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八木 洋介氏
株式会社people first 代表取締役 / 株式会社ICMG 取締役
やぎ・ようすけ/1955年京都府生まれ。1980年京都大学経済学部卒業後、日本鋼管株式会社に入社。主に人事などを担当した後、National Steelに出向し、CEOを補佐。1999年にGEに入社し、Healthcare Asia、Money Asia、GE Japanにおいて人事責任者などを歴任。2012年に株式会社LIXILグループ 執行役副社長 兼 株式会社LIXIL 取締役副社長執行役員に就任。CHRO(最高人事責任者)を務め、同社の変革を実践。グローバル化、リーダーの育成、ダイバーシティの促進など、戦略的人事を推進した。2017年に独立し、現職。著書に『戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ』(光文社新書、共著)がある。

八木 洋介氏からのメッセージ

今この時代の人事

「人事ってマフィアみたいですね」―― 後輩の一人が若かった私に投げた言葉だ。疑問を持たずに人事の仕事をしていた私がハッとした一瞬だ。

人事と聞いて普通の人が連想するのは、権威と権限があって、規律重視で人の評価やキャリアを牛耳っている部署、継続性や制度を重視することで過去を守り、抵抗勢力になりがちな部署。実態は必ずしもそうではないかもしれないが、周囲の受け止め方は人事とは「代表的管理部門」だろう。一方で、今は変化の時代だ。また、人材とは会社の差別化の源泉だ。

そんな時代の人事に期待される役割は、“Change Agent”。人の変化が必要な時代だからこそ、人の仕事をしている人事が真っ先に変化しなければならないし、変化を引き起こさなければならない。変化のためには過去へのこだわりを捨て、フレキシブルにシンプルに前向きに仕組みをつくり、変化を仕掛けていかなければならない。

人で差別化するには、人の活力をどう引き出すかが鍵だ。そのためには理不尽を排除し、当たり前を当たり前に、正しいことを正しく行うことだ。人事の常識が社員の非常識になっていることが多い。そのことを廃し、社員が生き生きと働くことができる場をつくることこそ、人を任されている人事の一番の仕事であり、他社と差別化して経営に資する正道だ。

人事の課題の多くは、長年にわたって課題であり続けている。年功的人事、リーダーの育成、グローバル化、ダイバーシティ等々。アイデアはある。過去を捨て、管理・規律志向ではなく、変革と活力のため、勇気を持って行動を起こすことが、いま人事に最も求められている。