楠木 建氏からのメッセージ
大切なのは、「経営者」と「担当者」との区別である。ここでいう「経営者」は役職やタイトルの問題ではない。仕事に対する構えの問題だ。社長や役員でなくとも、「商売丸ごと動かして稼ぐ」を自分の仕事としている人、それが経営者だ。
担当者の仕事は「ここからここまで」と範囲が決まっている。必要なのはその仕事に必要なスキルだ。しかし、いくらスキルを磨いても、その延長線上で経営者になれるわけではない。経営者の仕事に範囲も分野もない。担当がないのが経営者だ。
経営者にはセンスとしか言いようがないものが求められる。スキルは育てられるが、センスは育てられない。育てるための体系的な方法がないのがセンスだ。経営者としてのセンスは学んで身につくものではない。ここに難しさがある。
だとしたら経営には何ができるのか。その第一歩は、組織の中で「センスがある人」を見極めるということだ。センスがあるのが誰かを見極め、その人にある商売を丸ごとを任せる。見極めがついていると、好循環が生まれる。センスがあるとはどういうことか、周りの人にも自然とその輪郭が見えてくる。一人ひとりが自分の潜在的なセンスに気づき、センスが育つ可能性が増す。
スキルの育成や評価が重要なのは言うまでもないが、どこでもやっていることだ。本当に価値があるのは、センスの見極めができる人事部だと思う。