鈴木 典比古氏からのメッセージ
私はアメリカのビジネススクールで「国際ビジネス」「マーケティング」「人的資源管理」等の講義を10年間担当していましたが、「人的資源管理」の授業の中では、日米の人的資源管理に関する比較を行なっていました。
日本企業では今でも「年功序列」「終身雇用」の雇用形態が主流です。人事部は、社員が数十年にわたって一つの企業に勤務することを前提に、複数の部門を経験して昇進していく「ジェネラリスト指向」人事を続けてきました。そのため日本企業では、従業員のエキスパティーズ(専門分野)に基づくスペシャリスト・キャリアパスを構築する、という考え方ができていません。
企業がグローバル化することは、企業内に外国籍社員が入ってくるということでもあります。日本企業がこれまでのような対外閉鎖型(クローズドシステム)を前提とした人事制度を維持しているようでは、人的資源の国際流動化の観点からも、グローバル化には限界があると言っていいでしょう。
生産拠点である子会社群はグローバル化に対応できているのに、本社だけがグローバル化から取り残されている――。本社人事制度がクローズドシステムから脱却できなければ、「企業人事のガラパゴス化」が序々に生じる可能性があります。人事の皆さんには、グローバルな視点を持ち、時代の潮流を見極めながら、人材の採用・育成・管理を行ってほしいと思います。