会合レポート
『日本の人事部』人事リーダー座談会 第12回
労働力不足、働き方の多様化、AI×データ活用……
激変する時代に必要な「人材育成」「人材投資」を考える
2018.03.08 掲載
これまで著名な研究者、識者を招いての講演+参加者によるディスカッションというスタイルで開催してきた「日本の人事リーダー会」。今回は初の試みとして、大手企業の現役人事リーダーの皆さんにお集まりいただき、現在の人事に関する重要なテーマについてじっくりと語り合う、「人事リーダー座談会」を開催しました。労働力不足や働き方の多様化にどう対応していくかといった現在進行形の課題のほか、そこから見えてくる「人事の未来像」まで、業種や企業規模を超えて、人事リーダーによる熱い議論が交わされました。
■出席者 ※五十音順
アキレス 美知子さん(SAPジャパン株式会社 バイスプレジデント 人事戦略担当)
有賀 誠さん(株式会社ミスミグループ本社 グループ統括執行役員 人材開発統括)
大内 裕さん(協和発酵キリン株式会社 常務執行役員 人事部長)
川野 多恵子さん(リシュモン ジャパン株式会社 人事本部 本部長)
髙倉 千春さん(味の素株式会社 理事 グローバル人事部 次長)
田中 潤さん(株式会社ぐるなび 上席執行役員 管理本部 人事部門長)
長 敦子さん(日本マクドナルド株式会社 執行役員 人事本部長)
山口 恭子さん(株式会社ローソン 人事本部 人事企画 部長)
山下 茂樹さん(武田薬品工業株式会社 グローバルHR 人材開発・組織開発(日本)ヘッド)
あらゆる業界が直面する労働力不足という課題
今日、皆さまに話し合っていただくテーマは「労働力不足にどう対応するか」ですが、必然的に「働き方の多様化」「AIやデータ活用」といったテーマも関連してくるかと思います。まずはパート・アルバイトを含めて、多くの人材を雇用されている日本マクドナルドの長さんから、ご意見をお聞かせいただけますでしょうか。
長:当社はフランチャイズビジネスですが、FCオーナーからいただくさまざまなリクエストの中に、継続的な労働力不足の懸念という声があります。中長期的には東京オリンピック後も今の状況が続くのかどうかが気になるところですが、当面は主婦やシニアといった潜在的な労働市場に目を向けようと考えていて、その開発に取り組んでいるところです。昨年はメディアにも多く取り上げてもらったこともあり話題になりましたが、まだ大きな流れを作るにはいたっていません。少しだけ動き始めた、というところでしょうか。そのような動きの中で改めて感じているのは、マインドセットを変えていくことが非常に重要、ということです。学生をアルバイトとして活用するという「文化」を作り上げてきた当社にとって、学生自体が減ってきている状況は理解しているけれど、それでも学生中心でいきたい、と考えるのはある意味いたし方ないと思います。そういう文化をマインドも含めて5年単位で変えていこうと、チャレンジしているところです。
田中:ぐるなびの中心的な顧客である街の飲食店も、労働力不足の影響を大きく受けています。人手がなくて満足なオペレーションができないために、客席の一部をクローズにしている店すらあります。私たちは主に販促のお手伝いをしてきたわけですが、そうなると、もう販促どころではない店も出てきます。そのため、個店でも導入しやすいPOSシステムや予約台帳システムを開発して販売するなど、「少ない人手で店を回していくための支援」が重要な飲食店支援になりつつあります。
山口:ローソンでも主婦やシニアをターゲットとした募集告知ポスターを作る、外国人留学生のためにマニュアルを多言語化する、といった地道な取り組みを行っていますが、同時に「有限な労働力をどこに配置するか」について一から再検討しているところです。コンビニチェーンによって考え方の違いが出てくるところだと思いますが、当社は発注作業を半自動化し、その分、カウンターまわりの業務を厚くしていこうという考えです。一方で、24時間営業をやめるという選択肢は今のところ考えていません。時短営業をすると24時間営業をしているときより、朝、昼の売り上げが減ることがわかっています。また、ローソンは地域の生活インフラとなっていて、24時間営業が安心感につながっていると考えています。そのため、深夜時間帯のレジ業務は無人化し24時間営業するという実験を、一部で進めているところです。
