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プロフェッショナルコラム

『プラダを着た悪魔』に学ぶ、組織への染まり方 (1)

アン・ハサウェイと映画界の大御所女優メリル・ストリープが主演し、大きな反響を呼んだ映画『プラダを着た悪魔』。メリル・ストリープが演じるのは、社内で「恐怖政治」を敷きながらも、ニューヨークのファッション業界では彼女が基準だ、とまで言われるファッション誌の編集長ミランダ。一方、アン・ハサウェイが演じるのは、一流大学を卒業しながらも自分の望んだ社会派ジャーナリストの仕事に就けず、ミランダにアシスタントとして雇われた新人アンディ。

公開されてから10年以上経つが「DVDも購入して何回も観ました」「今でもモチベーションを上げたい時に、観てます」と言う女性は多い。

ストーリーはというと、ファッション誌の編集部という想定外の職場に乗り込んだ新人女性部員のアンディが、孤軍奮闘しながら少しずつ活躍のチャンスを掴んでいく、というものだが、「働く一人一人の個人は、自分が入った会社の企業風土、つまり組織カルチャーとどう付き合えば良いのか?」という問題について大きなヒントを与えてくれる作品にもなっている。

◆ 職場の不文律を拒否するアンディ

アンディが迎え入れられた職場では、迅速な判断と行動、独裁者ミランダへの過剰なまでの服従と献身的なサポートが求められたが、もう一つ、組織の中での不文律があった。それは「時代の先端を走るファッション誌の編集部員として、ふさわしい服を身にまとうこと」。

この不文律にアンディは抵抗した。高学歴で自分の思考力に自信を持ち、ジャーナリスト志望だった彼女は、「仕事ができれば、それでOKじゃない?」と頑なにカジュアルなファッションで出社してくるのだが、なかなか重要な仕事は任されず、使い走り的な仕事ばかり言いつけられる日々。

◆ アンデイを変えた同僚の一言

華々しい世界に身を置きながらもなかなかチャンスを与えられないアンディは、ある日、そのことを世話焼きな男性の同僚にこぼす。そのとき、彼はアンディに次のようなことを語り聞かせたのだった。「君は、頑張っているのに報われないとこぼす。しかし、君はこの編集部がどういう背景を持って生まれて、どういう歴史を持っていて、どういう価値観を持っているかを本当に分かっていて働いているのか? そうじゃないのに本当に努力していると言えるのかい?」

彼の言葉が胸に突き刺さったアンディはすぐさま編集部の衣装倉庫に向かう。そして倉庫から選び抜いたファッションを身にまとって次の日から出社したのだった。もともと仕事に関して見所のあったアンディは、やがてミランダからパリコレへの取材同行や、重要な業界の交流パーティへの参加も許され、少しずつだが着実に活躍のチャンスを掴み始めたのだった。

ただし、自己変革を遂げたアンディに良いことばかりではなかった。編集部のカルチャーを受け入れた彼女は、同棲中の恋人とは生活のリズムに加え、生きる上での価値観までズレを生じ始め、ギスギスしてしまう。そして、女友達には「アンデイ、あなたは変わってしまったわ」と言われ、次第に距離を置かれ始める。

◆ 「組織社会化」という企業における通過儀礼とどう向き合うか

確かに、新しい組織に入れば誰でも「その組織が持っている価値観やルール、メンバーとして要求される行動を学び、適応するプロセス」を通過しなくてはならない(専門的には「組織社会化」という)。具体的にはまず、その組織での仕事に関する知識とスキルを身につけることが求められる。次に、組織の価値観や行動規範を身につける必要がある。そして最後に、他のメンバーから求められる役割を果たせなくてはならない。

しかし、これはその組織のカルチャーを盲信せよという意味でないことは、アンディの私生活面での失敗を見れば明らかだ。

エドガー・シャインは、「組織社会化」というプロセスに個人が向き合う際の3つのパターンを指摘した。1つは「反抗」、2つめは「服従」、最後は「個人的創造主義」。そして前2者は失敗だと言う。では最後の「個人的創造主義」とは何か。これは職場の大切な価値観や規範には順応する一方で、自分らしさや自分の信念に基づいて個性的な付加価値のある仕事をすることを意味する。

「組織社会化」と言うプロセスにおいて「個人的創造主義」を学習によって身につけることは可能だ。その具体的な学習法については次回(2)で述べてみたい。〜続く

【今回のまとめ〜組織に定着するための3つの要素】
1.その組織での仕事に関する知識とスキルを身につけること
2.その組織の価値観や行動規範を身につけること
3.その組織の他のメンバーから求められる役割を果たすこと

参考文献)中原淳 編『人材開発大全』東大出版会

 


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コラム執筆者
細野 和彦
細野 和彦(ホソノ カズヒコ)
株式会社ログシー/育成支援事業部/統括
育成支援事業部は新卒、内定者、アルバイト、中途社員の入社1年の“定着”と“育成”にフォーカスした研修サービスを提供しています。
我々の事業部では、専属の開発担当と共創し、開発した研修にエビデンスをつけ、現在だけでなくと未来にも目を向けたプログラムを開発いたします。
得意分野 モチベーション・組織活性化、キャリア開発、コーチング・ファシリテーション、チームビルディング、コミュニケーション
対応エリア 全国
所在地 新宿区四谷

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