――　今回の講演のポイントについて、お聞かせください。

高間：企業における組織開発・組織変革といった取り組みのあり方は、最近大きく変化してきています。旧来のトップダウン型の改革や人材開発によるアプローチだけでは、複雑で変化が速い環境への対応がしづらくなりました。そこで最近では、ステークホルダーが全員参加で対話を行い、「ありたい姿」を共創し、自分たちで生み出した取り組みを実践していく自律的なアプローチが効果的になってきました。

しかし、それに取り組む方々からは、どこから手を付けて良いか分からないとか、せっかく取り組みをしても、成果が見えないので周囲や経営層からの支援が得にくいとか、イベントで終わってしまって新しい行動が起きないといった声を聞きます。継続的な変革を行っていくには、小さな変化を見つけ出し、さらにそれを拡大したり、今後は特にどこに手を打っていったらよいのかを、客観的に把握し話し合うためのフィードバックが必要です。

ヒューマンバリューでは、これまで変革のプロセスに取り組んできた人々が生み出した変化の状態を質的に研究したうえで、さらに1600人のアンケートによる量的な研究を通して、組織をより良くするための取り組みがどこまで進んでいるのかを客観的に把握できるようにしました。今回の講演では、「関係の質」「思考の質」「行動の質」の三つの観点から組織に起きた変化の状態を見て、組織の成長の段階を把握する方法をご紹介したいと思います。

――　貴社の強みや特徴について、お聞かせください。

高間：ヒューマンバリューは、これまで多くの企業や行政体の変革プロセスを支援してきました。学習する組織の考え方や、ポジティブアプローチ、ホールシステムアプローチの考え方をもとに、話し合いの場づくりやプロセスのデザインを行ってきた多くの体験から、知識や手法を生み出し、社会に紹介することにも努めてきました。

最近では、エスノグラフィック・アプローチやデザイン思考の考えも取り入れて、事業会社の全員参加の戦略づくりから、市民参加、リーダー育成などの新しい取り組み方法を開発しています。

さまざまな取り組みにも進め方の共通の原則があります。それは、参加メンバー一人ひとりの体験や想いが「一人称」で語られ、それが周囲と共鳴し、「我々・仲間・全体」としてのありたい姿やビジョンに結晶化し、自分の力でできる主体的な行動から小さな変化を生み出し、そこから次の変化に挑戦して、最後には大きな変化につなげていくことです。

――　講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。

高間：今回の講演では、私たちが開発した「組織変革プロセス指標（Ocapi）」をご紹介します。講演を聞いてくださる方の中には、人事部や人材開発の方もいらっしゃるかと思います。そういった方には、現場で組織の変革に取り組んでいる方々に、こういった指標を活用して、適切なフィードバックが得られるようにご支援いただけたらと思います。

組織変革の専門家の方もいらっしゃると思います。もしも、ボトムアップ型やホールシステムアプローチなどを活用して、共創的で生成的な変革プロセスの実現を目指すのでしたら、私たちの研究や取り組みにご一緒いただき、組織開発や変革プロセスの更なる質の向上に貢献していきたいと思います。