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【ヨミ】ジコカイジ

自己開示

「自己開示」とは、他者にありのままの自分をさらけ出すこと。自分の強みだけでなく、悩みや弱点なども含めて開示することをいいます。英語では「Self-disclosure」といい、1970年代に心理学者で精神医学者のシドニー・M・ジュラード氏によって提唱されました。人と人とが相互理解を深め、信頼のおける人間関係を築く上で、自己開示は欠かせない要素とされています。

ケーススタディ

自己開示と自己呈示
似て非なる“自分の話”

初対面の人と会ったとき、あなたはどのような話をしますか。自分の仕事や会社のこと、あるいは趣味や家族のことでしょうか。最近はオンラインでの打ち合わせも増え、関係を深めることが難しくなってきていますが、人との距離を縮めるのに「自己開示」は効果的です。自分のことを話すという行為は、相手への信頼が前提にあります。自己開示により相手への尊重や親しみが積み重なっていき、信頼関係ができあがっていくのです。

自己開示と似た概念に「自己呈示」という言葉もあります。これらは一見同じように思えますが、良好な人間関係を築くためには違いを知っておくことが大切です。自己開示は英語で「Self-disclosure」といい、Discloseは日本語で「開示する」「明らかにする」と訳されます。包み隠さず、何でもオープンにするイメージです。

一方、自己呈示は英語で「Self-presentation」といいます。Presentation(プレゼンテーション)という言葉からもわかる通り、自己呈示にはどのような情報を公開するかを選び、自分をよりよく見せるために印象操作をするというニュアンスがあります。ビジネスにおいても、仕事相手から有能だと思われたい、必要とされたいという気持ちから、いつもより雄弁に語ったり物事を大げさに話したりすることもあるでしょう。

自己呈示が悪いわけではありません。しかし、使い方によっては、誠実ではない印象を与えてしまう恐れもあります。自分を大きく見せようとする行為に対して受け手は敏感で、「この人は本当のことを言っていない(=開示が行われていない)」ととらえられかねません。

自分にとって都合の良い情報だけでなく、悩みや弱点を含めたありのままの自分を開示することが信頼関係を築きます。こちらの自己開示に反応して、相手も自分のことを打ち明ける行為を「自己開示の返報性」といい、個人的な話を交換し合うことで関係構築の相乗効果が期待することができます。

ただし、誰もが相手の個人的な話を聞きたいわけではありません。一方的な自己開示は逆効果になってしまうため、相手の反応に注意しながら活用する必要があります。

企画・編集:『日本の人事部』編集部