アキレス:ここは機械に任せた方が合理的、でもここは人と人の触れあいを大切にしよう、といった違いがこれからどんどんはっきりとしていくのかもしれませんね。
有賀:ビジネスの世界で機械化が進むのは間違いないでしょうね。ただ、そのような状況だからこそ、人にしかできない部分もクローズアップされるのではないでしょうか。例えば、自動化を設計するのはエンジニアという「人」なのですから。また、高級ブランドを扱っていらっしゃるリシュモン ジャパンさんのような業界では、接客を自動化することは考えにくいのではありませんか。
川野:そうですね。ラグジュアリー業界では、やはり人による対応が求められます。例えば、単に時計を売るのではなく、それにまつわるストーリーなども含めて、お客さまに寄り添いながら理解していただくことが重要ですから。ただ問題なのは、経験者が限られていることですね。それも労働力不足の大きな要因になっています。どうしてもラグジュアリー業界内だけでの人材流動化にとどまりがちなのが現状ですが、たとえば一粒300円の高級チョコレートの購買層は私どもの顧客と重なる可能性もあります。扱う商材や価格帯がまったく異なっていても、研修次第では他業界にいた人材を採用してもいいのではないかとも考えています。これからは、もっとクリエイティブな採用をしていかなければいけませんね。
日本では労働市場の流動性が不足している
有賀:労働力不足解消に関しては、マクロで見ると四つくらいしか道はないのではないかと思います。第一に、皆さんがおっしゃった自動化、効率化。AIやシステム化だけでなく、人がやることでもプロセスの改善で大幅に効率化できます。第二に、多様な働き方を可能にする環境整備。女性の場合は出産・育児、そして男女問わず介護のために退職する人が本当に多い。これは非常にもったいないことです。仕事と両立できる仕組みが絶対に必要です。第三は、シニア層の活用。今は健康寿命も延びているので、誰もがまだまだ元気に働けます。企業それぞれが定年延長などを行っていますが、もっと本格的に取り組んでいくべきでしょう。ただし留意しなければならないのは、シニアな人たちが組織に残ることで若い人を押さえつける「重し」になってはいけない、ということ。どこかでステップダウンし、いい形でバトンを渡していかないと組織は停滞してしまいます。そして第四は、外国からの労働力を受け入れること。ただし、これは日本という社会の形そのものを変えてしまう可能性も秘めています。経済優先でやってしまっていいのかどうか、自分の中でもまだ答えが見えないところもあります。
長:そもそもこれだけ少子高齢化が進んでいて、「人口減少=市場の縮小」が確実なのに、なぜこれほど労働力が不足しているのか、少し不思議な気もします。日本人の付加価値に対する期待値が上がっているのに生産性が追いついてない、ということでしょうか。
アキレス:本当に労働力不足なのかどうかを、考える必要があるでしょうね。絶対数が足りないのか、それとも欲しい人材がいないのか。私は労働市場の流動性がまだ低いからではないかと考えています。新卒で一括採用して育てていくことはできても、ほしい人材をほしい時に採用することはとても難しい。それが労働力不足だと感じさせている原因の一つではないでしょうか。先日、当社で事業部長を務めていたバリバリの人材が、小さなスタートアップ企業に転職しました。私たちとしてはとても痛いわけですが、「もう5年も同じ仕事で結果を出しているし、まったく違う環境で新しい経験を積みたい」と言われると、引き止めづらい。本人がエンゲージメントを持っていきいきと働くためには、新しい環境でチャレンジした方がいいだろうと考えて、泣く泣く送り出しました。でも、労働市場が回っていくとは、まさにそういうことだと思うんです。必要な人が来てくれて、結果を出して、またステップアップしていく。企業側がタレントマネジメントの仕組みを作ってしっかりと準備していれば、痛いけれど、ものすごく大きなダメージにはならないでしょう。いろいろな変革がたくさん起きている時代ですから、こういう事例がもっと増えていかなければいけないと思います。
