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掲載:2023.10.13

HRコンソーシアムレポート

2023年9月8日開催「HRコンソーシアム」全体交流会レポート
いま、人事パーソンに求められる「リスキリング」とは
何を学び、どのように行動するのか

秋田 夏実氏(株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行役 グループCPO兼グループCCuO)
羽田 幸広氏(株式会社LIFULL 執行役員 Chief People Officer)
松尾 睦氏(青山学院大学 経営学部 経営学科 教授)

2023年9月8日開催「HRコンソーシアム」全体交流会レポート

技術やビジネスモデルが劇的に変化し続ける現代社会。その流れにいち早くキャッチアップしていくために、「リスキリング」の重要性が叫ばれている。政府では官民を挙げて、リスキリングを推進しており、意欲的に取り組む企業も多い。社内への導入・浸透の旗振り役となるのは人事パーソンだが、まずは、人事パーソン自らがモデルケースとなることが期待される。そこで今回の「HRコンソーシアム」全体交流会では、いま注目を集めている二人の人事リーダーが実践している学びの事例をもとに、人事パーソンに必要な「リスキリング」について議論した。

プロフィール
秋田 夏実氏(あきた なつみ)
株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行役 グループCPO兼グループCCuO

米アドビの日本法人副社長、マスターカードの⽇本地区副社長などを歴任し、昨年5月に〈みずほ〉に入社。グループ全体のカルチャー改革、ブランドマネジメント、組織開発、人材開発、多様な人材の活躍の推進等に取組む。東京⼤学⼤学院総合文化研究科・教養学部運営諮問会議委員、情報経営イノベーション専⾨職⼤学(iU)客員教授。東京大学経済学部卒業。米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。

羽田 幸広氏(はだ ゆきひろ)
株式会社LIFULL 執行役員 Chief People Officer

人材関連企業を経て2005年にネクスト(現LIFULL)入社。人事責任者として人事部を立ち上げ、企業文化、採用、人材育成、人事制度の基礎づくりに尽力。「日本一働きたい会社プロジェクト」を推進し、「ベストモチベーションカンパニーアワード」1位を獲得。著書に『日本一働きたい会社のつくりかた』。

松尾 睦氏
青山学院大学 経営学部 経営学科 教授

1988年小樽商科大学商学部卒業。92年北海道大学大学院文学研究科(行動科学専攻)修士課程修了。99年東京工業大学大学院社会理工学研究科(人間行動システム専攻)博士課程修了。博士(学術)。2004年英国ランカスター大学にてPh.D. (Management Learning)取得。神戸大学大学院経営学研究科教授、北海道大学大学院経済学研究院教授などを経て、2023年4月より現職。著書に『部下の強みを引き出す 経験学習リーダーシップ』(「HRアワード2020」書籍部門 入賞)など。

青山学院大学 松尾氏による問題提起:
アンラーニングから考えるリスキリングとアップスキリング

松尾氏はまず、アンラーニングを以下の通り定義づけた。

「アンラーニングとは、古い信念や仕事の進め方を棄却し、新しい信念や仕事の進め方を獲得することです。知識やスキルを入れ替え、組み替えて、より効果が高いものにアップデートしていくのがアンラーニングです」

次に松尾氏は、「経験学習サイクル」と「アンラーニング」の関係性を解き明かした。

「経験して振り返り、教訓を引き出して応用する。このサイクルを回す上で大切なのが、深く内省し、教訓をアップデートすることです。つまり、経験を振り返る中で、何を残して、何を捨てるのかを見極めることがアンラーニングにおいて重要です」

個人のアンラーニングには三つのパターンがあると松尾氏は言う。一つ目は、自己完結的な働き方からネットワーク志向の働き方へのアップデート。二つ目は、保守的な働き方から顧客志向の働き方へのアップデート。三つ目は、定型的・受動的な働き方から革新的・能動的な働き方へのアップデートだ。

個人のアンラーニングの3パターン

「では、何をきっかけにアンラーニングが起こるのでしょうか。調査したところ、アンラーニングのきっかけは、昇進や異動などの状況変化が71.3%、他者からの影響が18.9%、研修・書籍などが9.8%でした。この結果は70:20:10の法則と適合しています。状況・個人・他者という三つの刺激が深い内省につながり、アンラーニングが起こるわけです」

