新卒採用にイノベーションを
本田 由紀さん(東京大学大学院教育学研究科 教授)
ほんだ・ゆき/東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学)。日本労働研究機構研究員、東京大学社会科学研究所助教授等を経て、2008年より現職。専門は教育社会学。教育・仕事・家族という三つの社会領域間の関係に関する研究を主として行う。特に、教育から仕事への移行の変革について積極的に発言している。主な著書に、『若者と仕事』(東京大学出版会)、『多元化する「能力」と日本社会』(NTT出版)、『「家庭教育」の隘路』(勁草書房)、『軋む社会』(河出文庫)、『教育の職業的意義』(ちくま新書)、『「ニート」って言うな!』(共著、光文社新書)、『労働再審1 転換期の労働と〈能力〉』(編著、大月書店)など。
1990年代以降の日本の新規大卒者の採用は、「新規学卒一括採用」という旧来の枠組みは温存したままで、使用されるツールやプロセスが増殖してゆくという方向で進んできたといえます。
インターネット上の就活サイトやエントリーシート、適性テスト、グループディスカッション、インターンシップなど、かつては存在しなかったような多段階のハードルが設定されてきましたが、それらはいずれも、拡大した応募者の「地頭」と「人柄」を、より精確に把握しようとするものでした。
採用活動の時期に関しても、1997年の就職協定廃止によって前倒しが進んできたことに対し、2011年からは広報活動の開始がそれまでの大学3年10月から12月へと遅らされ、さらに2015年からは大学3年3月に広報活動開始、8月に選考活動開始というスケジュールが予定されています。このように採用活動の時期に関して一定の変更はなされてきましたが、大学3年次から開始するという点では変わりありません。公式に定められた開始時期よりもずっと以前から実質的な採用を開始している企業も、相変わらず多数存在しています。
つまり、基本的な採用のあり方は維持したままで、その実施方法の精緻化や多段階化と、時期に関する微調整がなされてきたのみだということになります。まるで、ガラパゴス的に進化したケータイのように、不必要かもしれない高度な機能まで付け加えながら、根本はおそろしく旧態依然としているというのが、現在の日本の採用活動なのです。
この続きは「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ) Vol.2」でご覧になれます。
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