八木 洋介氏からのメッセージ
今この時代の人事
「人事ってマフィアみたいですね」―― 後輩の一人が若かった私に投げた言葉だ。疑問を持たずに人事の仕事をしていた私がハッとした一瞬だ。
人事と聞いて普通の人が連想するのは、権威と権限があって、規律重視で人の評価やキャリアを牛耳っている部署、継続性や制度を重視することで過去を守り、抵抗勢力になりがちな部署。実態は必ずしもそうではないかもしれないが、周囲の受け止め方は人事とは「代表的管理部門」だろう。一方で、今は変化の時代だ。また、人材とは会社の差別化の源泉だ。
そんな時代の人事に期待される役割は、“Change Agent”。人の変化が必要な時代だからこそ、人の仕事をしている人事が真っ先に変化しなければならないし、変化を引き起こさなければならない。変化のためには過去へのこだわりを捨て、フレキシブルにシンプルに前向きに仕組みをつくり、変化を仕掛けていかなければならない。
人で差別化するには、人の活力をどう引き出すかが鍵だ。そのためには理不尽を排除し、当たり前を当たり前に、正しいことを正しく行うことだ。人事の常識が社員の非常識になっていることが多い。そのことを廃し、社員が生き生きと働くことができる場をつくることこそ、人を任されている人事の一番の仕事であり、他社と差別化して経営に資する正道だ。
人事の課題の多くは、長年にわたって課題であり続けている。年功的人事、リーダーの育成、グローバル化、ダイバーシティ等々。アイデアはある。過去を捨て、管理・規律志向ではなく、変革と活力のため、勇気を持って行動を起こすことが、いま人事に最も求められている。