ここで松尾氏は、「アップスキリング」について触れた。

「『リスキリング』は、異なる仕事・職務に必要なスキルを獲得すること。一方『アップスキリング』は、今と同じ仕事・職務においてよりレベルの高いスキルを獲得することです。いずれにおいても、自分の仕事の信念や進め方を見直すアンラーニングが欠かせません」

松尾氏はリスキリングとアップスキリングの事例をいくつか紹介し、最後にポイントを整理した。

「大切なのは次の三点です。一つ目は、自分の仕事の型を振り返り、アップデートすること。二つ目は、自身の強みや経験を活かすこと。そして、三つ目は、ロールモデルから学ぶことです。

羽田さんは20年近く人事を担当し、アップスキリングされてきました。秋田さんは昨年、マーケティングから人事へと移られたので、リスキリングに関するお話が聞けるのではないでしょうか」

LIFULL 羽田氏によるプレゼンテーション:
やりたいことを見つけて学んでいくスタイルを貫く

LIFULLは、不動産情報事業を主軸とする企業だ。また、働きがいのある会社として社内外から高い評価を得ている。羽田氏は2005年に入社。以来、人事としての仕事をアップスキリングし続けてきている。

「人事は未経験だったので、目の前の仕事をこなすために学びました。ただ、最初は網羅的に理解し戦略的に学ぶことができませんでした。このままではいけないと感じ、経営理念や経営目標から逆算して施策を立案できるよう、人事領域をはじめとして、さまざまなビジネス領域の知識をインプットしていきました」

羽田氏はそれらの知識を、書籍と人から学んだ。特に人に関しては、幅広いジャンルの人たちと自ら接点を持ち、仲良くなった上でいろいろなことを学ばせてもらったという。

「自分のやりたいことについて足りないものがあれば、学ぶようにしています。アンラーニングでいうと、『そもそも何のためにやっているのか』などと、自問自答を繰り返しています。また、本を読むときは一文ずつ自分の仕事や会社にあてはめてみて、そこからゼロベースで考えたりします。

あとは、タイムリーとタイムレスですね。人事は流行語がかなり出てきます。その都度『これは本質的なことなのか』と、自らに問いかけています。本当に自身がやるべきこと、やりたいことを見つけて学ぶ。それが私の学び方です」

みずほフィナンシャルグループ 秋田氏によるプレゼンテーション:
人事パーソンに求められる「リスキリング」とは

みずほフィナンシャルグループは、日本を代表する大手金融グループだ。秋田氏は、同社に2022年に入社。現在は、CPO(Chief People Officer)兼CCuO(Chief Culture Officer)として、グループ全体の組織開発や人材開発、多様な人材の活躍推進、カルチャー改革、ブランド価値の向上などを担っている。

「これまでのキャリアを振り返ると、決して平坦な道のりではありませんでした。とにかく、変化に対応することで生き抜いてきました。そんななかで常に意識したのは、“What can only I do?”(私だからできることは何か?)です」

自分のスキルを固め、補っていく中で、秋田氏が重要だと感じたのは「まずは自分を知ること」だという。

「自分の資質、強みがわかったら、それと相性の良いスキルを磨き、タグを増やしていくというのが、成長のための一つのアプローチです。また、興味のあることをとにかく学んでみることも大事です」

さらに、秋田氏が取り上げたのが「Bモード」「Dモード」の概念だ。「B」は「Being=あるがまま」で、好きでやりたいから働くこと。「D」は「Deficit=不足・欠乏」で、生活のために義務でいやいやながら働くこと。後者は、組織の中に絶対に作ってはいけないものだ。

「私自身の仕事と学びの変遷を振り返ってみると、自分が好んでというよりも頼まれたタスクを『まずはやってみよう』という姿勢を貫いてきました。もちろん、自分に足りないものもたくさんあったので、かなりリスキリングやアップスキリングを繰り返してきたと思います。

最後に、学びを進める上でのポイントを述べたいと思います。それは、『思考は移動距離に比例する』ということ。オフィスの外に出て、現場で自分の目で見て話を聞くこと、また、組織の外とも積極的につながって知見を得ることが大事です」