有賀:社会全体としての適材適所、ということですね。実際、日本の大企業には生かされてない人材がたくさんいます。
山口:実際に他社の人事の方からも、「日本企業には保有労働力がけっこうあるよ」という話をうかがったことがあります。ミドル層以上であまり仕事をしていない人を、どの企業でも抱えていると。日本企業に新卒で入ってしまうと、安定していて環境もいいので、能力を生かせる仕事ができなくても、あえて外に出ないケースは多いと思います。その人たちが出やすい仕組みをつくって労働市場で循環させていくことができれば、労働力不足は思ったほどでもなかった、ということになるかもしれませんね。
川野:一般論ですが、最近、よく耳にするキーワードが「エンプロイメント」と「エンプロイアビリティ」です。エンプロイメントは雇用された会社の中でどう通用するか、そのスキルを高めていくこと。一方、エンプロイアビリティは内外で通用する能力。流動性を高めるということは、今までエンプロイメントにフォーカスしてきた人たちに、エンプロイアビリティにシフトせよ、と求めることでもありますね。現ポジションで成果を出しながら、他のポジションでも通用するスキルを身につけるという、異なるベクトルにどう対応すればいいのか。そういう難しさはあると思います。
多様な働き方、多様な価値観が社会を変える?
大内:ここまで皆さんのご意見をうかがってきて、純粋な製薬メーカーである協和発酵キリンの課題とは全然違うなと感じました。医薬品はレギュレーションがしっかりしている業界で、近年はさらに厳しくなってきています。それに対処していくにはシステム化は当然として、同時にそれを理解して対応できる人材の育成が不可欠です。しかし、現状では育成がまったく追いついてない状態で、一部の優秀なプレイングマネジャーに業務が集中してしまっている。人材はある程度いるけれど、その人材を求めるレベルまでどうやってもっていくか、スキルのギャップをどう埋めるかが最大の課題となっています。特にグローバル人材では、それが顕著です。当社も急速にグローバル化が進んでおり、あと数年で海外の売上が5割を超すと考えられます。しかし、日本だけでなく海外拠点でもレギュレーションまわりを見ることができる人材が足りていないので、日本でかなりの部分をサポートしなければいけないと同時に国内外でキャリア採用を実施する必要性に迫られています。
有賀:それは日本の多くの企業、とりわけメーカーには共通する問題でしょうね。今日はたまたま外資系や日本でもとんがった企業の皆さんが多いから出てきませんでしたが、実はそのような企業こそが日本のメインストリームと言えます。
大内:育成は「技術の伝承」にも不可欠です。ただ、こうなってくると人によって技術を伝承するという考え方から一旦離れて、AIなどを使ってシステム化することで、人が交代したり、人材が一定のレベルに達しなくてもレギュレーションをクリアできたりするような体制をつくっていかなければいけないかもしれません。そうしないと、長時間労働や働き方の改革はいっこうに進まないように思います。
長:そこに風穴を開けるのも、結局のところ労働力の流動性ではないでしょうか。新卒について調べていたとき、「社会人になる年齢」という興味深いデータを見つけました。日本人の場合、大学卒業の23歳くらいで社会に出るのが一般的。ところが、オーストラリアでは28歳、スウェーデンは30歳といったように、海外は日本と比較すると遅いんです。インターンやボランティアを経験したり、その後また学校に戻ったり、多様な人生の送り方をしているからです。みんな一律に動いているのは、日本人だけ。これからはそういう一律志向を変えて、多様な働き方や価値観を認めていかないと労働市場の流動性は高まらないし、日本という国全体が伸びないのではないでしょうか。
