アドバイスを被害的に捉えられないために【発達障害】

Q&A「アドバイスを被害的に捉えてしまいがちな部下・同僚との良い付き合い方はありますか?」
「良かれと思って伝えたアドバイスだったのに、ネガティブに受け取られてしまいトラブルになってしまった。」「自己防衛的な反応が強くてコミュニケーションに困難を感じる。」障害者雇用をご担当される指導員やマネージャーの方には、そのようなご経験をお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。
障害者雇用等で発達障害が認められるそのご本人が上司や同僚から言われたことを被害的に受け止めがちになってしまう背景には、物事の捉え方に関する特徴(認知のクセ)が原因になっているケースがあります。ご本人の特徴を受け止めたうえで、お互いに過度なストレスを感じず上手に付き合っていくためのコツを以下の3つに分けて、本記事でお伝えしていきます。
①心構え
②支援体制の環境整備
③コミュニケーション術
① 「被害的な反応」は不安や困り事のSOSサインと受け止める
まずはじめに、このような「特性」をどう捉えるべきなのか、上司や同僚の「心構え」についてです。
無意識のうちにマイナスな点に注目していませんか。ポジティブな点との割合(%)を考えて、ポジティブが高いか見直してみましょう。おすすめは、 「被害的な反応」を自分に対する「攻撃」としてとらえず、不安や困り事の「SOSのサイン」だと受け止めることです。ご本人がそのような心理状態になってしまっている別な理由はないでしょうか?例えば、「ご本人の契約更新の時期が近付いていて、更新してもらえるか不安を感じている」、「業務量が増えて負担を感じている」、「なにかしらご本人にとって負担の大きいイベントが控えている」などです。
自分が不安を感じていること、ストレス過多になっていることを自覚するのはだれにとっても簡単なことではないのです。適切にストレスの原因を解決するための相談することができずに、気づかずのうちにコミュニケーションの場面や物事の受け止め方が被害的になってしまっているのかもしれません。
これまでのご本人とのお付き合いを振り返ってみてください。常に変わらず被害的・攻撃的でしょうか?多くの場合はそうではないでしょう。時期によっては前向きに、素直に、アドバイスを受け止めてくれた時期があったはずです。それなのに、ご本人の被害的な反応を「素直じゃない」「我が強い」「攻撃的」など、ご本人の性格に起因したものと決めつけてしまってはいないでしょうか?

発達障害は生まれつきのものといわれ、能力の凸凹があるという特徴があります。発達障害に関する検査の一つ”WAIS-Ⅳ”では「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4つの指標と総合指標で個人の特性を見ていますが、それらの能力の凸凹によって、特に不安や困りごとのSOSのサインがうまくできない結果、被害的な反応になってしまっている可能性があります。
当然皆さんとしては、好意で伝えたことを前向きに捉えてもらえないことが度重なれば、そのように考えてしまうのも仕方ないかと思います。ただ、ぜひ少し余裕をもって、広い視点で、ご本人の現在のコンディションがどうなのか?心配事はないかな?というご本人に寄り添った視点で対応方法を考えて頂けるとよいと思います。
➁一対一の関係にならず、複数名のチームでご本人の対応をする
このようなケースでよく起こるのは、いわゆる「言った・言わない」のトラブルです。障害特性の有無にかかわらず。コミュニケーションにおいてズレは必ず発生するものですから、当事者同士に加えて、第三者の存在がとても大事だと考えられます。また一対一だと、どうしても関係性が相互に感情的になりがちです。ご本人とのコミュニケーションがトラブルになりがちな場合は、対面にせよメールにせよ、一対一のやり取りをせず、複数名がやり取りに入るようにするとよいでしょう。
場合によっては、ご本人と指導員の方との関係性がこじれてしまい、指導員側が「悪者」的な立場に追い込まれてしまうケースも起こりえます。その結果、指導員のほうがメンタル的にコンディションを崩してしまうことがあっては、元も子もなくなります。ご本人とやり取りする指導員を孤立させずに、周囲が状況を理解し、ご本人との対応状況を共有することが中長期的に安定したサポート体制を構築するうえでとても重要なことなのです。
③コミュニケーションのズレを減らすための6つのチェックリスト
コミュニケーションは双方向のやり取りです。受け止めがズレてしまう理由が、ご本人の「受け止め方」のみが原因なのでしょうか? そうではなく、伝える側にも、少なからず改める点があると考えるべきでしょう。職場を見渡してみてください。誤解を受けやすいタイプと、あまり誤解されないタイプの方がそれぞれいるのではないでしょうか。
比較的、自分は誤解されやすいタイプかもしれない、と感じる方は以下の「コミュニケーションズレを減らすための注意点チェックリスト」を参考にしてください。
=コミュニケーションのズレを減らすための注意点チェックリスト=
□話し方
声の大きさや、しゃべり方、表情など非言語的情報が、相手に威圧的な印象を与えていませんか? 平坦なしゃべり方をしましょう(語尾を上げると怒られているように聞こえます)。大きな声にならず、なるべく穏やかに、ゆっくり話すとよいでしょう。
□決めつけない
「あなたは〇〇なところがあるから」「これは〇〇だから」といった、相手のことや、状況説明を、一方的に決めつけていませんか? 意見を伝えるときは、断定的な表現をせず「私には〇〇に思えた」「私には〇〇に見えた」と個人の意見として伝えるようにしましょう。
□押し付けない
自分の価値観を押し付けていませんか?例えば、働くことへの目的や価値観は十人十色で。自分の価値観を押し付けず、相手がどのような価値観持っているのかを理解することから始めましょう。
□話すと聴くのバランス
面談などの場面で、相手の話を十分に聞けているでしょうか。話すと聞くの割合は半々か、すこし話を聴く時間が多いくらいが良いでしょう。また、順番も大事です。相手の話を聴いてから自分の意見を伝えるように心がけましょう。
□ポジティブフィードバック
日々の貢献に対する感謝や、成果に対するポジティブなフィードバックは十分に伝えることが出来ているでしょうか。ポジティブフィードバック8割、アドバイスやフィードバック2割、がマネジメントの適切なバランスだと言われています。
□信頼関係の構築
相手にアドバイスを受け止めてもらえるに十分な信頼関係は構築できていますか?そうではないのであればアドバイスはしばらく控え、相手への共感や励ましに注力しましょう。相手に受け止めてもらえなければ、せっかくの好意のアドバイスも逆効果です。
==
コミュニケーション面の課題を、自分自身で気付いて改めることはとても困難です。➁で記載した通り複数名で対応するなかで、同僚から修正すべき点をフィードバックしてもらうことが上達の近道です。意識してご自分のコミュニケーションをブラッシュアップすることで、誤解を受けやすくなる「スキ」を減らすことができます。
※今回のコラムは、自社サイト発達障害Q&A 「アドバイスを被害的に捉えてしまいがちな部下・同僚との付き合い方」の日本の人事部向けリライト記事となります。
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角田 直樹(カクタ ナオキ) 株式会社Kaien ブリッジコンサルタント

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