ディスカッション:
社員の心にいかに火を点けるか

松尾:秋田さんは長くマーケティングに携わってきた後、人事に来られたわけですが、秋田さんだからできる人事を一言で表すとどうなりますか。

秋田:右脳と左脳のアプローチだと思います。人事はとても左脳的でロジカルです。筋がきちんと通っていて、会社目線のコミュニケーションを堅実に行います。一方で現在は、社員の目線に寄り添っていくことも重要です。そうなると、左脳的なアプローチだけではなく、右脳的なアプローチも必要になってきます。ワクワクしてもらうためのコミュニケーションや仕掛けを絡ませることですね。これは、マーケティング的なアプローチだと思います。

松尾:マーケティングでは、従業員を内部顧客と位置づけています。内なるお客さまをワクワクさせるためには何が大事なのでしょうか。

秋田:経営や人事だけで何かを進めるのではなく、社員を巻き込むことです。そのためには、社員がどんな問題意識を持っていて何に満たされていないのかをしっかりと理解しなければいけません。社員のナラティブを大切にし、会社の未来をともに創っていこうという思いを育むことが必要です。

松尾:羽田さんは幅広いジャンルの人たちと自ら接点をつくりにいくとおっしゃっていましたが、いろいろな人と仲間になるコツを教えてください。

羽田:同じテーマに興味を持っている人だと、そこから話が広がります。自分が興味を持ったこと、自分が聞きたいことを、その人に対して突っ込んで聞くようにしています。

秋田:私は、この人は私にないものを持っていると思ったら、ストレートに「教えてほしい」と言います。会うことがわかっていたら、事前にその人のことを徹底的に勉強します。そうすると、良い問いが出せるからです。また、問いへの答えをしっかりと聞き、今後のアクションに活かすようにしています。

羽田:秋田さんは昨年、大きなキャリアチェンジをされましたが、どういうお気持ちでしたか。

秋田:自分が持っているもので貢献できると思いました。人事もマーケティングも、相手にしているのは人です。マーケティングの目線だからこそ、今の人事に付加価値を与えられると感じました。また、私のキャリアのスタートが金融業界だったので、勝手を知っているということも大きいですね。

羽田さんがこれから先のキャリアの中で成し遂げたいことを、お聞かせいただけますか。

羽田:まずは、引き続き良いチームを作っていきたいですね。また、自分たちがやってきたことをしっかりと発信することで、皆さんのお役に立てればと思います。ウェルビーイングに関する活動にも力を入れていきます。

グループディスカッション~まとめ

質疑応答をはさんで、参加者によるグループディスカッションが行われた。テーマは「今日のセッションで印象に残ったこと、参考になったことは何か。また、自分自身はどのようにリスキリングを行うのか」。終了後は一部のグループが、話し合った内容を発表した。

(Aグループ)
私たちのグループには、転職を新たな学びにつなげている方がいました。重要なこととして共通していたのは、外に出ることです。交流会などに参加して刺激を受け、勉強することが大事だと思います。

(Bグループ)
転職したら今まで当たり前だと思っていたことが全く通用しなかったので、リスキリングをしなければならなかった、という話が印象に残りました。人事といっても、企業によってさまざまであることをあらためて感じました。

松尾:今日のセッションを振り返って、一言ずつお願いします。

羽田:当社は、何がやりたいのかを大事にしています。それがなければ、学ぶ意欲もわいてからです。ある人が興味を持ったもの、やりたいと思ったことを掘り起こして、それをどんどん大きくしてあげることが、人事にとって大切だと思います。内発的動機付けによって、どんどん学んでほしいと思いました。

秋田:一人で学ぶのは難しい場合もあります。そんなときに必要なのは一緒に学ぶこと、組織で学びあうことです。そういうラーニング・カルチャーの醸成が必要でしょう。そのための一つのアプローチとして、社員それぞれが持っているスキルや知識、ノウハウを、希望する社員に教えることを促すような取り組みを始めてみてはどうでしょうか。それが会社の中で学び合うカルチャーになっていくと思います。

松尾:何か新しいことを行うには、まず実験をしてみなければいけません。そこでうまくいったなら、組織へ広げていきます。人事の皆さんご自身がワクワクしながらアンラーニングして、アップスキリングやリスキリングに取り組んでみてください。「これなら皆が動いてくれるのではないか」というものを作り出し、そこから広げていくことが重要だと思います。本日はありがとうございました。