アキレス:そういうマクロな話も、業界や個別企業で話し合っていることと全部つながっていると思いますね。流動性を高めるにはどうしたらいいかと、もう10年以上も言われ続けていますが、今すぐやらなくても「当面はなんとかなる」と多くの人が考えている。危機感がまだ弱い、ということでしょうか。
有賀:人の流動性が高まることで、社会全体が効率よくリソースを活用していけるといいと思います。ただ、いろいろやることでそれぞれが散漫になったり、企業や社会のクオリティが下がったりしてはいけません。
長:ただ、従来の価値観のままでは風穴は開かないのも確かですよね。たとえばITのすごい技術を持ったスタートアップ企業が、トラディショナルな大手にプレゼンに行くとします。その際の服装がとても奇抜なものだったら、昔なら相手にもされなかったでしょう。でも、これからはもっと本質的な価値で評価する時代になっていくと思います。日本企業も変わっていかなければいけません。ウーバーとか仮想通貨とか、これまでの常識をまったく覆すイノベーティブなものがどんどん生まれてきている時代です。労働力不足についても、新しい発想や価値観で考え続けていくことしか答はないと思います。
アキレス:日本の経営者や人事も手をこまぬいているわけではなく、認識は同じだと思います。ただ、その対応へのスピード感に関しては、海外との差が大きいかもしれない。ビジネスでは大胆な決断をしても、人に関しては慎重になりすぎているような気もします。
学生気質の変化にどう対応していくのか
流動性が大事という話が出ましたが、その一方で、新卒の学生には終身雇用を望む傾向がある、とも言われています。学生と接していて、何かお感じになることはありますか。
田中:学生は、はっきりと二つに分かれている気がします。「みんなと同じで楽」という文化に浸っている層と、まったく逆の考え方で、いろいろなことに取り組んでいる層の二つです。
有賀:基本的に、みんなまじめですよね。授業にもちゃんと出席しています。
田中:私たちが「まじめで良い子」を求めてきたからかもしれませんね。
山下:私の母校の私立大学で、数年前からESS(英語会)の就職アドバイス会をOB会が企画運営しており、私もその一人として参加しています。また、昨年は兼任講師として全学部横断的に実施しているリーダーシップのプログラムも持たせてもらいました。現役の学生とダイレクトに接して感じたのは、周囲の人の目を気にする傾向が強いことです。ESSでは、英語が得意な帰国子女の学生が「あの人はできる」と思われると周りから浮いてしまうと考えて、わざとたどたどしい英語を話していた、ということがありました。これにはがくぜんとしました。本当は流ちょうな英語でしゃべれる人なんです。しかも、その大学の学生だけではなく、複数の大学が集まるイベントでも、他校の英語ができる人たちができないように振る舞っていました。また、後れをとる人が出てはいけないということで、英語でディスカッションする前に日本語で自己紹介や事前交換をしていました。英語を学びたいという志でESSに入ってきた学生たちでさえ、そこまで周囲を気にしているということが大変気になりました。
髙倉:教育だけでなく、家庭にも原因があるのかもしれませんね。前職の企業では毎年200名くらい新卒を採用していましたが、年々幼くなる印象がありました。まず、自分が何をやりたいのかが明確ではない。あまりにも環境が整えられた中で育ってきたので、自分でチャンスをつかみ取る面白さや楽しさを知らないのではないかと思うほどです。
長:バブル崩壊後、不景気やデフレと一緒に育った世代なので、景気が悪いのが当然なんでしょうね。そういう環境でずっと過ごしてきたら、現在は久しぶりの好況が続いていますが、新しく何かを始めようなどと思わないのかもしれません。
