うまく使えていますか?障害者雇用と助成金

企業の障害者法定雇用率は2.7%へ。これまで身体障害の方や知的障害の方を採用ターゲットにされてきた会社様や、これから従業員数を拡大していくために障害者雇用もしっかり取り組みたいという会社様から、精神・発達障害人材の採用に関するご相談が多くなって参りました。
さまざまなポジションで考えうる障害者雇用ですが、新しい雇用の取り組みをしていくうえで助成金や予算についてのお悩みを聞く機会も多いです。本日はKaien法人窓口の角田が、障害者雇用に関する納付金・調整金・給付金 そして助成金の制度を解説します。
①障害者雇用納付金
障害者雇用に関連する財源には、①障害者雇用納付金制度と、②雇用保険&一般財源の助成金制度の2つがあります。まずは、前者について見ていきましょう。
”納付金制度”とは
語弊を恐れずに言うと、障害者雇用の目標を達成していない企業からお金を徴収し、そのお金で、基準以上に雇用している企業にお金を渡したり、障害のある人が働きやすい物品の購入にあてたりする制度です。そのやり取りを担当しているのが独立行政法人の高齢・障害・求職者支援機構です。
”納付金制度”では、障害者雇用率の達成ができない企業が多いほど、”罰金”的なお金の”流入”が多くなります。一方で障害者雇用が進むと、実はこの”流入”が少なくなり、一方で”流出”、つまり障害者雇用を達成し、上積みしている企業へのお金が増えるので、財源が逼迫しがちです。
実際、障害者雇用が一気に進んだ2005年頃から積立金(つまり残高)が一気に少なくなり、2005年は約450億円あったものが、2013年には10分の一以下の10~20億円に落ち込んでしまいました。ただしその後、「助成金」の支給基準がかなり厳格になったり、なによりも2.0%に障害者雇用率が上がって未達成の企業が増えて”流入”が増加したことから、令和2年度にはおおよそ350億円に(※1)。今後、障害者雇用率が2.5%、2.7%と上がっていくことを考えると積立金はある程度余裕のある運用ができそうです(弊社としては助成金制度に頼らずとも、誰しもが働きやすい社会が実現すればとは思いますが)。
(※1厚生労働省 労働政策審議会障害者雇用分科会 第115回(R4.3.18)資料「障害者雇用納付金制度の在り方について 関係資料 」より)
納付金はたったの(?)5万円/月、されど5万円。
この納付金制度。障害者雇用の啓発にどの程度役立っているのか疑問視する人もいます。特に障害者雇用をしない場合の”罰金”的なものが月額5万円。実際に人を雇用すると10万円以上はかかることを考えると安すぎるのではないか、という議論が多いようです。そのため軽く見ていることもあるのですが…
例)障害者雇用に一人分足りない場合
→ 月間5万円=年間60万円 の”納付金で済む”
3年続くと…年間60万円×3年=180万円の”納付金が発生する”
事業運営をしている方にとって、何も生み出さない180万円の納付金は軽いものでしょうか?
これが例えば3名になると、3年間で540万円が、何も生み出さずに消えていく。私はそこそこインパクトある数字だなと思いました。※3年というのは中期経営計画に盛り込むかどうかというイメージで置きました。
調整金・報奨金は”ご褒美”
一方で、障害者雇用率以上に採用している企業には”ご褒美”があります。月2万円程度、企業の規模に応じて会社に支給される仕組みです(大企業の場合は”調整金”、中小の場合は”報奨金”と呼ばれています)。「障害者を雇うと助成金がもらえる」というのはこの調整金や報奨金のことを言っている場合もあるかと思います(※ただしこの後ご説明する”とっかいきん”である場合が多いかと思います)。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
多くの場合「障害者雇用をしたら助成金がもらえる」というのは、②の『雇用保険&一般財源』を元にした助成金の一つである特定求職者雇用開発助成金です。省略して特開金(とっかいきん)と呼ばれるのが一般的です。障害者手帳などを所有している人を雇用すると数年間で、場合によっては200万円を超える額が支給されるものです。
特開金(とっかいきん)は障害者以外にも適用される制度
①は厚労省系の独立行政法人が管轄でしたが、②は労働局が管轄であり財源は、①のように(言葉は悪いですが)”罰金”によって成立するのではなく、”雇用保険”や”税金”を元にしていることが違いでしょう。またこの”とっかいきん”は、決して障害者専用のものではなく、高齢者やシングルマザーを雇うことでももらえるなど、就職するのが困難と思われる層をフルタイムで雇った時に企業がお金を受け取れる制度です。
額が大きいことも特開金(とっかいきん)の特徴です。当社がサポートしている発達障害の人を雇う場合、障害者手帳があると、中小企業では一人雇うごとにトータル240万円が3年で分割されて支給されます(大企業の場合も100万円/人ですので相当な助成金と言えます)。
助成金の使い道は?
そのほかにもいくつかの助成金の制度がありますが、コラムで紹介するには要件が煩雑になりますのでそれぞれ採用ターゲットや自社の状況に合わせて社労士さんなどにご相談いただくのが一番良いかと思います。
さて、助成金が受け取れそうだとなると、気になるのが使い道。お金がもらえる(営業活動以外でキャッシュが増える)というよりも、いったい何を補填していくことが出来るのかというところが各社障害者雇用に取り組もうとする企業様の知恵の絞りどころかと思います。弊社でもこのあたりをご相談いただくことがありますが、やはり最近ではより本業に貢献してもらえるようにと社内体制を整えたり、採用資金に回されることが多いように感じます。
以前までだと身体・知的障害者の方の活躍のために、社内のハード面(エレベーターやスロープ、特殊なPC入力機器や休憩スペースなど)と採用活動(身体障害者手帳をお持ちの方の採用には人材紹介が旧来から一般的でした)への投資が多かったかと思いますが、精神発達障害の方の採用が盛んになった最近では、全社的な働きやすさのためにニューロダイバーシティの勉強会を開催されたり、障害理解のための社内ポータルサイトを作成されたりなどと、ソフト面での投資と採用活動費用に充てられているケースが多いように感じております。サテライトオフィスや、新規事業(農業や工芸、贈答のための生花事業。クリーニングなど)の一次的な初期投資のためにも予算を充てられているケースが増えてきているのではないでしょうか。
今後もちろん制度の改正・改変などはあるのだろうとは思いますが、せっかく企業様が受け取ることが出来る資金ですので、それを元手に障害のある方が、なるべく障害を感じずに働ける環境が少しでも増えてくれるといいなと思います。
※今回のコラムは、自社サイト大人の発達障害Q&A 「障害者を雇うと助成金もらえるんですよね」の日本の人事部向けリライト記事となります。
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ー本業に貢献する障害者雇用を実現するー
日本のトップランナーである障害福祉企業2社での経験(講演実績99回 2022.10.01現在)。
社会モデルの考え方をベースに、在りたい会社・在りたい採用の理想づくりから具体的な解決のステップを見出し提案するコンサルティングが好評。
角田 直樹(カクタ ナオキ) 株式会社Kaien ブリッジコンサルタント

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