HRのオピニオンリーダー100人が提言、日本の人事を考える情報誌 「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ)」

「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ)」TOP  >  2015 Vol.3  >  坂東眞理子さんインタビュー
「人・組織・経営」研究の大家に聞く

グローバルに活躍できる女性の経営幹部・リーダーを
いかに育成していくのか
── トップのコミットメントの下、女性活用の風土を醸成し、本人が結果を出していく

坂東 眞理子さん(昭和女子大学 学長)

昭和女子大学 学長 坂東眞理子さん

日本政府では、「2020年までに指導的地位における女性比率を30%まで引き上げる」との目標を掲げていますが、その現状は目標とほど遠いレベルにとどまっています。しかし、少子高齢化が進み、労働力不足が深刻化する中、女性管理職・リーダーの育成や登用は、日本企業にとって最重要課題の一つ。最近では、グローバルに活躍できる女性の経営幹部やリーダーの育成も、クローズアップされています。それなのになぜ日本企業では、女性活用や女性管理職登用が進まないのでしょうか。大ベストセラー『女性の品格』の著者として知られ、女性活用に関する論者の第一人者である昭和女子大学学長・坂東眞理子さんに、日本における女性活用の根本的な問題から、女性の経営幹部・リーダーを育成する上でのポイントなど、幅広いアドバイスをいただきました。

Profile

ばんどう・まりこ/1946年富山県生まれ。東京大学卒業後、総理府(現内閣府)入省。内閣総理大臣官房広報室から青少年対策本部の「青少年白書」執筆アシスタントを経て、婦人問題担当室(現男女共同参画局)設置と共に31歳で日本初の「婦人白書」を執筆。80年にハーバード大学に留学後、総理府老人対策室などを経て、男女共同参画室長として手腕を振るう。49歳で埼玉県副知事に任命され、3年後には女性初の総領事として在豪州ブリスペンの本国領事に就任する。2003年 昭和女子大学理事、2004年 教授、2005年 副学長、2007年 学長、2014年 理事長。早くから論壇などで執筆活動を活発に行っており、行政官としてのキャリアと2児の母親としての役割を両立した経験を活かし、女性のライフスタイルに関わる一般向けの著作も多い。その著書は40冊以上に渡り、『女性の品格』(PHP新書)は300万部を超える超ベストセラーとなった。

なぜ日本企業では、女性活用がうまくいかないのか

日本企業が女性を活用できていない理由は何でしょうか。

近年は育児・介護休業法がかなり整備され、待機児童ゼロ作戦が閣議決定されるなど、女性の出産・子育てを取り巻く社会的な制度は、以前と比べてかなり整ってきています。それにもかかわらず、出産・子育ての時期になれば、日本女性の多くはキャリアを中断して家庭に入ります。「3歳までは母親の手元で子育てを行わなければ、子どもに悪影響を及ぼす」という「3歳児神話」などの影響は根強いようです。  欧米の状況を見ると、個人のスキル・能力の向上には大学が大きな役割を果たしていて、付加価値を付けるために大学で勉強し、企業に売り込んでいくというのが定番です。ところが日本の場合、会社が人を育てる役割を担っています。女性はキャリアの途中で出産・子育てで辞めてしまうことが多いため、会社はせっかく女性を育てても元が取れない、無駄な投資であると考え、無理して女性を鍛えることなく、チャンスも与えません。そもそも日本企業の人事部は女性に多くを「期待」していません。「機会」も少なく、「鍛えよう」ともしないのです。この三つの「き」が、中長期で女性が活用されない理由だと思います。

そのような状況は、今も根本的に変わっていないのでしょうか。

あまり変わっていないように感じますね。いまから10年くらい前、内閣府の男女共同参画局長を務めていた頃に、「2020年までに指導的地位における女性比率を30%まで引き上げよう」という目標値を掲げましたが、当時は企業側があまり努力しませんでした。しかし第二次安部政権となり、この目標が再び日の目を見ることになりました。経団連も政府と一致団結する考えを示し、特にトップやエグゼクティブの人たちは女性管理職の登用に努めると公言しています。

ただ、企業によって「温度差」があるのも事実です。例えば、メーカーにはもともと女性社員が30%もいないという企業が多く、女性管理職を30%にするのは難しいと言います。また、一番の「抵抗勢力」は中堅の男性管理職です。いままでの仕事のやり方で、体育会系のごとく皆が一つの方向に向いて行動する、四の五の言わないといった指揮命令系統に慣れていた人たちにとって、女性は異質な考え方や行動をする存在に思え、男性中心の会社組織に入ってくることを居心地が悪く感じているようです。

また、女性側の事情もあります。女性は男性のように家庭のことを省みず、会社のために全てを捧げて管理職を目指すような働き方を、決して魅力的だとは思いません。ある程度働いた後は専業主婦となって夫を支えるために家庭で過ごしていた方がいいのではないか、好きな事や趣味を活かした生活を送った方がいいのではないか、と迷う人が少なくないのです。

この続きは「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ) Vol.3」でご覧になれます。

詳細を見る