山口:家庭というと、最近の学生は親御さんと相談して就職先を決める傾向がありますね。そのため、当社でも親御さんを対象とした会社説明会を昨年開催しました。今は親子仲良く、友達のような関係が増えています。それ自体は悪くないのですが、自分の就職先に関しては、自分で意思決定をすべきではないか、と不思議な気もします。
髙倉:最近は大学の入学式にも、親が出席するのが普通ですね。親離れするマインドを削いでいるのかもしれないと感じます。教育に物申すのはなかなか難しいのですが、企業と教育というシステムが一緒になってやっていかないと、日本は手遅れになるかもしれません。
有賀:企業のポリシーをあえてはっきり出すことも、大事かもしれませんね。弊社も「経営者をめざす人材以外は採らない」と打ち出したら、やはり相当とがった学生が来るようになりました。少なくとも企業ごとの違いはクリアになると思います。
早い段階からキャリアを考える機会をつくるべき
田中:これから入社してくるのは、いわば「働き方改革ネイティブ」世代。私たちは長時間労働も経験して、働き方改革に至るプロセスを知っていますが、そのお膳立てができたところで入ってきた人たちは感覚がまったく違うはずです。会社は相当心してかからないといけないと思います。
髙倉:その危機感は大変よくわかります。働き方改革を「早く帰れる」とか「自由な時間を満喫」という面だけでとらえられてしまうと、日本の労働のクオリティや経済力まで落ちこんでしまう可能性があります。だから今、同時に「それだけじゃないんだ、あなたは何をやりたいのか」という自立的なキャリアプランを重視する動きもとっています。ただ、そこで問題になるのが日本企業特有の「定期異動」。自分にやりたいことがあっても、会社都合の定期異動があれば、もう叶わない。やりたい仕事をたずねられても「それは会社が決めることだから」というマインドになってしまうんですね。
有賀:当社では異動は原則として「手あげ」にしています。自分から売り込んでいけと。
アキレス:当社は、グローバルな社内公募ポジションが常時1000以上ある状態。社員自らが手をあげて、インタビューを受け、合格すれば異動になります。
川野:当社もジョブポスティング制度を導入しています。社員がオープンポジションに応募し希望のブランド・職種に異動できる仕組みです。ただ、必ずしも皆が手をあげるわけではありません。そこで、会社として多様な経験を積むことでその人の能力アップになる、と考える人材については、マネジメント間で情報を共有しておいて、ポジションが空いたときに社員に提示していくことも並行して行おうとしています。
髙倉:すごく大事なことですね。優秀な人材はえてしてマネジャーが自分の部門に抱えたがるものですが、情報を見える化し、同じテーブルにあげておくことで能力開発が加速することもあると思います。
有賀:ポテンシャルがある人をどう育成するかというのは、おそらくすべての企業が行っていることでしょう。むしろ、伝統的な日本企業における慣行としての定期異動の問題点は、能力を発揮できてない人をどこに当てはめるかという負債管理のような作業になっていることではないでしょうか。
髙倉:まさにそうですね。ミドル以上のゼネラルマネジャーとして育成してきた人材などがそれに当たります。社内特化型のスキルなので、外部の企業に受け入れられるかというと、それも限界があります。
アキレス:若い頃から自分がどういうキャリアでどんなスキルを身につけていくべきなのか考える機会をもち、20代・30代・40代のキャリアの節目で見直していくことでしょうね。特に転職経験のない人の場合、一定の年齢以上になって外部ネットワークも何もないところから始めるのは、かなり大変なこと。変わっていく世の中に自分のスキルがマッチしているのかどうかを自ら考え、磨き直す。企業もそれをサポートすることが求められるのではないでしょうか。
