースを、日本のマネジメントにいまだ根深い“根拠なき精神論”の典型例だと指摘します。しかし精神論だけでは、企業は厳しい時代を勝ち抜けません。だとすれば、何が一人ひとりを動かし、育て、企業を強くするのでしょうか。大企業から躍進著しいベンチャーまで、さまざまな組織のメカニズムを熟知する出口さんに、マネジメントの本質論をじっくりと語っていただきました。

Profile

でぐち・はるあき/1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、1972年に日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当するとともに、生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2006年に生命保険準備会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業。2013年6月より現職。主な著書に、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『直球勝負の会社』(ダイヤモンド社)、『仕事に効く教養としての「世界史」』(祥伝社)、『部下をもったら必ず読む「任せ方」の教科書』(角川書店)、『「働き方」の教科書』(新潮社)、『本の「使い方」』(角川書店)など。

少数だから精鋭になる

ライフネット生命は、出口会長の「保険料を半分にして、安心して子どもを産み育てられる社会を作りたい」という思いから立ち上げられました。その起業の理念を実現するために、支社などを持たずにインターネットで商品を販売、社員数もおよそ90名と“少数精鋭”の組織運営で急成長を遂げています。

「少数精鋭」という言葉を、優秀な人材を選りすぐったチームという意味で使う人が多いのですが、それは違います。精鋭を少数集めるのではなく、少数だから精鋭になるのです。子どもの頃、仲間を集めて野球をやろうと思っても、9人集まらないことがよくありました。そうすると守備のときは一人でセカンドとショート、場合によってはサードまで守らなければいけない。右へ、左へ走っているうちに、自然と鍛えられてうまくなっていく。ベンチャーもゼロから始まって、最初は少数でやるしかありません。そうすると、少数であるがゆえに精鋭になる。まして当社は、保険料を半額にして、安心して赤ちゃんを産める社会を創りたいという理念がありますから、コストの面からも極力少数でカバーしていかないと、その理念が実現できないのです。

では、少数が精鋭になり、組織が強化されていく過程で、会社として何か働きかけを行ったのでしょうか。

当社のオフィスは、会議スペースをあまり設けていません。会議室が少ないと、無駄な会議は減ります。物理的にできないからです。会議の時間も、「何かをシェアする会議」は原則30分、「何かを決定する会議」なら1時間以内と決めました。また、会議の資料はペーパーレスを徹底。パワーポイントを投影するだけですから、自然と内容が整理されて、いい資料になります。小さな文字でごちゃごちゃ書き込んであると、見にくくて嫌がられますからね。言葉でああしろ、こうしろというより、まず物理的に会議室をなくす、時間を区切る、紙をなくす。これで、会議も“精鋭”になっていきます。人も同じです。精鋭は会社が作るものでも育てるものでもなく、一人ひとりが自らなっていくもの。リーダーができるのはそのための仕組みや仕掛け、環境の整備です。間違っても「もっと頑張れ!」なんて精神論をぶつことではありません。

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