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プロフェッショナルコラム

「キャリア選択における大事なこと」

ある人材サービス会社が新卒社会人向けに実施した調査結果では「新卒入社時にひとつの企業で働き続けたいか」という質問に、平成元年は約7割がイエスと答えたのに対し、平成30年度は約5割という結果であった。また、トヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用の維持は難しい」と発言しており、従来の新卒で入社した会社で一生働くことが一般的であった日本型雇用が崩れ、人生100年時代とも言われる時代に向け、働き方が大きな転換期を迎えている。

そんな中、今の会社に居続けていいのか、今の仕事が適職なのかと不安になり、実際にキャリアの節目で転職を考えたという話はよく聞く。また、転職を考えているが「何をしたいのかわからない」とキャリアの停滞期に直面し、悩んでいる人(特に社会人経験の少ない20代)もいるだろう。

では、そのような人たちがキャリアの節目に立った時に失敗しない選択をするにはどうすればいいのか。今回のコラムでは、キャリア選択(転職)する際の不安感を払拭し、より自分らしく生きるために大事な考え方の一つを紹介する。

それは「何をしたいか」ではなく、「何を大切にしたいのか」「どのように働きたいのか」自分の譲れない価値観を知ること。つまり、『キャリア軸の設定』である。

これがキャリア選択(転職)においては最初のステップとなる。

キャリアの節目で自己分析をする機会があるが、『キャリア軸の設定』をおろそかにすると失敗する。実際に筆者も「どのように働きたいか」という視点が抜けており、会社選びに失敗した経験がある。

『働くひとのためのキャリアデザイン』の著書である金井壽宏教授も「問題は、その仕事が長期的に本人にもたらす意味や価値だ。それが感じられないとどんなに得意で好きなことでも、いつか空しくなるし、それでいいのかと自問するようになるはずだ」と述べている。

では、どのように自身のキャリア軸を考えたら良いか。

キャリア軸の設定のための自己分析法として『キャリア・アンカー』というものがある。キャリア理論の一つで、マサチューセッツ工科大学の名誉教授エドガー・H・シャイン博士が提唱している。キャリアを選択する際に自分のキャリアにおいて最も大切で、これだけは譲れないという価値観や欲求のことをいう。アンカーとは船の“錨”を指し、キャリア人生の舵取りの拠り所を示すものである。仕事や様々な経験の積み重ねで形成されるため、20代で社会人経験が少ないうちは不明瞭であるが、一度形成されると変化しにくく、生涯にわたってその人の重要な意思決定に影響を与え続けると言われている。

キャリア・アンカーは次の8種類に分類される。
1.技術・専門能力
2.管理能力
3.自律・独立
4.保障・安定
5.起業家的創造性
6.奉仕・社会貢献
7.純粋な挑戦
8.生活スタイル

キャリア・アンカーチェックシートなどの便利ツールを活用し、自身がどのタイプなのか、価値観の軸を認識し、キャリアを考える土台にしてほしい。8つのタイプは個々の価値観に基づく自己概念(セルフイメージ)であり、良し悪しを見るものではなく、特定の業種や職種に結びつくわけでもない。

大事なことは、表面的な業種・職種のイメージや周囲に惑わされず、自分のキャリア・アンカーに適した仕事は何かを追求することにある。

転職をする・しないに関わらず、キャリアの節目に立ち悩んでいる人は、まずは自身を見つめ直し、キャリア・アンカーを認識してほしい。その結果を職場のメンバーや上司と共有し、自己啓発や今後のキャリアデザインに繋げる。転職エージェントやキャリアコンサルタントに相談してみてもいい。より良いキャリア選択の一つの手がかりとして、キャリアの拠り所として是非活用し、より自分らしい生き方を実現していってほしい。

以上


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コラム執筆者
寺元 志帆
寺元 志帆(テラモト シホ)
株式会社タナベ経営 戦略総合研究所 人材開発
企業において最も大切な人的資源。新入社員から社長までを育成出来るセミナーにより、組織における人材育成・組織活性化をサポートします。
戦略総合研究所の人材開発専門スタッフとして、人材・組織開発分野における研究や、組織ナレッジを集約・分析し、階層別セミナーの企画・リニューアル・品質管理・運営を通じて社会に還元します。
得意分野 モチベーション・組織活性化、キャリア開発、リーダーシップ、コーチング・ファシリテーション、ビジネスマナー・基礎
対応エリア 全国
所在地 大阪市淀川区

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