有賀:早い段階での降格も、人事としては取り組むべきことの一つでしょうね。会社への貢献度に応じてポジションや給与が決まるわけですから、今のあなたはこうなんですよ、と気づかせてあげることも必要です。もちろん、敗者復活もありうるという前提で。
長:そういう人材の流動化もありだと思います。天下りのようにポジションを引きずったまま行くのは良くありませんが。社内に能力を生かせる仕事がなかった人材が、子会社に行ったらその経験や知識をすごく生かすことができた、というケースがたくさんあります。適材適所を実現できるような仕組みをつくることが大事ですね。
今回は、大変広がりのある話を聞くことができました。皆さん、まだまだ語り足りないこともあるかと思いますが、この続きは次回以降の「人事リーダー会」で語り合っていただきたいと思います。本日はお忙しいところ、誠にありがとうございました。
■出席者プロフィール
アキレス美知子さん
SAPジャパン株式会社 バイスプレジデント 人事戦略担当
富士ゼロックス総合教育研究所で異文化コミュニケーションのコンサルタントとしてキャリアを開始し、シティバンク銀行、モルガンスタンレー証券、メリルリンチ証券、住友スリーエムで人事・人材開発の要職を歴任。 あおぞら銀行常務執行役員人事担当、資生堂執行役員広報・CSR・環境企画・お客様センター・風土改革担当を経て2015年1月に SAP ジャパン常務執行役員人事本部長に、2017年10月より同社人事戦略担当バイスプレジデントに就任。SAP 社外においても、横浜市政策局男女共同参画推進担当参与、日本生産性本部女性パワーアップ会議推進委員、NPO 法人GEWELアドバイザリーボード・チェアなど幅広く活動。また、2010年から3年連続で「APEC 女性と経済フォーラム」に日本代表メンバーとして参加。2017年世界女性サミット東京大会では、日本実行委員会コアメンバーおよびスピーカーを務める。 米国ダイバーシティ・グローバル誌より「2017年度グローバルダイバーシティにおいて最も影響力のある女性10人」にもアジアから唯一選出されている。共著に『メンタリングハンドブック』(日本生産性本部)、『人事よ、ススメ!』(中央経済社)、『世界最強人事』(幻冬舎)などがある。
有賀 誠さん
株式会社ミスミグループ本社 グループ統括執行役員 人材開発統括
1981年、日本鋼管(現JFE)入社。製鉄所生産管理、米国事業、本社経営企画管理等に携わる。1997年、日本ゼネラル・モーターズ人事部マネージャー。部品部門であったデルファイの分社独立を遂行し、その日本法人を立ち上げる。その後、日本デルファイ取締役副社長兼デルファイ/アジア・パシフィック人事本部長。アジア域内での職務制度の統合を行う。2003年、ダイムラークライスラー傘下の三菱自動車にて常務執行役員人事本部長。グローバル人事制度の構築および次世代リーダー育成プログラムを手がける。2005年、ユニクロ執行役員(生産およびデザイン担当)を経て、2006年、エディー・バウアー・ジャパン代表取締役社長に就任。ブランド構築、店舗網拡大、インターネット事業強化に取り組む。その後、人事分野の業務に戻ることを決意。2009年、日本IBM人事部門理事、2010年、日本ヒューレット・パッカード取締役執行役員人事統括本部長を経て、2016年より現職。1981年、北海道大学法学部卒。1993年、ミシガン大学経営大学院(MBA)卒。
大内 裕さん
協和発酵キリン株式会社 常務執行役員 人事部長
1980年旧協和発酵工業株式会社に入社。工場人事、海外工場建設関連業務・輸出業務を経験後、1987年より営業業務で7年間ドイツDusseldorfに駐在。2001年より米国NewYork事務所でEVPとして営業統括、2005年よりDusseldorfとMilanoの事務所の社長を兼務。その後2008年に帰国し当時の協和発酵工業 バイオケミカル事業部門ファインケミカル営業部長に就任し翌年2009年協和発酵バイオ(株)取締役営業本部長に就任。2012年3月から協和発酵キリンの常務執行役員 人事部長に就任して今日に至る。
川野 多恵子さん
