佐々木 丈士氏からのメッセージ
実は、コロナ以前からいわゆるDX (Digital Transformation) の取り上げられ方にモヤモヤしていました。「それって(D)デジタル化かもしれないけど、何を(X)トランスフォームするの?」と。ツールやサービスはたくさんあります。一方企業はそれを導入して何を変革しようとしているのか、それがプロセス効率化以上の本質的変革なのか、がスッキリしなかったのです。
コロナ禍になり、このモヤモヤはある意味期待感に変わりました。リモートワーク、ジョブ型雇用の検討、転勤制度の見直しなど、これまでのさまざまな前提が変わり、おそらく経営陣のマインドもよりオープンになり、より本質的な議論をする絶好の機会が訪れていると感じたからです。
何を根本的に考えたら良いのか、をよく自問自答します。
- 1)「社員は共感しているのか」
- 社員エンゲージメントの一つの理想形は、共感ではないかと思います。その企業が持っている理念、そこから派生する価値観、それらが体現されているサービスや製品、それらがもたらす社会的価値などに、社員が強い共感を持っている状態です。「ウチの会社の何が好き?」と聞いたときに、雇用の安定性や給与福利厚生ではない答えが出る状態です。社員の企業に対する本質的な共感は、ある時点での雇用安定性や給与の高さよりもはるかに競合優位性を持つと思います。
- 2)「社員はワクワクしているのか」
- 急速に消費者ニーズの多様化が進み、企業はさまざまな手法でのマーケティングを試みています。社員が求める就業経験も急速に多様化しているはずです。でも、企業はこの多様化するニーズに充分なスピードで対応できているのかと疑問に思います。会社の持つ理念、価値観を反映した上で、柔軟に社員個々の体験を最適化する施策が必要であると思います。「なんかワクワクしている社員が多い」状態ですね。
- 3)「人事は語れているか」
- 人事の重要なミッションの一つは上記の「共感」と「ワクワク」を加速させることなんじゃないかと思います。そのためには制度設計も重要ですが、まずは人事担当者が共感とワクワクを持たないと。そして自分の言葉で自分の体験を語り、リーダーにも語らせる仕掛けをし、制度にもストーリーを持たせることができたら、社員のエンゲージメントはもっと高まると思います。