リシュモン ジャパン株式会社 人事本部 本部長
1992年慶應義塾大学卒業、2000年マギル大学MBA取得。日本コーンフェリーインターナショナルにてコンサルタントとして人材ビジネスに従事したのち、ゴールドマン・サックス人事部ヴァイスプレジデント、メリルリンチ日本証券人事部ヴァイスプレジデント、ステートストリート信託銀行にて人事担当取締役等を経て2015年よりリシュモンジャパン人事本部本部長。社内外の変革に対応する人事制度の構築、グローバルとの協働体制づくりなどに注力している。
髙倉 千春さん
味の素株式会社 理事 グローバル人事部 次長
1983年、農林水産省入省。1990年にフルブライト奨学生として米国Georgetown 大学へ留学し、MBAを取得。1993年からはコンサルティング会社にて、組織再編、新規事業実施などにともなう組織構築、人材開発などに関するコンサルティングを担当。その後、人事に転じ、1999年ファイザー株式会社、2004年日本べクトン・ディキンソン株式会社、2006年ノバルティスファーマ株式会社の人事部長を歴任。2014年7月に味の素株式会社へ入社し、2017年7月から現職。味の素グローバル戦略推進に向けた、グローバル人事制度の構築と実施をリードしている。
田中 潤さん
株式会社ぐるなび 上席執行役員 管理本部 人事部門長
1985年一橋大学社会学部出身。日清製粉株式会社で人事・営業の業務を経験した後、現在は株式会社ぐるなび上席執行役員人事部門長。障害者特例子会社である株式会社ぐるなびサポートアソシエの取締役社長も兼任。経営学習研究所(MALL)理事、GCDFキャリアカウンセラー、キャリアデザイン学会理事。にっぽんお好み焼き協会理事。
長 敦子さん
日本マクドナルド株式会社 執行役員 人事本部長
1995年に南カリフォルニア大学院を修了し、KPMG Los Angeles、KPMGグローバルソリューションに入社。2000年タワーズ・ペリン(現:ウイリス・タワーズワトソン)入社。日本で外資系企業・日系企業の人事コンサルティングに着手。2003年ボーダフォン(現:ソフトバンク)に入社して人事企画を行う。2007年から西友で人財部 シニアダイレクター、人事本部 上席部長を務めた後、2013年4月にマクドナルド入社。2015年7月より現職。
山口 恭子さん
株式会社ローソン 人事本部 人事企画 部長
1993年4月新卒で入社。店舗勤務後本社に異動。約1年の産休・育児休職取得後2001年復職し人事業務に従事。2012年から女性・外国籍社員・障がい者を中心としたダイバーシティ推進などを担当し、事業所内保育施設・障がい者雇用の特例子会社などを設立。2015年より人事本部 人事企画部長。特例子会社(株)ローソンウィルの取締役も兼任。なでしこ銘柄4年連続選定。
山下 茂樹さん
武田薬品工業株式会社 グローバルHR 人材開発・組織開発(日本)ヘッド
1985年立教大学社会学部卒業。キヤノン、モービル石油(現エクソンモービル)にてセールス&マーケティング業務に従事。1998年よりGE横河メディカルシステム(GEYMS)でサービスマーケティングマネジャーとして画像診断装置のサービスビジネスに従事。2000年南カリフォルニア大学MBA取得を節目に、キヤリアをセールス&マーケティングから人事、人材開発に転換。GEYMS、メリルリンチHRリーダーシッププログラムを経て、2002年より、日本イーライリリーにおいて幅広い事業領域でのHRビジネスパートナー及び人材開発、組織開発、社内広報を歴任。シーメンスでのHRビジネスパートナーを経て、2012年より、MSDにて次世代リーダーの採用、育成、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、後継者育成計画等のタレントマネジメント業務を歴任。2017年7月より現職。MBTI認定ユーザー(2007)、CTI認定コーアクティブコーチ(2012)、立教大学GLP兼任講師(2017)